(五)袁氏内紛
「それでそなたは」
「
「できれば、そのほうがよかったんですがね。
―――
「司空、―――曹
つい昨年まで幕僚として仕えていた大将軍
袁紹とは「四世三公」とたたえられた天下屈指の名族
中原各地には賊軍討伐を名目とした諸軍閥が割拠し、その大兵乱のなかで頭角を現したのが名族中の名族たる袁紹であり、彼の幼馴染でありながら対照的な出自―――
そして世に無秩序が進行するなか、幼くして擁立されて以来権臣たちに身柄を奪われつづけてきた少年天子に庇護と奉戴の手を差し伸べたのもまた、ほかならぬ曹操であった。袁紹を初めとする各地の軍閥首領が帝に対する態度を決めかねている一方で、洛陽から自らの本拠地である
元号が
以来、曹操と袁紹の対立はいよいよ抜き差しならぬ様相を帯び始めた。
そしていまから三年前のちょうど同じ月、中原特有の乾いた空気がいよいよ乾ききり寒さが厳しさを増し始めた十月に、袁紹軍は
官渡敗戦の報を受けて冀州各地の城や邑は次々と曹操に投降し、袁紹は憤りと憂いを募らせて病没した。それが昨年五月のことである。
袁紹から冀州名士のひとりとして
袁紹没後は本来ならその後継者にひきつづき仕えるのが順当であったが、彼は
父親の喪中にもかかわらず露骨な抗争を演じ始めた兄弟は、父の幕僚たちのなかでもその品格と直言によってとりわけ重きをなしていた崔琰を争うようにして自らの陣営に引き入れたがったものの、崔琰はいずれにも附かなかった。そして職を辞し郷里の清河
親族一同はもとより、同僚だった
今年に入り、袁兄弟の対立はいよいよ決定的なものとなった。二月にそろって曹操軍に敗北してからまもなく、兄弟はついにそれぞれの軍隊を動かし、互いを攻撃し始めたのである。目を覆うような骨肉の争いの舞台となったのがまたも冀州、そして東隣の
袁譚が拠点とし袁尚が猛攻をかけた
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