第16話

 CJKCでの初めての講義は、シェーティベリ先生による実践授業であった。先生は迷いなく教室の扉に魔方陣を描くと、さっさと扉を開けて教室から出ていった。


「全員早くついてこい」


 扉の向こうから先生の声が響く。


 クラスメイト達はもぞもぞと立ち上がり、魔方陣の描かれた扉をくぐっていく。皆に続き、扉の向こうを覗いてみると、そこは廊下などではなく見渡す限りの広い砂漠だった。


「ここは……」


 ヴィクトリアが思わずつぶやくと、すぐ後ろにいたロイドが答えてくれた。


「チェザリス砂漠です」

「チェザリスってリュクス皇国の南の辺境にある、あのチェザリス?」

「ええ。今日の一限目は防衛魔法の実践訓練ですから。ここ、チェザリス砂漠はCJKCの第一訓練場に指定されています」

「そうなのですね。私、砂漠は初めてで……わっ」


 砂漠に一歩足を踏み出した途端、突風が細かな砂が肌を叩き、猛烈な風はヴィクトリアの足をすくった。ヴィクトリアは思わず目をつぶった。


 飛ばされる……!


 しかし、そう思ったのも一瞬で、ふわりと風で浮いた体はすぐに地面に引き戻され、砂粒の痛みからも解放された。


「魔法で防護壁を形成し、砂と風を防ぎます」


 どうやらロイドがヴィクトリアの体にも防護壁を作ってくれたようだった。

 ヴィクトリアは慌てて自分の周囲に防護壁を発動させた。


「あ、ありがとうございます、ロイド様。もう大丈夫です」


 ロイドは小さく頷くと、ヴィクトリアから離れていった。


 砂漠の中をしばらく進んでいくと、砂嵐の先に巨大な岩石がみえた。

 どうやら、皆でそこを目指しているらしい。

 ヴィクトリアはほっとした。

 先ほどから、砂に足を取られて何度も転びそうになるし、いくら防護壁で守られているからと言っても、砂嵐の中を行先もわからずに進んでいくのは怖かったのだ。

 岩石にたどり着くと、シェーティベリ先生はおもむろに立ち止まり振り返った。


「今から組み分けをする。3人一組でこの岩石のダンジョンに入り、「祝福の花」を摘んで戻ってこい。制限時間は2時間。時間内に戻れなかったチームは、私が指定する防衛魔法の書物について2000文字の論文を書き、あさってまでに提出すること。5組それぞれの入り口はこちらで決める。ではな。健闘を祈る」


 先生が言い終わるや否や、目の前に大きな入口が現れた。

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