第42話 定員は?

「えーと。お二人とも。ここで、何をしているんでしょうか?」


 佐藤さんが、バスローブのようなものを着て、顔を出してくる。そうですよね。

「あーと、すいません。トイレに起きたら、廊下で川上さんが蹲(うずくま)っていたので、声を掛けたら。この状態です」

 はっきりきっぱり、言い訳をした。悪いのはこいつです。


 たぶん佐藤君は、察したのだろう。

 言っても、今の状態を見れば、川上さんの右手は、パンツの中に入ったままだしね。しかし、どんだけ深くいったのよ。

「ここじゃあれなので、まあ中に入れましょう」

 そう言うと、川上さんを抱っこする。


 佐藤君だめです。ローブがめくれてて、目の前に。立派なものが、そそり立っています。本人は気が付いていないので、凝視してしまった。

 なぜなの? ごくっとなぜか私ののどが鳴る。体が若返って性欲が高まっているのかしら?


 部屋の中は、あまり広くはなく。佐藤君が扉を閉めて、明かりをすこし明るいタイプを点ける。

 中にいたのは、なんと長瀬さんだった。


「茶でも、入れてきます」

 彼が出て行く。


「すいません、お邪魔しちゃって」

 わっ私は何を言っているの? そんなこと言ったら。覗いていたのを、自白するみたいなものじゃない。


「あー。ひょっとして、声が、漏れていたのかしら」

「ええ。まあ少し」

「やっぱり。今度建て直して、きちんと防音しなきゃだめね。だいぶ、彼が改造したんだけど……。 で、覗いてどうだった? すごかったでしょ」

 嬉しそうに、長瀬さんが聞いて来るけれど。さすがに覗いてはいない。


「いや。私は廊下で、川上さんが蹲っていたので、声をかけただけで、覗いてなんて」

 きょとんとして。

「残念ね」

 と、返して来た。そんな。普通、人の睦言(むつごと)を覗くなんて。……しないよね。何が残念なの?


 そうしていると、佐藤君が湯呑とか、一式持ってきた。手早く。長瀬さんが、折り畳みの、小さなちゃぶ台を、引っ張り出す。


 お茶と、小さめのおかき? こっちはクッキーかしら?

「ああ。ごめんね。バターがなくて、いまいちだけど。試作品」

 食べて、首をひねっていると、佐藤君がそう言ってくる。

「クッキーも、佐藤君が作るんですか?」

「大体。なんでもだよね」

 すごく。うれしそうな顔をして、笑うなぁ。本気で好きなのだろう。


「失礼ですが。隆君のおとうさん。旦那さんがいたわけでしょう。お二人はこっちに来て、知り合ったのでしょう?」

 やめればいいのに、私はそんなことを聞いていた。昔からなんで? とかが出てくると興味が勝ってしまう。そのおかげで、社会科なのだけど。


「隆の父親への未練とか、罪悪感がないかっていう事? ないわ。あの子が生まれると。恋人から、隆のお母さんに、私がジョブチェンジしたみたいでね。行為もなくなったし」

「そうなんですか。すいません。立ち入ったことを、聞いちゃって」


 ちょっと、長瀬さんは考えて、口を開く。

「最初はね。隆が、いきなり大人になっちゃってね。こっちが、対応できなくて、手伝ってもらったの」

「対応? まあそれは、いきなり3歳が15歳になれば、びっくりですよね」

「そうなのよ。いつものように、お風呂に入れて洗っていると。いきなりものが大きくなるし、びっくりよ」

「おおきく? びっくり?」

「そう、隆のあれが」

 ああそうか、そうなのね。


「それで、相談に乗ってもらって、私にも乗ってもらったの」

「はぁ? いやそれ、なんで?」

「隆のが、大きくなりっぱなしだから。どうしてそうなるのかを、説明してね。自分ですることも教えていて。皆することだからって、説明した手前。なぜか見せることに、なっちゃってね」

 長瀬さんは、すこし遠い目をする。


「恥ずかしかったけど、興奮したわ」

「隆君に見せたの? あれ、佐藤君は?」

「ああ。全員で」

「全員?」

「あの時、佳代。瀬尾さんも巻き込んでいたから。一つの部屋で、見せ合いっこ」

「いっ。いくら言っても、おかしいわ。なんでそんなことに」


「まあ、それで。その後。普人、佐藤君としているのが、みんなにばれて。今は共有。エッチしたら、朝ご飯を作るのを手伝うの」

 さすがに理解ができない。何それ?


「ああ大丈夫よ。子供はできないから」

「子供ができないって。どう言う。佐藤君が不能とか? そんなわけ、ないですよね?」


「この世界、魔素っていうのが毒だから、体を改造しないと、妊娠できないの」

「魔素ですか?」

「ああ。それに関しては、今度ちゃんと説明しますから」

 佐藤君が言って来た。私は理解ができなかったけれど、体を改造?

「はあ、おねがします」


「じゃあ落ち着いたところで、中村さん。いや、芙美恵ちゃんも混ざって、さっきの続きをしよう」

 えっ、と思ったら。長瀬さんに、いきなりキスされて押し倒される。


「ぷはっ、さっ佐藤さん見ていないで、うんっあっ、ちょつ。あっだめ。そこだめ……」

 されるがままになり、結局。

「だめ、佐藤君。お願い入れて……」

 自分から懇願して。その夜。2度目の破瓜をしたが、全然違った。


 途中で。川上さんが、ゾンビのように起き上がってきて。しているところを、ちょっと客観的に見たけれど。すごいわ。もう。ストレスなんか、どうでもいい。

 悩みなんか、些細な事だったわ。


 翌朝。

 体が若返ったことも、あるでしょうけれど。すごく軽くて、でも疲れで、少しだるくて。でも元気で、気分は晴れやか。


 すごくうれしそうなのは、川上さん。今までは、朝起きるか、首をくくろうかって思いだったけど。今朝は、すごく爽やかに。目が覚めたらしい。


「じゃあ。お手数ですが、朝食の準備を手伝ってね」

「はーい。ねえ佐藤さんのローテーションて、定員があるんですか?」

 突然、質問されて俺は戸惑う。


「特に決めてはいないけれど。みんなで、話し合いだね」

「じゃあ、ここで暮らします」

 暮田(ぐれた)中学高。2年3組のもと担任。中村芙美恵(28歳)社会科教師は異世界での、生活第一歩を踏み出した。


 その後ろで、川上さんも、にこやかに手を上げる。

「私も、お願いします……」

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