第2話 本当にどうした夏樹
「フフ、長年一緒だったのに一緒に登校なんて初めてだね?」
「お、おう。そうだな」
隣を歩く夏樹が少し頰を赤くして言ってくるが俺にはまるで意味が分からない。昨日まで、俺たちめちゃくちゃ仲が悪かったろうが! どうしたんだよ、夏樹!
「あっこれ言い忘れてた。昨日は言えなかったけど…昨日は本当にありがとうね。ちょっと強引だけど嬉しかったよ?」
そう言って「へへ」と自分の頭を撫でる夏樹。不気味だ。不気味すぎる。特に俺は昨日も夏樹に感謝されることなどしていないし、たとえしたとしても素直に感謝をするような夏樹ではない。最早、偽物に思えてくるほど今日の夏樹は変であった。
そして、そんな夏樹と歩いていると学校が見えてきた。良かったようやく解放される。
こんな不気味な夏樹ならいつもの方がマシだったな。と安堵に浸る俺に夏樹は死刑宣告を告げてきた。
「隣の席だもんねー。フフ、嬉しいな」
そう言えばそうでした。
「なんで逃げようとしてるか分からないけど…逃がさないから」
そう言ってニッコリと微笑む夏樹。怖い。最早、怖い。誰だよコイツ。夏樹はどこいったんだよ!
俺は恐怖に身を震わせながら終始ニコニコと嬉しそうな夏樹に引っ張られて教室の中へと入っていくのだった。本当にたすけて。
*
教室に入ってしばらくするとクラスメイトがざわいついていた。そりゃそうだろう。
昨日まで、顔を合わせるたび喧嘩をしていたはずの俺と夏樹が……というより夏樹が。
「今日はいい天気だね。ねぇねぇ、聞いてるの? ねえねえ。もしかして、照れてるの?
…だとしたら嬉しいんだけど」
俺に友達以上の態度で接してきているのだから。って、夏樹ほっぺをつつくのをやめろ。
本当に今日のお前不気味すぎるから。
クラスメイトの奴ら今日はミサイルでも降ってんじゃねぇかと防空壕を作ろうとしちゃってるから。みんな怯えてるから。俺も、それに参加しちゃうくらい怯えてるから。
……ザクザク。早く掘らないとミサイルが来るかもしれん。
さすがに見兼ねたのか駿太が夏樹に声をかけた。
「お、おい。夏樹。急にどうしたんだよ?
も、もしかして、
普段なら、こんなことを言えば駿太は夏樹に半殺しにされていたであろう。俺とクラスメイトも駿太のグロ映像はゴメンなので目を背ける。しかし、予想した反応とは大分異なっていた。
「ば、ば、馬鹿言わないでよ。し、し、駿太。だ、誰がデレてるって」
顔を真っ赤にして震えている夏樹が立っていた。
(なんだあの可愛い生物は)
クラスメイト全員の思いが重なった瞬間であった。夏樹からの攻撃を予測して血液パックを持って身構えていた駿太ですらそんな表情をしていた。
いや、可愛い。この可愛さは反則…でも、それと同時にやはり教室中を恐怖が駆け巡る。
(だとしても何があったらこうなるんだよ)
駿太は今度は俺に駆け寄ってきて耳元で尋ねてくる。
「お、おい。夏樹に何があったんだよ。昨日、お前なんかしたか?」
「いや、俺にもさっぱりだ。正直、不気味ですらある」
本当に謎なのた。昨日まで、あんなに俺のことを嫌っていたのに……なんで、1日でこんなことに? しかも、昨日はマジで夏樹に良いことなどしていない。謎は深まるばかりだ。
そんなわけで……。
「宿題の答え合わせしない? ほら、ちょっとこっち寄ってよ。近寄らないとできないよ?」
「いや、流石に肩が当たるまで寄るのは近すぎじゃない?」
「はぅぅ// それもそうね。いきなりすぎたよね」
いつもとは違う学校生活が幕を開けた。
*
いつもの数段は疲れる1日も終わり今日は部活もないので帰ろと下駄箱から靴を取り出して学校を去ろうとすると肩を掴まれ止められる。振り返ると……。
「なんで置いていこうするの? 待ってよ?」
夏樹が立っていた。というか、今日はいつもこんな感じで俺にべったりなのだ。心臓に悪いのでやめて欲しい。いや、割とガチで。
授業ではことあるごとに俺に近寄ろうとするし。意見が食い違うことがあっても「そういう考え方もあるよね〜」と微笑んでいた。
色んな先生が腰を抜かして夏樹を保健室へと勧めていたが……俺も激しく同意見だった。おかしすぎる。
極め付けは、昼食の時間に俺に自分のお弁当の具材を差し出して「食べてくれない?」と言い放ったことだ。
元々、顔はいい夏樹だ。
黒髪のロングで長く美しい髪は人目を引く。
そして、青く透き通るような瞳はその可愛らしい仕草を加速させる。そして、極め付けは男子なら必ず目を惹かれる出るところはしっかりと出た体型。
近くにいたクラスメイトは男女問わずその可愛らしさに倒れてしまった。
そんなわけで今日1日中おかしかった夏樹だが…授業が終わってもおかしいままだ。正直、最早心配にすらなってきている。
「今日も楽しかったね?」
「お、おう。そうだな」
それにいつも俺には絶対に見せることのなかった笑顔を振りまいてくるのだ。こうなると、俺もいつものように悪態をつくことは出来ずに曖昧な返事しかできなくなるというものだ。
「いやー、家まで隣だもんねー。嬉しいな」
ニコニコと俺に笑いかけてくる夏樹の笑顔は眩しい。心の底からの笑顔に見える。だからこそ分からない。本当になんでこうなったのか。
「じゃあね! また、明日!」
「お、おう」
そう言って隣の家の夏樹の家に入っていく夏樹を眺めながら俺はため息をついた。今日の夏樹は疲れたな。
*
「フフ、新田驚いた顔をしてたな〜」
私は、家に帰るとベットに寝転び足をバタバタさせる。今までの私ならあり得なかったこだ。
「でも、新田には責任とってもらうんだから。私をこんな気持ちにさせておいてただでいれると思うなよ〜」
そう呟くと私は自分の銀色の髪を撫でながら忘れることのない昨日のことを思い出していた。
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さぁ、一体どういうことなのか? この時点で何か分かった人はかなりヤバイです。
次回は夏樹さんが昨日のことを振り返ります。一体、何があったのか
作者のモチベ向上につながるので是非星と応援をお願いします。
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