第7話 村長さんの話
「私たちはバス事故で。気が付けば、ここに送られていました」
「途中で、あの女神には、説明を受けなかったのですか?」
「そうですね。初期のメンバーは、いきなりでした。女神が出てき始めたのは、3いや4回目くらいの方からでしょう。その時には、白い部屋に一度集まり。女神から幾人か人を送ったが、一所に留まらず。もっと散らばるようにと言う注意。この世界の発展に寄与しなさい。と言われたらしいです。ははっ」
村長さんは、つらそうに語る。
「僕たちも、似たようなことを言われました」
と答えると、
「来た当初は、ここには何もなくて。もう少し下った、川の近くで暮らしていたのですけどね。最初に来たのが、私を含めて12人。こっちへ来て、一月で4人亡くなりました。それで、モンスターや動物の寄って来る。危険な川のそばを離れ。安心することのできる生活の場を、作る事が、急務となって。ここに、家を建て始めたんです」
「そのおかげで、助かりました。この村が無いと、全く予定が立たない状況でしたから」
ほかの3人も、頷いている。
「そう言っていただければ、ありがたいです。不定期ですが、人が送られてくるので。ここを、はじまりのむらにしようと決めてね。ですが、見ての通り。すべてが手探り。初期メンバーの中に、木下さんと言う。大工さんが居て。家づくりの基礎を習い。最初に、この家を建てたんです。後は、生活の安定のための農業ですね。川の方に田んぼや畑があります。まあ、そうはいっても。所詮、知識はあっても、素人の集まりで、この有様です」
村長さんはそう仰るが、何も無い所に、これだけの物を造り上げるのは、並大抵ではない苦労があっただろう。
広瀬さんが話を聞いていて、気になったのだろう。
村長さんに質問をする。
「あの~ひょっとして。お布団とかも、まだできていないのでしょうか?」
「ああ。さすがにそういうものは、優先度が高かったので。何とか作りました。だけど、日本の物と比べて、これは違う。と、言うのは遠慮してくださいね。布製品などの貴重品は、うちで管理して、村を出ていかれるときには回収。打ち直しをしています」
「そうなんですか」
広瀬さんは、話を聞いて納得したようだ。
そこまで話していると、隆君が退屈をしてきたようで、
「お外に行こう」
とかぐずりだした。
「その方は。もしかして子供だったのですか?」
「ええ。あっ私は長瀬と申します。この子は隆で、3歳だったのですが、いきなり大きくなっちゃいまして」
「やはり、そうですか。それは村の住人に、あらかじめ周知をしておかないと、だめですね。昔同じような、女の子が居たのですが、やはりトラブルのもとになるんですよ」
「ああ。はい判ります」
「まあ。隆君も話ばかりで、飽きたのでしょう。まずは、必要そうな物資をお渡ししましょう。皆さん。家は決められましたか?」
「はい。勝手ですが、この家の流れに建っている、左側の端です」
「分りました。表札をかけておいてください。後で、道具とかも渡しましょう」
その後は、村長さんの所から、色々な物を運ぶ人間と、家の中を掃除する人間に分かれて働いた。荷運びは、意外と隆君が「うんしょ。うんしょと」楽しそうに、頑張ってくれた。
その日は、村長さんの家で、晩御飯をごちそうになり、家へ帰ると皆疲れて眠ってしまった。
翌朝。
俺は目が覚めると、台所の水がめと、風呂場の水がめに、井戸から水を運び汲み入れた。
竈に火を入れ。片側で湯を沸かし、もう片側で研いだ米を炊く準備までにしておく。吸水は必要だし。知識としてはあるが。
火加減と、窯が大きいため。タイミングが難しそうだ。
後は、村長さんがくれた、ぬか漬けの大根を切る。
最初米を炊いて、炊きあがったごはんは、おにぎりにでもしようと思ったが、ラップがない。
おにぎりなんて、作って置いておけば、すぐカピカピになる。そう思い、皆が起きて来るまで、炊かずに放置。
煮沸した水。つまり煮沸消毒した水を、小さめの瓶に2杯分作り。冷ましておく。
皆が起きて来るまで、竈に残った炭で下書きをして、表札を掘っていた。
道具は、例のゴブリンの持っていた。尖った棒だった。
最初に起きてきたのは、瀬尾さんだった。
「おはようございます」
「あっ、おはようございます」
おれは、多少赤くなりながら答える。
それは、なぜか。
昨日疲れて早くは寝たが、寝始めは6~7時だ。
当然夜中に目が覚め、トイレに行った。
その時に、どこかで、すすり泣くような声が聞こえ、びくっとなった。
それは、瀬尾さんの部屋からで、人外の類じゃなくてよかった。
だが、その声は、すすり泣きではなく。途中に交じる嬌声。
これは聞いてはいけないと、慌ててトイレへ行った。
しかし、当然帰りにも、戸の前を通る。
その時には、「あっ」とか「ふっ」とか「ああっ」とか聞こえるわけだ。
足早に通り過ぎ、自分の部屋にもどる。
当然、俺の知識に死角はない。
だが、生で聞くと、ドキドキがしばらく収まらなかった。
「瀬尾さん。このツボに、お湯を沸かして入れてあります。湯冷ましにして、飲み水とか、うがいに使ってください。洗面にお湯が欲しいなら、桶の水と、この鍋の水を少しずつ混ぜて、使ってください」
「ありがとうございます。佐藤くん。本当は、私の方が気が付かなければ、いけなかったのにね」
「みんな、疲れていましたから。仕方がありませんよ」
「じゃあ。みんなも起きてくるでしょうから、ご飯を炊きますね」
そう言って、炊飯を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます