第51話 絶賛航海中

 そんな感じで、俺はあたふたしている。

 だが、内村さんはリールとギャフを使って、器用に一人。魚を釣っていたようだ。


 さっきのメバチマグロと、頭が丸く黄色っぽいのはシイラかな? 知識として図鑑でしか見ていないから、現実と少し違和感がある。

 それは、ここが異世界のせいかもしれない。


「ちょっと見ないうちに、大量ですね」

 俺がそう言うと、内村さんは嬉しそうに。

「魚がすれていないから、入れ食いです。船を止めれば、意外と烏賊が釣れるかもしれませんが。危険ですかね?」

「あのサイズなら、動いていても。止まっていても同じ気がしますけどね。かなり丈夫には作ってありますから、船体が持つことを祈りましょう」


「じゃあ。餌木と言う。烏賊用の仕掛けも、お願いできますか? 」

「分りました。構造は知っていますから、作っておきます」


 餌木と言うのは、木などでエビの形を作り。尻尾に返しの無い針を、放射線状につけたもの。

 烏賊は、餌に対して、足で抱きつくので、海の中に餌木を垂らして、しゃくりという動作。上下に、餌木を動かす作業をしていると重くなる。

 糸を緩めないように、巻き上げれば。烏賊が餌木にくっついて来る。

 結構楽しい釣りだ。


 似たような釣りだが、タコは、2本くらいの大きな爪状になった針の上部に、板をつけて。カニを括り付けて、引きずると釣れる。

 確か、テンヤ仕掛けだったとおもう。

 イイダコは、餌木のようだが、エビの部分が玉になったものを使い。針も餌木より大きい。それで、海底をとんとんとするように落とせば、抱きついて来る。


「内村さん。ちょっと考えたんですが、底引きするとカニ取れませんかね」

「居そうですが、さっきの恐竜が、引っかかるとやばそうですよ」

「じゃあ。あの手が入れないサイズの物を、いくつか引いてみますか?」

「あー。それはいいかもしれないですね。場合によっては、サンゴとかも取れますかね」

「サンゴも、そう言えば網でしたね」


 にまっと、内村さんが笑う。

「ソコムツなんかが、取れても食べちゃダメですよ」

 と、言って来た。

 アブラソコムツやバラムツと言う深海魚は、マグロの大トロに味が似ていて、食べるとおいしいらしいのだが。


 身の中に持っている油が、人間では消化ができない。

 食べた次の日から、腹痛や下痢。

 皮脂漏症になり。さらに、消化ができない油が、おしりから、だらだらと直接出てくるため。オムツが必須となります。油が残っている間、内臓から水分が吸収できなくなり、脱水症状で死んでしまうこともある。

 そのため日本では、食べるのを禁止されています。


「食べませんよ。油もやばいですが、寄生虫もやばいんでしょ」

「さすがだね。でもちょっと、食べてみたい気もするけど。マグロと同じなら、マグロで良いか」

「そうですね」


 そう言いながら、餌木を作る。

 普通なら糸で装飾しているが、樹脂で色を付けてみた。


「こんな感じで、どうですかね」

「まあ使ってみよう」

「おもりを付けて、5本くらいの枝スで、いきましょうか?」

「そうだな。じゃあ船の両側で、やってみるか」

「そうですね。しまった。集魚ライトが、あった方が良いですね」

「集魚灯か。青がよかったんだっけ?」

「魔道具で作って、やばそうな紫外線が出るといやなので、白にしましょう」

「おお。それはやばそうだ。白で良い」


「じゃあ。夕まずめまで、網を引っ張りますか」

 そう言って、底に重りを付けて、上側に浮きを付ける。

 三角形の、袋状になった網を沈めてみた。

 船尾両側と、真後ろ。

 欲張って、3本入れてみた。


 すると、すぐに。

 真ん中の網が、何かに引っかかり。

 バンと、音を立てて、ロープが切れてしまった。

「あーあ。岩かな?」

「何でしょうね?」

「ソナーが欲しいな」

「それはそうですが。ソナーって。一点に向けて、音を出し、早く帰れば、明るくして。光を左右と上下で、走査するのでしたっけ?」


 内村さんは、何か考えているようだ。

「それは、深度を明るさで表すから、使えそうだが。もっと、簡単でいいのじゃないか? 船は進むから、横に一本走れば、明るいところは駆け上がり。……距離が分からんな。魚探とかって、深さで点々が出ていたけどな」

「水中だと、音は毎秒1.5kmですよ」


 うーん。二人で悩む。

「そう言えば、警戒用の奴は、どういう仕組みなんだい?」

「あれは、一定方向に。ある程度以上の、大きさのものが入れば、距離を感知して。順に、光るようにしています」


 うーん。

「それの、細かい物を作れば、使えないかい?」

「細かくですか」

 そう言われて、海の下に対して意識を広げてみる。


 光は、すぐに届かなくなるが、魔素の揺らぎを見ているからか、いろいろなものが頭の中に浮かぶ。どんどん深く、意識を下げる。どうかな? 1000m位ありそうだ。


 これは、ちょうど断層でもあるのか、皴状の隆起と谷がある。そこに転がっていた岩に、たぶんさっきの網は被ったな。


 そう言えば、地形は分かったが、生き物が見えないな? なんでだ? もっと魔素の薄い物を見る。……あっそうか。これでどう。プランクトンだな。全方向塗りつぶされた。

 これなら、あの警戒装置。全く役に立っていないな。


「どうしたんだい? 」

「魔素の揺らぎを見るタイプ。えーと、地上で使う。探査と警戒の魔法が。海では使えません。プランクトンで、一色ですね。いやあー。豊かな海だ」


 内村さんと二人。イメージが想像できた。

 ああ。駄目だと言うことで、納得をした。

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