第13話 打ち合わせ
夕方の営業までにはまだ時間があるので、一度店を閉め、マルクとアクアはイシスと共に葬儀屋へ打ち合わせに向かう事になった。
葬儀屋の玄関ベルを鳴らして店内に入ると、ラピスとルビーがソワソワしながら待ち構えていた。
「「あっ、おかえりなさい」」
イシスの後ろにアクアと手を繋いだマルクがいるのを見て、2人は作戦が成功したのを悟り、小さくガッツポーズをする。
イシスがマルク達をソファへ案内すると、葬儀の流れを説明した。
「細かいところはお2人に決めていただきますが、まず私の方から基本的な流れをご説明いたしますね」
イシスは、パンフレットを広げて2人に見せる。パンフレットには、当日の流れを示したフローチャートや、各用語の説明が書かれてあった。
「奥様のご遺体は、この街の規定に則り、アパタイト教会に運ばれ、現在は腐敗防止のため、魔法で凍結保存されております。こちらは葬儀の際に解除いたしますので、ご安心ください。また、皆様にお披露目する前に、私の方で奥様のお体の状態を確認し、状態に合わせてヒールを使用させていただきます。ヒールが不要な場合にはお体の浄化から始めさせていただきます。ここまでで何かご質問はありますか?」
イシスがキリのいいタイミングで2人の様子を窺う。マルクがアクアの方を見ると、首を横に振るので、マルクは「大丈夫だ。続けてくれ」と先を促した。
「浄化の魔法でお体を清潔に整えたら、衣服を着替え、髪をとかし、化粧を施します。衣服や髪型にご指定はありますか?」
マルクとアクアが顔を見合わせ、にっこり笑う。どうやら2人の気持ちは一致しているようだ。
「いつもお店にいる時の格好にしてもらいたい。それが"カンナ"だから」
「いつものカンナさんですね。少々お待ちください」
イシスが目を閉じ、祈りを捧げると、お店に立つカンナの姿が心に浮かんだ。
「かしこまりました」
イシスが「素敵な方ですね」と付け加えると、2人は自分の事のように喜んだ。
「カンナさんのご準備が整いましたら、皆様へのお披露目です。1人1人ゆっくりカンナさんと対話していただき、皆様全員とお別れのご挨拶が出来たら、最後に私から祈りを捧げます。以上が主な流れとなりますが、何か気になる事はありますか?」
イシスが最後に確認をすると、アクアが不安気な様子で尋ねた。
「おかあさんも ミレおばさんみたいに きれいになる?」
イシスはアクアを見てにっこり笑うと、はっきりとこう答えた。
「安心して。お母さん史上最高のお母さんにしてみせるから」
イシスが自信満々にそう告げると、アクアは安心したようににっこり笑顔を返した。
マルク達と話し合い、カンナの葬儀は翌日の夕方に執り行う事になった。
お客と一緒にお酒を飲むのが大好きだったカンナのために、マルクの店を貸し切り、盛大に宴を催そうと決めた。明るく皆から愛されたカンナらしい葬儀だ。
マルクはホールで皆と笑い合うカンナの姿を思い浮かべながら、いつも以上に腕によりをかけて宴の準備に取り掛かった。
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