第4話 自己紹介と現状確認

「あのすいません。とりあえず、皆さん。日本から送り込まれたんですよね。自己紹介と現状確認しませんか?」


「えっああ。そうね」

 隆君のお母さんが、返事をした。


「それなら、私から。長瀬みゆき28歳。この子は隆で3歳だったんだけど、こんな感じですね。どうしましょう?」

 そりゃ親でも困るよな。


 長瀬さんは、背が俺より低く。

 160cm位細身で隆君の方が165cm位あるから、抱き着かれている今の状況は、しんどそうだ。


「じゃあ。次は俺で。佐藤普人15歳です」


「へー高校生か。そしたら違和感がないよね」

 長瀬さんが言った。

「そうですね」


「じゃあ。私は、広瀬佳奈美。さんじゅ……年って、必要? みんな15歳くらいになったんですよね」

「そうですね。じゃあ名前だけで」

 そうか。つい長瀬さんが、年を言ったけれど、女の人にとっては地雷か。

 広瀬さんは、長瀬さんより少し低く。

 156cmくらいかな?少し、気が強そうな感じを受ける。


「最後が私ですね。瀬尾佳代って言います。よろしくお願いします」

 瀬尾さんも160cm位で、少し、長瀬さんより体のメリハリがある。

 でも、太っている感じじゃない。


「でも。一つだけ、良いでしょうか?」

「何?」

「みなさん。お仕事はしていたんでしょうか?」


「まあ私は、事務兼SEだけど、マクロを組むくらい」

 長瀬さんが言った。


「私は、WEBデザイナーと言えば、聞こえはいいけれど、派遣だったわ」

 と広瀬さんが答えた。


「ええと。私は、看護師です」

 瀬尾さんが、そっと答えた。


「俺は高校一年だったので、あまりお力にはなれないかと思いますが、よろしくお願いいたします」


「「「こちらこそ」」」

 皆から、返事が返って来た。


「あの質の悪そうな女神が、モンスターがいるって言っていたので、いつまでも森に居るのは良くないかと思います。ちょうど、と言っていいのか。そちらにけもの道が続いているみたいなので、開けた所か。川が見つかるまで移動しましょう」


「そうよね。道があるっていうことは、ここに人が来ているって、いう事だものね」

「あの女神に、召喚されると、必ずここに来るんでしょうか?」

「やってそうだわ。あのいけ好かない女神?女神と呼ぶのもいやだわ」

 広瀬さんが、そう言うと皆が頷いた。


「行きましょう。一応、後ろも警戒しておいてください」

「ひっ」

 と言って長瀬さんが振り返る。隆君はまだ、抱き着いている。

「あのね。隆。ちょっと離れてくれない。お母さん歩きにくいの」

「えーやだ」

 うん。15歳くらいの男が言うと、かわいくない。


「じゃあ。おててつないでいきましょ」

 しぶしぶ、隆君は離れて、手を繋いだ。


「じゃあ。行きましょう」

 そのまま森の中を歩き、15分も経っただろうか、視線の脇に、小さな子供のようなものが3つ映った。


「しっ。静かに」

 小声で、皆に伝える。


「どうしたの?」

 広瀬さんが、そう聞いてくる。


「あれは?」

 と言って指さす。


「子供じゃないわね。ゴブリンぽいわね」

 広瀬さんがそう言ってくる。


「ゴブリンてなあに?」

 と、瀬尾さんが聞いてくる。


「ラノベなんかで、出てくる。モンスターです」

 俺が小声で答える。


 ゴブリンは立ち止まり、クンクンと匂いを嗅いでいる?

 やばい。こっちが風上か? 指をくわえてつばを付け。

 風を見る。

「あちゃー。こっちが風上です。皆さんゆっくり先を急いでください。僕が殿(しんがり)を務めます」


 皆がうなずいて、静かに移動を開始する。

 ゴブリンは、棍棒が2匹。

 一匹はぼろいが、ナイフ? 何か尖った物を持っている。


 皆の後に続きながら、後ろを警戒する。


 あっ。気が付きやがった。


 こちらに来始めた。

 先頭は棍棒だ。

 迎えに行って、振り下ろされた棍棒を寸前でかわす。

 そのまま、ほほを殴る。


 よし棍棒を放した。

 落ちた棍棒を掴みに行った。

 手が獣臭い。

 まあゴブリンだから、風呂なんか入っていないんだろう。


 ケガをすると、感染症が怖いなと考えふと気がつく。

 意外と冷静だな。


 起き上がってくる奴と、後に続く棍棒野郎。

 第2弾が同時に、こちらに向かって来た。


 起き上がって来た奴の、顎先に左足でけりを入れ。

 棍棒野郎の前に押し出す。


 それに、対して意識が行ったのを確認。

 右上段から、棍棒の先がちょうど棍棒野郎の頭にあたるように振り下ろす。


 ぐしゃっと、嫌な手ごたえがしたが、そのまま。もう一度振りかぶり。

 最初の一号ゴブリンの頭へ降り下ろす。


 やはり嫌な手ごたえを残した。

 それを見て、尖ったものを持ったゴブリン3号が、躊躇する。

 そのすきに、距離を詰める。

 横殴りに、耳の辺りにあたるよう、棍棒を振りぬいた。


「グギャ」と言う声を残し、倒れたのを確認する。


 棍棒を構えたまま、動き出さないのかを少し待つが、大丈夫なようだ。

 そこで、「ふう」と息を吐き、ゴブリンの持っていた尖ったものを確認する。


 見ると、鉄棒を尖らせただけの物の様だ。

 製鉄技術があるのか?


 とりあえず、武器は武器だ。

 貰っておこう。

 もう一つの棍棒も、拾い上げた。


 さっきは必死だったが、握り部分が、油が浸みこんだ感じで汚いな。

 やめればいいのに、匂いを嗅いでしまった。

「くさっ」


 反省した。想像できたのに……。


 臭い棍棒2本と、尖った棒を手に入れた。

 何もないよりましだ。


 先に行った4人を、足早に追いかける。


 少し行った先で、皆は待っていてくれた。


 俺の姿を見ると、安堵した感じで、長瀬さんが

「大丈夫だった?」

 聞いてくれて、瀬尾さんが

「怪我はしなかったですか?」

 と、声をかけてくれた。


「ああ。大丈夫です。奴らは意外と弱くて、倒しました。これは戦利品です」

「へぇー」

 そう言いながら、広瀬さんが手を伸ばしてきたが、

「ゴブリンの持っていた。持ち手が凄く臭いです」

 と言ったら。

 すごい勢いで、手を引っ込めた。


「ははっ。これでも武器ですから。無いよりましですよね」

 そう言って笑うと、広瀬さんも苦笑いをしていた。

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