第33話 海辺の開拓

 海辺の人たちから、依頼が来た。


 浚渫をして、もっとまともな港を造って欲しい。


 今は船を出す時。

 浜から押し出して、船を使い。

 漁が終われば、引き上げている。

 まあ小舟だから、できる話だが。

 それではつらい。


 元々、他の大陸に行くという、計画も目的もある。


 海辺の村と、はじまりのむらを繋ぐ道の反対側。

 そこを、ドック兼、港として、整備することにした。


 主な漁場を、避ける形だが、整備により潮の流れが当然変わる。

 影響があれば、漁場の移動も考えてねと、一応説明はする。


 道に近い方へ、短めの港を造り。沖側で防波堤をくの字に曲げて、波を抑える。

 さらに、ドックから伸びる側に、さらに長い防波堤を造り。内部を浚渫する。

 川の位置と、潮の流れを考慮して作った。だが浜の砂は、多少痩せるかもしれない。


 妖精の手伝いと、魔法により。一気に工事をしていく。


 浚渫して、出てきた土砂。

 そのまま石化して、防波堤に形を作っていく。

 もちろん防波堤の外側は、でこぼこの穴を作り、消波機能を持たせる。


 ドック部分は、線路を分岐させて引き込む。

 一度に、2隻の造船を行えるように作った。


 防波堤の内側には、一段低い通路を作り、小舟の係留用ボラードや、荷揚げ用に浮桟橋部分に、係留用クリートなどの設備も設置した。

 

 そして、防波堤の先端に塔を建て、内部に魔道具で回転する台座に、光の魔道具を組み合わせて設置した。

 一応、港から見て、右舷は白で、左舷は赤とした。

 今は、基本的に夜間は海に出ないが、そのうち必要となるだろう。



 浜の村にいる住民。みんなに見てもらう。

 問題点などはないか、確認してもらう。

 何かあれば申告してもらい。修正することで、話が終わった。

 非常に喜ばれたよ。


 それと、スクリューを採用するにあたり、ネックになっていた防水機構が樹脂の開発に成功した為。作れるようになった。


 試験として、皆が使っているボートの後ろに。

 引っ掛けるタイプの船外機を試作した。


 かじ取りのハンドル部分は、スロットルのように作る。

 一番手間だと、空回り状態で、動力は伝わらない。

 握って回すと、中で回転魔道具自体が移動をして、動力用のテーパーが付いたプーリーへ密着して、内側から外へと移動をすることにより、スピードが変わるようにしてある。


 シャフトのシール部には、外から水圧が掛かれば、密着する方向に、スカート状のリップが出ている。摩耗はどうかと気にしていたが、水に入っている間は、水が保護膜になるようだ。幾日かテストをしてもらい、水の侵入が無かったことを確認して、そのまま使ってもらうことにした。


 次は船だが。さすがに。

 いきなり、巨大船は造れない。

 普通の漁船クラスである。26フィートクラス。

 8mほどから、造ることに決めた。

 当然キャビンを作り、そこから操舵と、速度コントロールができるようにする


 船体は、記憶の中にあるカーボン繊維を板にして、中にハニカムを構築したものを挟み込み。強度と浮力を得ようと考えた。


 前回。糸の為に開発した、技術が役に立つ。

 いくつか、材料を組み合わせて、よさそうな条件を見つける。

 構造を頭の中で構築する。

 それを魔法で、3Dプリンターのように一体で成形していく。


 基本はボックス構造で、強度が必要な部分は、クロス状に板を追加してある。

 見ていた人たちから、魔法の様だと声が出たけれど。魔法だから。


 試しに、近くで見ていた人が、同じことをしようとしたら、魔力切れだろうか? ひっくり返ってしまった。俺の貰った精霊の力は、かなりすごい物の様だ。


 キャビンの、透明部分は樹脂製。

 これは、後から交換できるようになっている。

 船底の構造は、前から後ろまで。

 2本のレンズ型の縦板を、横方向に板で仕切り隔壁構造を持たせた。

 ハル(船体)自体は、コンケイブ V型の構造を、基本に試していくことにした。


 揺れを抑えるのが重要か、衝撃を抑えるのが重要か。その辺り。判断が難しい。


 昔聞いた記憶で。嵐のときに、三角波の頂上からの落下で、船体が折れると聞いた記憶がある。


 大きめの回転魔道具を組み込み、その横に非常用として小型の回転魔道具を別経路で、非常時用に組み込んだ。

 その為、スクリューは3つ付いているが、常用は真ん中の大きいもの。両サイドは小型の非常用。

 船体が大きくなれば、スラスターの装備も必要になるだろう。

 向かうのは、整備された港では無く、未開の地。

 タグボートが、常備されているとは考えにくい。


 ラダーについては、重さがよく分からなかったので、取舵面舵ともに操舵輪3回転で30度ほど動くようにした。

 実際運用して、重すぎるようなら、アシスト機構が必要かもしれない。


 真っ黒い船体には、樹脂を全体にコートする。

 船底には、琺瑯びきのような、ガラス皮膜をコートした。


 後部には、網の巻き上げ機により。

 船上に直接網をあげれるようにして、その下には水槽と製氷の魔道具を完備。

 副産物として、水道が取り付けてある。魔道具は便利。

 まあ、製氷機は、後で海水を凍らせるものに変更した。


 船には、ライフジャケットも完備。

 非常用に膨らませる事の出来る。ボートも2隻分積んである。

 ちなみに。近海用なので、指示針は必ず港をさすようにしてある。


 とりあえず、これだけ作りこんで引き渡してみた。

 後は使ってみての、苦情待ちだ。


 その後。漁獲高は上がり、少し外洋に出ても、大丈夫びなったため。

 魚の種類も一気に増えた。その為。余った魚を加工して、干物などが作られるようになった。


 漁自体も、毎日出る必要がなくなり。

 ずいぶん楽になったようだ。


 海辺の村には、現在。乾燥場や保管用の冷凍庫が建ったため、少し近代的な風景に変わった。

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