第3話 新田 翠の行動


 夏樹 葵視点


 あの日はいつものように学校に帰るといつものようにカツラを外して買い物へと出掛けた。


 私の本当の髪の毛の色は銀色…すなわち銀髪である。ただしこれは染めているわけではなく、おじいちゃんが元々ノルウェー人であり、留学中におばあちゃんに惚れ込みそのまま結婚したので生まれたのが私のお母さんである。


 ただ、お母さんは普通に黒髪でお兄ちゃんも黒髪私は何故かおじいちゃんの遺伝を強く受け継ぎ銀髪なのだ。普段学校に通う上では、流石に目立ちすぎてしまうのでカツラをつけているのだがいかんせ暑い。


 それなら、銀髪を黒く染めてしまえばいいのでは?と思うかもしれないが私はこの髪を誇りに思っている。そう易々と変えられるものではないし。

 こうして、買い物に行く時などは外していくことで学校の人に会っても気づかれないので色んな所に行けてそこそこ楽しいのだ。


 この日も本屋に出向き少女マンガを選んでいた。そう。私の密かな趣味はこうして本屋に訪れて少女マンガを読み漁ることである。クラスメイトの人には絶対に知られたくないのでそういう意味でもこの銀髪は役に立つのだ。


 しかし、銀髪というものが日本で目立つことには変わりがない。そして、この日は悪意をもった人はが私に興味を持った…ただそれだけだった。


「ありやとうございやしたー」


 私は気に入った3冊を購入するとワクワクした気持ちで本屋を出た。本はこうして買った後、家に帰って読むまでのドキドキ感もたまらなく楽しいのだ。


 その時だった。私の前に3人ほどのいかにもチャラそうな男達が立ち塞がったのは。そして、その内の1人が私に話しかけてきた。正直、この時点でかなりウザかった。


「お嬢ちゃん銀髪!? マジかよ。珍しいね? ね?」

「いえ、大したことじゃないので通してくれますか?」


 私は冷静に対処したと思う。ただ、相手にとってはあまりいい対応ではなかったらしい。


「何だよ、せっかく褒めてやったのによぉ。そういう態度で来るわけ? へぇ〜」


 なにが褒めてやったなのか? ただただ私は侮辱されただけにしか思えなかったがこの時は黙っていた。男は無言で黙って見つめる私に更にイラついたらしくあからさまに威圧的な態度を示してきた。


「本当はな、きめぇんだよ。テメェみたいな奴」

「そうっすよね。ブサイクがしゃしゃり出てんじゃねぇよ」

「そうだそうだ。自分で気持ち悪いって自覚あるの?」


 はやし立てるように横にいた2人も言ってくるが特に気にならなかった。私のことを言っただけなら……。


「本当に気持ち悪い髪の毛だよな」

「そうっすよね。小汚いというか。もしかしてこれ全部ゴミでゴミを頭に付けてるだけじゃないっすか?」

「ありえる〜。つーか、マジでこの髪の毛気持ち悪いな。切っちまおうぜ?」


 奴らはおじいちゃんから譲り受けた大事な髪を侮辱しただけでなくハサミを取り出して切ろうとした。私は恐怖もあったがそれ以上に許せなかった。

 おじいちゃんの誇りの銀色の美しい髪が…おじいちゃんが褒めてくれた私の髪の毛を馬鹿する奴らが。何だかおじいちゃんを馬鹿にされたようで許せなかった。


 だから……私は奴らに対して怒った。そんなことをすればどんなことが起こるか分かっていたはずなのに。


「私のことをいくら馬鹿にしても構わない」

「あん?」

「でも…おじいちゃんから受け継いだこの髪の毛を馬鹿にするのだけは許せない。あんたらなんかにこの髪を侮辱する権利はない。ゴミなんかじゃない。今すぐに訂正しろ」

「テメェ」


 目の前の男が明らかにイラついたように顔を滲ませる。自分よりも小さく脆い存在に命令されたことが余計に気に食わなかったのだろう。


「覚悟しやがれ、このブサイク女がぁ」


 そうして、拳を振り上げてくる男。私は、こんな奴らを恐れてはいけないと思いつつも衝撃を予想し目を閉じる。次の瞬間には、男の拳は私の頰を殴っているだろう。


 パァン しかし、実際には私の頰に男の拳が届くことはなかった。何故なら。


「いい加減にしろよテメェら。さっきから」

「なん…だと?」


 男の拳は私の前に飛び出していった私の犬猿の仲はずの新田 翠によって掴まれていたのだから。


 新田は私とその男達の間に割って入ると男達を威圧した。


「さっきから聞いてりゃこんな綺麗な髪を散々馬鹿にしてあんたら一体何様なんだよ!

 この女の子が髪を侮辱されるたび辛そうにしてんのが分かんねぇのかよ!!」


 そして怒鳴りつけたのだった。あまりの迫力に目の前の男達が腰を抜かしていると新田は私の手を取り男達が見えなくなるまで私を引っ張っていったのだった。


 *


 その後、私の手を離すと新田は私の怪我を心配し始めた。


「大丈夫か? どこか怪我をしてないか?」


 怪我を心配しているらしい新田は不安そうに私の体に目立った外傷がないか探している。

 新田の心の底から心配しているような顔など見たことがなかった私は不覚にもドキッとしてしまった。


 私は慌てて声を出す。


「だ、大丈夫。それより助けてくれてありがとう」

「いや、本当にごめん。本当ならもっと早く助けてあげるべきだったのに俺が少し怖気付いたばかりに怖い気持ちにさせた」

「そ、そんなこと」


 新田が頭を下げてくるので再び慌ててしまう。そして、顔をようやく上げた新田は私を見つめると言った。


「あんな奴らのことなんか気にしなくていい。その髪の毛はとても…綺麗だ。そして、その髪の毛に自信を持っている君自身も綺麗だ。誇っていい。君は綺麗なんだ」

「ッッッッ///!!」


 正直、こんなことを言われて頭がパンクしてしまった。嬉しさと恥ずかしさと何やらで顔がドンドン赤くなってしまっているのが自分でも分かっていた。


「じゃあ、俺はこの辺で」


 新田の方も気恥ずかしくなってしまったのか去っていってしまったが……私が新田に惚れるには充分すぎる出来事であった。




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 そんなわけで始まった甘々なすれ違いラブコメどうか次回もよろしくお願いします。


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