第11話 翼の思惑


 私には新田 翠という兄がいる。しかし、血は繋がっていない。いわゆる義兄である。

 出来たのは去年。お父さんから再婚をしてもいいかと言われ二つ返事で了承したら、なんと再婚相手の人には私と同学年の男の息子がいたらしい。


 私は最初とても驚いた。私は男子と殆ど喋ったことがない。しかも、同年代の子が急に兄妹になるなんてとても嫌だった。

 お父さんはじゃあ会ってみてそれで嫌ならいいからと言った。


 私は人見知りだ。人と話すのは怖い。相手の気持ちが分からないから。

 初対面の人と挨拶なんて出来ないし、ましてや男の子なんて無理に決まってる。……お父さんをガッカリさせちゃうなととても重い気分で会いにいったのを覚えている。


 何故かお父さんは大丈夫だと分かっているように余裕の笑みを浮かべていたけど。

 理由はすぐに分かることとなった。


「俺は翠って言う。同年代の兄妹なんて嫌かもしれないけど俺はもう今からお前のことを妹だと思ってる。だから、仲良くしてくれると嬉しい」


 言い方は少しぶらっきぼうだったが、彼の周りには優しさが渦巻いていた。彼の瞳は優しく口元は微笑んでいた。普段なら、男子と目を合わせることなど無理なはずの私が彼の目に吸い寄せられた。


 でも、結論から言うと結局挨拶をすることは出来なかった。……でも、いつもと声が出ない原因が違うのは明らかであった。

 いつもなら、目を合わせ挨拶をしようとすると恐怖でできなくる。


 でも、この日は……。


「あっ、あああのののの」

「どうした!?」


 お兄ちゃんの顔を見るたびに顔が熱くなっていき、声を出そうとしても舌が回らない。

 不思議と恐怖感はなく心臓がバクバクと自己主張を始めていた。


 私はこの瞬間、人生で初めて恋に落ちた。


 その後もお兄ちゃんは優しかった。ことあるこどに、なんやかんや言いながらも私を助けてくれた。


 私が学校で女子に絡まれ困っていた時。

 私は一言もお兄ちゃんに言ってなかったのに、どこで情報を入手したか知らないが色々手を回して助けてくれた。

 ……感謝を伝えたがそんなもの知らないと嘘をついていた。

 少し照れた横顔が可愛かった。


 私がお母さんの形見をなくした時

 私が必死に探し回っていると、お兄ちゃんが私に「たまたま街歩いてたら見つけた。これ、翼のだろ?」と渡してくれた。

 お兄ちゃんは疲れ切っていて、あとでお義母さんに聞いたところ5時間ほど家にいなかったらしい。


 あとでプリンを作ってあげるとめちゃくちゃ喜んで食べた後、「でも、本当にたまたまだから気にするなよ?」と言ってきた。

 隠したって無駄なのになぁ。


 私の恋心はドンドン大きくなっていった。


 ……しかし、お兄ちゃんはよくモテた。元々、顔立ちが整っているのにもかかわらず、夏樹ちゃんに勝つ為と勉強も運動も頑張り常に学校の1番2番に居続けた。


 女子からモテないわけがなかった。……しかし、大半の女子はお兄ちゃんをアクセサリーとしての好きでしかなかった。そんな奴らに私のお兄ちゃんが取られるのが嫌だった私は工作をしてお兄ちゃんに近づけないようにした。


 しかし、昨日夏樹ちゃんの様子が変であった。いつもなら、お兄ちゃんを毛嫌いして近づきもしない。……だから、夏樹ちゃんとは安心して相談したり話せたりしていた。


 しかし、昨日夏樹ちゃんがお兄ちゃんに向けた目は恋する乙女そのものだった。私自身が恋をしているから分かった。夏樹ちゃんはお兄ちゃんに恋をしていると。


 それもアクセサリー目的ではない。というか、夏樹ちゃんに限ってそれはあり得ない。

 夏樹ちゃんは美人である。可愛くもある。

 私なんかじゃ到底及ばないくらい。


 そんな夏樹ちゃんがお兄ちゃんに恋をした。

 それは私にとって最も危惧するべきことであった。私は焦った。……そして決めた。

 夏樹ちゃんに正々堂々挑むことを。お兄ちゃんは渡さないんだからー!!


 ということで今日はお兄ちゃんの学校についていって彼女アピールをして外堀から埋めていくことにした。

 かの戦国武将はこう言った。

「恋をしたならまずは外堀から埋めなさい」と。


 戦さにおいて外堀を埋めることはかなり大きく作用する。だから、アピールをしたかったのだが私はやはり初対面の人と話せない。

 お兄ちゃんの場合はやはり特殊だったのだ。

 それでも、お兄ちゃんを諦めたくない。


 私はなんとか勇気を振り絞って1人にすることが出来たのだ。まずは、1人。これから、少しづつ埋めいけばいい。


 私はお兄ちゃんに抱きついて心臓が飛び出るんじゃないかというくらいバクバクしているのを必死に抑えて、赤く染まった顔を隠しながらそんなことを考えるのだった。



 ちなみに、私の学校はお兄ちゃんの学校と逆方向だったので普通に遅刻して怒られました。くすん。わ、忘れてたんだもん!

 はぁ、これからどうすればいいんだろう?


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 次回 主人公がクラスで裁判にかけられる?

 


 あっ、星をくだせぇ(いつもの)でも、割とガチでモチベに繋がって早く出せてます。

 なのでくださると本当に嬉しいです。

 どうか、お願いします。




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