第27話 暴露
次の日気まずい気持ちのまま私は莉登校した。
重苦しい雰囲気のまま教室へと向かうと、いつものように私はひとりで机に腰掛けた。
莉紗は他の友達とお喋りしている。
どこかしら、無理をして友達に合わせているように私には思えた。
昨日は何で、あんなひどいことを言ってしまったのだろう。
念のため謝ってはみたけれども、蛇は登校したのだろうか。
机に暗くなりながら座って授業を待っているとあの近藤君が
「やああ、グッドモーニング、エブリワン! ついに俺様登場!」
とつい前に習った英語の構文を披露しながら、またいつものようにお得意の明るさで教室に入って来た。
一番苦手なやつと席が近いと動悸までしてしまう。仕方ない。席替えでくじの運が悪かったんだから。
近藤君の視線を合わせないように注意を払ったのだが、近藤君は次の獲物を見つけたと言わんばかりににやにやと笑った。
「知っているか? 問題の三年生のこと? 俺はある重大な秘密を知っているんだ!」
ここで黙っておくべきか悩んだ。
黙ったら夏休みが終わるまではずっと嫌な噂をたてられる。
「あのなあー。すげえ、スキャンダル! あの日野真は弁護士の若い兄ちゃんと若い女とやっちゃって生まれた私生児なんだよ!」
やっぱり、意識していたかもしれない。
「どこで知ったのよ!」
こいつのまたいつもの妄想だ。
ほら、夜這いとか不倫とか。よくピーピーと言っているじゃない?
「俺のおじいちゃんから聞いた。聞いたところによると血捨木の親父が同僚に話していたって聞いたぞ。あとあと他にもなぜ都会の福岡から来たのか……」
「嘘なんか言わないでよ!」
「嘘じゃないぜ! 本当だよ。血捨木の親父が口にしていたんだから。あの三年生は児童相談所の常連さんで、前にいた学校でもナイフで脅して退学処分になったんだって。ヒヒッヒヒッヒー。しかも、あの問題児は福岡では後大層に私立中に通っていたとか。そりゃあ、頭だけはいいのはしょうがないことだって! 血捨木も気をつけろ」
手のひらが痛い。
近藤君の手を打ったんだって実感した。
クラスのみんなは自分のしたいことに夢中で不思議と気付かれない。
叩いたのも手首だったから大きな音はしなかった。
「痛い! 何をするんだよ!」
「近藤君が言うことなんて誰も信じていないんだから。よく見え透いた嘘を並べてあたかもそれが本当みたいに言えるね? 嘘を言って何が楽しいの? 人をいじめて何が楽しいの?」
気づかれずに済んだのはそれまでだった。
その大声にクラス中のみんなの眼が注がれる。冷ややかなひそひそ声が響いた。
「血捨木はあの問題児が好きなんだろう? よく図書館に通い詰めているし、だからむきになって攻撃したんだろう。ウソぴょーん! 血捨木があの真っていうやつに好意を抱いているのか試してみたんだ! ほらほら、むきになった。イヒヒッヒー。世の中本当に怖くなった。ほらほら、禁断の愛!」
「騙したわけ? 人のことを聞き出すのにひどい嘘をついて何にも感じないの? 真君のことはちょっと変だから構っているだけだよ。好きなわけじゃないよ。あんたのいつもの妄想だ。それはどうでもいいけれど、もうすぐ授業が始まるでしょう?」
「騙してなんかないぜ! いやあ、絶対に違うね。好きなのが見え見え! イヒヒッヒー。おじいちゃんから血捨木と問題児が図書館で二人きりで話していたのを見たって聞いたぜ。仲よさそうに慎ましくデートしていたそうな。いいなあ、好きな者同士が同じ屋根の下で暮らしているなんて羨ましい限りだぜ」
こいつと話してもわかってもらえないし、分かってももらいたくもない。おふざけは目に余る。
オーバーというか無礼にあたる。
「いいよ! 私はあんたともう二度と話さないから!」
大声で近藤君に絶縁状を突き付けると、まだ話に食って掛かると思っていたみたいで目を丸くしていた。
近藤君が他の部下を引き連れて教室の後ろにたむろしていく。
そんなのはどうでもよかった。
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