第9話 渡せなかったんだよぉ

 筆休め的な回です。今回は夏樹さんの可愛いさを堪能してください。一種の番外編かも……。


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「ふー、作れた。作れた」


 私は朝5時から2時間をかけてクッキーを作り終わることに成功した。少し甘くして新田の好みにも合わせたりした。

 新田はきれい好きだから1つ1つ個包装をして食べてもらえるようにもした。

 昨日の夜も何度も何度も作ってようやく出来たものだから味も大丈夫……なはず。


 あとはこれを渡すだけ。と考えたところで少し困った。……どうやって渡せばいいんだろう? 私と新田は今まで犬猿の仲だ。

 今までとは違って新田と争わないように、なるべく仲良くできるように最近は接しているが……何故か逃げられたりしてしまう。


 もしかして……上げても貰ってくれないんじゃ? 想像すると少し怖くなってきた。

 断られたらどうしよう? 美味しくないって言われたら? それどころか近づくなって言われたら?


 いや、大丈夫。新田はそんなことは言わない。だって、私をあんな風に助けてくれたんだから。私は決意を固めると家を出て新田を待つことにした。


 *


 ガチャリ ドアを開けた新田が出てくる。今しかない。今しか。今、渡す______新田に?

 どんな顔して? ……いや、渡すの。でも。


「き、今日もいっしょに行ってくれない?」


 ようやく出た言葉はそれだけだった。で、でもこれも言わなきゃだしあとで渡せばいいの!


 しかしその後も渡そうとするも新田の顔を見るたびに緊張してしまい渡すことが出来なかった。


 *


 ……失敗した。朝、勇気を出して渡しておくべきだった。学校に来てからは新田は私から遠ざかろうとするから中々渡せないし……みんなが見てる前で渡すのは緊張してしまうし新田にも迷惑がかかる。


 と思って昼放課に渡そうとしたが新田に撒かれてしまった。ぜ、全然上手くいかないよぅ。



 *


 新田の部活を終わりを待って渡す作戦。帰り道なら、新田と2人きりになれるし完璧な作戦……のはずがずっと立っていたらフラフラしてきてしまった。

 あぁ、ようやく新田がきたがとても元気が出ない。それどころか足もおぼつかないし視界もあやふやだ。


 そして、そんな私を見て新田は急に身をかがめた。??? どういうこと?


「ほら、乗っかれ。そんな体調の奴を歩かすわけにはいかん」

「ふ、へぇぇぇぇ////!!!?」


 おんぶってこと!? え!? 新田が私を背負うの? えっぇぇぇぇ!? ……で、でも体調も限界だし。乗るしかない。私の心臓が止まらないことを祈ろう。


 *


 ようやく家に着くことは出来たが結局新田に渡すことが出来なかった。頑張ったのにな。

 私って本当に馬鹿だ。


 ……違うでしょ。新田に少しでも気持ちを伝えるんでしょ。その為にあんなに頑張ったんでしょ。私は新田に渡すんだ!!


 私は覚悟を決めると新田の家へと歩いていった。


 *


 あの後、色々あって新田の家に上がってしまった。しかも、今新田が目の前で私の作ったクッキーを食べようとしている。

 こんな状況、冷静でいられないよう//

 琴さんがニヤニヤしながらこっちを見てるけどそれどころじゃないんだよ。


 ついに新田が私の作ったクッキーを食べた。

 もう、汗が止まらない。どうなのかな? もし、美味しくないって言われたら? 無理、私死んじゃうかもしれない。でも、何も言われないのもそれはそれで悲しいけど。


 ……でも、あの新田が私が作ったものを美味しいなんて言うはずが……。


「……これはおいしいな」


 えっ!? 今、新田が「おいしい」って!?

 嘘! えっ!? えっ!? 笑顔なんだけど!?

 めちゃくちゃ美味しいそうに食べてくれてるんだけど!?


 あっという間に食べてしまい、少しついた口元についたクッキーを拭う新田。本当に美味しいって思ってくれたんだ。……なんか、胸の辺りがポカポカしてきたよぉ。


 喜んでもらえて良かった。もう、本当に好き。私はこの日幸福感いっぱいでベットに入るのだった。



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 前回3話辺りの夏樹視点でした!!

 ちょっと番外編ぽいですが……まぁ、許してください!


 次はストーリーを動かしていきますので星をくだサイエンティスト(口調が暴走しすぎやろ)……もし、良かったら星と応援お願いします。少し更新が早くなるかもです。




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