ひとりぼっちの23才
樹璃
第1話 誕生日の夜
……ピコン。
『お誕生日おめでとう!23才だねぇー』
深夜0時を過ぎた頃、一番はじめにきたお祝いラインは母親からだった。
「……ていうか、お母さんからしかこないじゃん!」
一人暮らしのワンルームに虚しく響くのは私の声だ。母親からの連絡が嬉しくないわけではないが、さすがに母親だけというのはテンションが下がるものだ。
『ありがとう〜』と一言にスタンプを添えて、返事をした。
「は〜。23才にして一発目の連絡がお母さんからだなんて、私は悲しいよ。みんな、私に連絡してくれてもいいんだよ」
0時30分を過ぎても尚、友達からの連絡はなかった。
私の名前は、朝倉柚羽(アサクラ ユウ)。今まさに23才の誕生日を迎えたところだ。もちろん部屋には誰もいない。ひとりぼっちだ。ついでに彼氏もいない。
「さすがに誰からも連絡こないのは笑えるわー。そんなもんか」
不貞腐れ、テレビをつけるが面白そうな番組もやっていなかった。
「明日もあるし、もう寝ようかなぁ」リモコンを投げ捨て、座椅子に体重を任せた。あくびをしながら、スマホの中に入ってるスケジュール帳アプリを開く。
「今日は一日オフで、明日は夕方から出勤か。やったー。ダラダラできる」
今年の誕生日はぼっちであるにも関わらず強がり、バイト先のシフトは休みにしておいた。無理矢理にでも予定を入れたかったが、誰からも誘いの連絡は来ず、自分から連絡をするには、祝ってくれと言わんばかりの無言の催促になるのではと考え、結局ひとりで自分のために誕生日プレゼントを買い、好きな食べ物を好きなだけ買って、家に帰ってひとりパーティーをするという予定を組んだのだ。こうなることも予想し、散財してもいいよう、お金も貯めておいたのだ。
翌日、目を覚ましスマホを開くと、さすがに何人かの友達から連絡が来ていた。私は上の方から順番に確認することにした。
「あ、ちーからラインが来てる。めっちゃ久しぶりじゃん」
開いてみると、このような内容が書かれていた。
『ゆう!お誕生日おめでとう!23才だね。元気にしてる?
最近は何してるの?
私の子供も一緒でいいなら今度ご飯でも行こうよ!』
このメッセージを開いたまま、私はベッドの上でボーッとした。
「なんか元気そうっていうか、能天気というか……。一方的というか。別にいいんだけど、返事するのだるい……」
私は深呼吸して、あの日のことを思い出した。
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