第6話 村での生活
村の中へ入り。
広場を囲むように、建てられた家を眺めながら、奥へと進む。
すると右手側の、奥まった所に、また数件家が建っていた。
どういう計画で、家が建っているのか分からない。
「この家かな?」
「そうみたい。結構。おっきいね」
「手前の家は、もう少し、小ぶりだったけどね」
皆が口々に、感想を言っている。
「表札が無いし、入ってみよう」
扉は、横スライドタイプの、板戸だった。
敷居に乗り。
上は板で、扉の分だけ隙間が空いたものだ。
力を入れて、スライドさせる。
中は、土間があり。
そこに、テーブルと奥に竈(かまど)が見える。
「まるっきり、昔の家だな。どこかの、文化遺産の様だ」
「そうですね」
瀬尾さんが、周辺を見ながら、言って来た。
「お父さんの実家に、こんな感じのが残っていました。台所とかは、別の部屋に新しいのが作られていましたけれど」
「それはすごいですね。どこなんですか?」
「長野県。山の中ですよ」
「へー。未だにこんなのが、残っている所があるんですね。じゃあ。薪で煮炊きとかも、した事があるんですか?」
「それは、さすがにありません。お風呂とかも、灯油の窯が付いていましたから」
まあ、何とかなるだろう。ただ薪は、乾燥させないと使えない。
分けてもらわないとだめだな。
「家の中の仕切りもすべて、板戸か。襖や障子じゃないって言うことは、紙がまだ作れていないのか? それとも、モンスターに襲われたときの、用心かな?」
「ああ。そうなのかもね。私も紙が作れていないのかと思ったけれど、こういう所だと、モンスターもだけど、盗賊とかも出るのかしら?」
と広瀬さんが言って来た。
「盗賊か。いやねえ」
長瀬さんも、気になるよなあ。
盗賊の場合、手をあげても殺されるだけだろう。
女の人の場合。
もっとつらいことになるかもしれない。
対処できるだろうか?
「いくつか、部屋があるようなので、見てみましょう」
「そうね」
皆で中に入る。
廊下だけと言うことで、靴のまま埃の積もった廊下を進む。
上がって左側は居間と言う感じで、一つの部屋がたぶん8畳くらいだろう。
手前の部屋には囲炉裏が切られていた。
畳ではなく板の間だ。
仕切りも壁ではなく板戸だ。
この二間は何かの時に一つの部屋として使うことができるのだろう。
奥側の部屋には囲炉裏がない。
単なる板の間だった。
個人用の部屋は、間口が90cmくらいで奥行きが長い。
2畳が3部屋と、同じく奥に長いが、少し幅が広い3畳程度の広さの部屋が2部屋。
土壁で仕切られていた。
一番奥だけ4畳半位だった。
その4畳半の反対側。
座敷側に2つ扉があり、トイレと風呂があった。
当然トイレは汲み取りで、風呂は大きい焼き物の壺? 瓶(かめ)が座っていた。
風呂だよな? ひょっとすると、水を張っておいて。
体を洗うだけなのか?
風呂場らしき部屋は、外に向けても扉があり、内側からつっかえ棒をしていた。
「さて。この4畳半位の部屋を、長瀬さん親子で使いますか?」
「良いんじゃない」
と、ほかの二人も、賛同してくれた。
「じゃあ。ちょっと広い部屋を、広瀬さんと瀬尾さんで使ってもらって、僕は玄関に一番近い。2畳の部屋を使います。さっきも言ったように、盗賊でも来た時に、対処がしやすいので」
すると、瀬尾さんが手を挙げた。
「この、土壁って防音性能。どうなんでしょうか?」
「結構あるはずなんですが。……気になるようでしたら、一つ開けて。2畳の部屋ですね」
こちら側の壁が、土壁なのは、元々倉庫だったのかもしれないな。
しかし、布団が欲しいな。
「じゃあ、いろいろと欲しいものがあるし、村長さんの所へ行ってみましょうか?」
すると、瀬尾さんも、少し落ち着いたのか、
「そうですね。雑巾とか、布団をいただければ、いいんですけどね」
とつぶやいた。
「後は、村の決まり事かな。面倒くさくなければ、いいんですけどね」
家を出て、村の奥側へ進んで行く。
少し、立派な建物が建っていた。
そうか。
元々この家を真ん中に、八の字に家が建っていて。
入口の方の家は、後から作られたのか。
人が急に増えたとかが、あったのか?
「すみません。村長さん。いらっしゃいますでしょうか?」
「はいはい。新人さんかな?」
出てきたのは、比較的若い。20歳ちょっとの感じだった。
「村長さんでしょうか?」
「そうです」
「すみません。予想より若い感じだったので、驚いてしまって」
「ああ。あの女神が、悪さをし始めたのは7年前で、私達が最初だったんですよ。まあ中へどうぞ」
「皆さんは、今日来られて。すぐに、森を出られたのでしょうか?」
「そうですね。道に気が付いたので。森に居ても、水の確保やモンスターが怖くて」
「たまに、あそこにとどまって。モンスターに殺される方もいますからね。定期的に、見には行っているのです。けれどねぇ」
村長さんは、辛そうに答えた。
「今まで、どのくらいの人が、こっちに来たんでしょうか?」
「はっきりは、分かってはいないが。100人にはなっていないと思う。私たちの時には、事故で死んだときに。魂を盗んでいたようでしたから」
村長さんが、答えてくれた。
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