第13話 じっと眺める

 俺は今座り込み。

 ゴブリンの針を、じっと眺めていた。


 後ろでは、なぜか川瀬さんと、広瀬さんがぴくぴくしている。

 僕の知識と、たぐいまれなる探求心のおかげで、満足してもらえたようだ。


 さて、ゴブリンが魔法を使っていた状態を思い出す。

 針を見つめて、意識を集中する……。

 反応はない。

 うーん、何が足りないんだろう?

 一口。コップの水を口に含み。思案をする。


 とりあえず。ぼーっと考えてもダメそうだ。


 その時、体をめぐる魔素と言う物があり、それを意識的に操作すると言う。

 ラノベの一説を思い出す。


 それを意識しつつ、今現在、周りにあるだろう。魔素を意識する。

 と、ふいに霧のようなものが、見えた気がした。

 これか? 霧を体に取り込むイメージをする。

 あっ。取り込むイメージが見えた。


 変な表現だが、イメージが見えたのだ。

 それを取り込み、循環させる。

 すぐに反応が起こり、体が、温かくなってくる。


 それを意識しながら、針が丸くなる様に、形を考える。




 ……すると。

 なんという事でしょう。見事に針が変形したではありませんか。

「やった」


 次に、持って来た鉄鉱石を握り。

 鉄のみを取り出すイメージを、鉄鉱石に対し伝える。

 イメージするのは、にじみ出る鉄。

 どろどろと、鉄のみが流れ出るイメージ……。


 すると、もろもろと鉄鉱石が崩れ、流れ出た銀色の液体。

 不思議なことに熱くはない。


 やがて、流れ出た鉄の液体は、床に落ち、ごとんと音を立てる。


 ゴブリンの針だったものと混ぜ合わせて、三徳包丁をイメージして成形する。

 うにょにょと、形が変わり。

 三徳包丁ができた。刃先もちゃんとついている。


 そこまでして、ひどく疲れたのが分かった。

 これはもしかして、魔力切れだろうか?


 俺は包丁を放り出し、明日に柄を付けようと考えながら倒れこむ。


 ふと顔をあげると、二人の大事なところが並んでいて、探求心に火がついてしまった。

 じっくりと比較をする。


 やっぱり少し違うんだなと感心しながら、つい、つんつんと、いじってしまった。


「うっ。うん? ……何しているの?」

 川瀬さんに問いかけられ、違いを比べていたと説明すると、真っ赤になって隠された。

「私の、どこかおかしいの?」

「いや、普通だけど。少しずつ違うんだね」


 そう言って、また手を伸ばす。

 強引に膝を広げてぐにぐにすると、力が抜けて見えるようにしてくれた。

 本意かどうかは知らないけどね。


 責任を取って、満足させた。




 朝。木の柄を付けて、包丁をお披露目すると皆が喜んでくれた。

 ちなみに、木の成形と穴あけも、イメージするだけでできた。


 こっちへ来てから、みんな料理はそこそこできるはずだが、なぜか、朝食は俺が作っている。



 村長の所へ行き、鉄鉱石からの鉄の抽出に成功をした事を伝える。


 実際に見せると、喜んでくれて、鉄鉱石の採掘の隊が編成された。




 そこから俺は、いの一番に風呂釜を作製した。

 昔見た2本口の循環窯。パイプを二本用意してその間に細くしたパイプを繋げる。


 イメージは、車のインテークマニホールドを2つ合わせた感じ? いやホットプレートのヒーター? まあ水の通る経路を、細管で結んで表面積を増やし。お湯が沸きやすくすれば良い。それの外側を窯で包む。


 火をたき、あったまったお湯は、上のパイプから出ていき、その分下のパイプから水が吸い込まれる。温度差による対流を利用する。

 だから循環式。ちなみに2層にしてバランス釜にしてあるから、立ち上げ式の長い煙突は必要ない。


 その2本を、木で作った。大きな桶に差し込む。


 魔法で、空気中の水分を液化させて、桶に水を張る。


 差し込んだパイプの、上の口が浸かるくらい水を出すと、釜に薪を放り込み。火を起こす。


 休みながら、水を追加して、満タンと言ってもこぼれないように、15cmくらいは上を開けてある。


 上の口からはお湯が出てき始めるが、思った以上に熱いので、木で蓋を作り、湯の出口に着ける。


 昔、じいちゃんの家にあった薪の風呂。

 途中からは灯油兼用になったが構造は一緒だ。


 風呂が沸き、皆を呼ぶと喜んでくれたのでまずはOKだ。



 ただうわさが広がり、それから、2週間。

 風呂と風呂釜を造り続けることになった。



 みんなが喜んでくれたから、良いんだけどね。

 魔法の使い方も、説明すると幾人かは使えるようになった。



 ちなみに、体に魔素?を循環させると、身体強化ができるようだ。

 これも、皆に伝えて喜ばれた。



 さてと、次にクワやスコップを作り、道の拡張に着手しよう。


 それと、窯ができたから、蒸気機関も作ろう。

 掘削用にブレードが回転すればいいだろう。


 ギアを切り替えて、左右のドラムが右回転左回転と個別に回転できれば、道に応じて対応できる。

 当然駆動輪も、蒸気で進む。

 遠心クラッチは、トルクが掛かるため遠心力でシューが開くタイプではなく、外周が狭くなるテーパーが付いたプーリー。

 その間を、ボールが遠心力により外周に向かっておしだされると、クラッチプレートが押し付けられるタイプ。


 速度は、掘削用ドラムの速度に比例して早ければ早くなり、岩盤が固く遅くなれば進行スピードが遅くなるように、ウォームギアを使い調整した。

 もちろん単なる移動の時には、経路を切り替え。

 ドラムを回さず、走らせることができる。



 この装置により。

 かなりの速度で、道の掘削ができて、皆に驚かれた。


 いろいろと作ったが、魔法による加工はイメージだけで済み。

 工作機械から作成しなくて済んだのは大きい。

 特に超硬のバイトとかと言っても、タングステンカーバイドなんて、どこにあるんだと言う話だ。


 チベットか、どこかで採掘できるらしいけどね。

 ああでも、タングステンカーバイドの名前で思い出したが、カルシウムとコークスを焼結させるとカルシウムカーバイドが作れる。

 そしたらアセチレンが作れるな。

 溶接やランプ。

 使い道は多い。メモをしておこう。


 時間があれば、タングステンを掘り出せば、電球のフィラメントが作れるけどね。


 電気。……発電機か、そっちが先だね。

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