第43話 『はじまりのむら』という村

 朝食は、4人で作ったために、結構豪勢なものとなった。

 

 最近作るようになった干物や海苔。そして、朝獲れたばかりの魚介類。

 海側にも村があり、そこから早朝に届くみたい。


 椎茸などは、早くから原木栽培というものをしていたらしく。

 新鮮なものは、春と秋だが。

 その中間は、干物と冷凍ものがある。とのことだ。


 今。海側では。鰹節も作れるようになっていて、凍結乾燥による。粉末スープも作り始めているとのことだった。佐藤君が、嬉しそうに教えてくれた。


 そんな話をしながら、各自が思いついたものを作る。

 豆腐と椎茸。それにわかめの入ったみそ汁。

 アジの干物をグリルしたもの。

 出汁巻の卵焼き。サバの塩焼き。それと海苔。

 それに、ほうれん草やもやしのお浸し。

 大根の漬物。壺漬け(つぼづけ)。


 今の日本では、法改正により作られなくなった本物。

 食品衛生法改正の施行が、2021年の6月。

 70歳とか80歳のお年寄りに、工場を作り。漬物製造販売の営業許可を取れという事になった。

 当然。自分で食べる分だけ作り、販売はやめた。

 担当者は、浅漬けと漬物の区別が出来ないようだ。

 まあ多く見かけるものは、外国産の浅漬けたくあんとか、福神漬け。漬物がどう言うものか、知らないのだろう。


 それはさておき。

 ご飯。これは羽釜だったので、佐藤君にお任せだった。


 準備ができたころ。

 みんなが、匂いにつられるように起きてきた。

 生徒たち二人は。

「え~朝ごはん? 普段食べないし~」

 そんな感じで、普段食べない派だったようだが。

 しばし、並んだご飯を眺めていると思ったら、座り込んで一口食べる。

 すると、もう止まらなかった。


 みんなで、それを嬉しそうに眺める。

 そうなのよ。よくある物だけど、いろんな食材がおいしいのよ。



 食事を頂いた後。

 縫製を行っている柳瀬さんと、秋田さんの所へ連れていかれ。

 きっちり採寸された。

 その後。村長さんのお家へ向かう。


 到着すると、憮然(ぶぜん)とした顔の二人が、お茶を飲んでいるところだった。

 やはり二人も、朝食は食べない派だったが、並んでいるおかずを見ていると欲しくなって、しっかり頂いたようだ。本人は、いまだ納得できないような。変な顔をしている。


 そこで、村長さんと佐藤君から、この世界には魔素があり。

 それが、体になじんでいないと、魔法が使いにくい事。

 女の子の場合。妊娠ができないということを聞かされた。


 私はそれを聞いて、なんて便利なの。と、思ってしまった。

 ああヤバイ。思い出して洪水になる。やばい。落ち着きなさいよ私の体。いつからあなたは、そんなにエッチになったのよ~。と、自分の欲望と戦っていたころ。


 話は進み。これからの暮らしについて、どうしたいかと村長さんに聞かれた。

「はい、私は佐藤さんの所で、お世話になります」

 宣言していた。

 28歳の私。どこ行った状態。

 ハイテンションで、エッチな状態から抜けれない。


 当然。川上さんも同じく。

「佐藤さんの所でお世話になります」

 宣言をしていた。


 村長さんが。横目で、佐藤さんを見ながら、首を横に振って。ため息をついているが何だろう?


「それじゃあ。残りの方はどうするね」

「私は、住めるところを頂ければ。そちらで暮らして。村でできることがあれば、お手伝いをさせていただきます」

 高瀬さんは、そう言う。


「食事とかは、大丈夫ですか?」

 つい聞いてしまった。


「まあ。ちょっとしたものは作れますし、何とかなるでしょう」

 にこやかに言っているので、大丈夫だろう。

「寂しくなったら、佐藤さんの所へ、飲みに伺うと思いますけどね。ははっ」

 と言って笑う。昨日の思いつめた感じとは、だいぶ違うし。大丈夫かな?


 さて問題は、生徒たち。

「あなたたちは、どうするの? ここには、お店もないのよ」

 と聞く。

「俺らまだ、未成年だし……」

 そう、言いかけ。

 周りのみんなが、同じだと気が付く。


「村田くん。ここは、未成年という言葉もなければ、それを助けるシステムもない。私たちが、7いや8年前に来た時には。家もなく。食べ物もなく。1月で4人亡くなった。皆のために、仕事をするか。しないかだけだ。分かり易くて、いいだろう。当然。自分たちで生きていくなら。出て行ってくれてもかまわない。それこそ、君たちが昨夜語っていたように。本当に自由だ。出て行くのなら。だれも干渉もしないし、当然だが、手助けもしない」


 村長さんが、言ったことを聞いて。

 昨夜二人は、規則がとか。たぶん干渉されるのが、うっとうしいと。普段の調子で言ったのだろうと、私は思った。

 だけど、今。……ここは、異世界。

 私はいま、佐藤君とのエッチを。すべてにおいて優先する。

 他はすべて。…… しらない。


 そう思いながら、両手を握りしめ。

 妄想をしていると。あれ? 周りの目が。

 ひょっとして、あふれる思いを口走った?

 いいけどね。ふふん。


「なあ先生。どうしたら、いいと思う? 」

 山村君が聞いてきた。そんなことは、知らんが……。


「山村君のお父さんは、大工さんだったわよね。何か習ったり、していなかったの? 習っているなら。村のお役に、立てるのじゃなくて? 」

 まるで、興味がないように、個人情報を暴露する。

「それに、村田君も御家が、土建屋さんだったわよね。良かったわね。二人とも。お役に立てるじゃない。それに、もう私は、先生ではないの。おわかり? 」

 つい。口調が、上からになっちゃった。 


 村長さんが、それを聞いて。

「そうだな。少しでも、手ほどきを受けているのなら。村としては、ありがたいな」

「ただ。飯とかも、作れないし」

 などという、甘えたことを山村君が言う。


「ああ。それなら、基本は教えよう。村も、急激に食材が、増えてしまってな。教えられるのは、本当に、基本だけじゃけどな」


「じゃあ。覚えるまで、お世話になっていていいですか? 」

「わかった。あとは。そっちの2人。村上さんと宅間さんかの?」

 話を振られて悩んでいる。

「私たちも、色々覚えるまで、佐藤さんの所にいます」


 私は、その答えを聞いて。

 思わず……「ちっ」と、舌打ちをする。

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