第71話 村の様子と、舞い降りたお金儲け

 翌日。

 私は、おいしい朝ご飯をいただいて、元気はつらつだった。


 朝ご飯なんか、もう長いこと食べてなかったので、食べられるか不安だった。

 けれど。温かな雰囲気で、皆と頂いたおかげか。すごくおいしかった。


 聞けば。朝ご飯は当番制と言っていたけれど。

「私も、お手伝いします」

 そう言ったのに、なぜか皆が「えー」と言う顔をした。


 まともなお料理は、したことがないけれど。ちょっとしたお手伝い位は…… 出来ると思うのに。みんなの反応で、少し落ち込んでしまった。

 後日。理由を教えてもらって、納得したのだけれど。



 その後。昨夜お話をした、川瀬さんや長瀬さん。委員長、香織ちゃんと、ゆっくりと村の案内をしてもらった。だけど、予想と違い。すごく広かった。


 お昼には、昨日に続いて。

 海辺で、浜焼きだと言って、とれたて魚介類を頂いた。

「私。全然お金を持っていないのに」

 と言うと。

「ここで暮らしている人は、みんな一文無だよ」

 と、教えてくれた。お金。つまり、通貨が必要ないらしい。


 すでに、川瀬さんや長瀬さん。香織ちゃんも、当然のように焼けたものを、ぱくついていた。


 あわてて、箸とお皿を持って、食べ始めたけれど。ウニとかアワビとか、初めて食べた。サザエは、緑の所が苦くて、口に入れたままあわあわしていたら。

「苦手なら、食べなくていいよ」

 と言ってくれた。


 途中で、白く、むにゅっとした物が入った、スープをもらっていただいた。すごくおいしかった。

「何ですか、これ?」

 聞いたら、カメの手と呼ばれる。岩場にくっついている。貝みたいな物の塊を見せてくれた。岩場の隙間でよく見る。とがった貝殻部分の下は、本当にカメの肌のようだった。ゆでるとつるんとむけるみたい。


 ほかにも、イセエビみたいなエビを、一人一つずつ貰って食べた。

 おいしかった。


 帰りに。つまみにちょうどいいから、佐藤君に持って帰って。そう言って、イシダタミガイという。小さな巻貝とするめを、お土産にもらった。二人は、成瀬さんと加瀬さんというらしい。


 佐藤君。確か死んでから、1年半くらいだよね。それなのにすごく顔が広い。高校にいたときには、そんなに幅広く。友好的に接するタイプじゃなかったのに。

 そう言えば、実力も隠している雰囲気がなかった。やっぱり環境が変わって、いろいろあったのかな。


 今度は、移動用のトロッコで、西の村へ移動をするらしい。

 ここの村は、最近できた村で、主に農地が広がっていると説明してくれた。

 川瀬さんと佐藤君が発見して、開拓をしたらしい。

 その後。「私も開拓されちゃった。うふ」そんな、余計な一声が。聞こえて来たけど。聞こえなかったことにしよう。川瀬さんは、委員長に蹴られていた。



 そんな案内を、柳瀬さんが受けていたころ。

 神地さんが、経産省の勝政さんを再び連れてきた。

 神地さん。暇なのかな?


「佐藤君。あれ良い。良いよ」

 勝政さんは、俺の顔を見るなり、そんな訳の分からないテンションでやって来た。


「それは、よかった。それで、あれとは何でしょう?」

 あっ、という顔をして。

「いやすまない。興奮しすぎた。あのサンプルの家庭用発電機。一日あたり、小さい魔石がわずか3個で動く。少し大きいと、2個で余るくらいだ。異常に効率がいい」


「それは、よかったですね」

 勝政さんが変に興奮状態だが、よくわからず、返事をした。

「よくわかっていないようだから、説明しよう。発電所を一つ。一年間動かすのに100万kWの発電所だとすると、これを見てくれ」

 ぺらっと、A4の冊子が出てきた。

「この通り。石炭など年間235万トンも必要だ。これは燃料だけで、その額1兆円を超える」


 はあはあ言っているから、お茶を、差し出す。

 一気にグイっと開けて、さらにしゃべりだす。

「発電機を回すための蒸気タービン。維持管理費などを考えると、それを置き換えるだけで、どれだけコストが下がるか。そして、発電コストが下がれば、それを使って作られる製品コストも下がる。安くていいものを。ビバジャパンんんっ」

 また、ハアハア言っている。


「そう言うことで。もっと大きなのを、作ってくれ。佐藤君」

「あっいや。それは良いのですが。その発電ユニットが、どんなものかわからないと。回すための魔道具が作れません」

「そこはほれ。軸トルクとかで、ある程度想像を付けて。何とか」

「計測器がありません。まあ、トルクなら、重りを巻き上げて計測すればいいのか? すごく危ない気がするな」

「うん。それは危ない。いま想像で、カタパルトのような。武器が作られるところが、想像できた」


「神崎さん。何とかなりますか?」

 俺が聞くと。

「まあ収納してみないとだめだけど、よっぽどじゃなければ。持ってこられるのじゃないかな」

「じゃあ。それを受け取って、魔道具を組み付けて返すという事で、いいのでしょう」

「できるのか? じゃあそれと、魔石の安定供給も頼みたい」

「まだ、現場を見ていませんけど。あっち側に、本州があって。北半分は、ゴブリンの王国なので。見に行きます?」


 神崎さんと勝政さんを連れて、ゲートをくぐる。

 出たところは、ぽつんと立つ岩の上。


「ここに、ゴブリンの王国があります。いくつかの部族に分かれて、戦争をずっとしているようです」

 そう言って指さす。4~5キロ先位で、米粒の様にしか見えないが、何かが争っている。砂煙が、もうもうと立っているのが見える。

 とりあえず、殲滅だ。空間魔法の水平撃ち。


 あれ? 空間がきしんだ。やりすぎたか。

「行ってみましょうか」

 ゲートを開く。


 ゲートから出ると、大量のゴブリンの死体。普通は放っておくとなくなるんだが、この数だとまずいかな。魔石を妖精に集めてもらい。収納する。


「今の一回で、一万近く集まりましたね。でも重量だと、18kgちょっとですね」

 そう言いながら、後ろを振り返る。

 勝政さんは、口からキラキラを噴き出していた。

「帰りましょうか」

 ゲートを開いて、村へ帰って来た。


「勝政さんは、お疲れのようだから。また来るよ」

 そう言って、神崎さんも帰っていった。

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