第3話反対派

田辺は、早速校舎を移動し始めた。まずは家庭科調理室だ。

あそこは包丁やカセットコンロ等、武器に出来るモノが置いてある。早目に回収しようと考えた。

移動中、田辺は考えていた。「命の授業」を政府が義務付けしてから、ずっと反対派であった。

しかし、反対派は次々と弾圧を受けた。

デモの首謀者は、不可解な死を遂げる。

田辺は反対派でありながら、口にはしなかった。

自身の臆病さに、吐き気がした。

日本は当初、「命の授業」制度に反対であった。しかし、世界学力機関の圧力に屈し、制度を導入したのだ。

生徒の学力低下を食い止める策として、学生に有無を言わせない「命の授業」で、学力向上を狙った。

そして、狙いは当たった。

学力が、3年前の平均値より2.5ポイント上昇したのだ。

日本は学力主義に突入していく。

反対派は弾圧された。


家庭科調理室にたどり着く。

流しの下の扉をどんどん開いて、包丁を探した。……無い。1本も包丁や果物ナイフが消えていた。

やはり、狙いは私を殺す計画を立てているのだ生徒達は。


ドスッ


家庭科調理室を出ようと振り向くと、背中に衝撃を受けた。

振り向くと、ミステリー研究会の相沢直子だった。

「先生、ごめんなさい。私には逃げ切る余裕が無いから……」

「いって~な~、相沢、先生を包丁で刺しても無理だよ!防刃、防弾チョッキを着込んでいるから。ここは君、1人?」

相沢はガタガタ震えながら、小さな声でハイと答えた。

「よし、特別だぞ。許してやる。ここから逃げなさい」

「え、え」

「さっ、早くっ!」

相沢はよろよろと廊下は走った。

田辺は、ライフルを構え逃げる相沢に向けてパンパンッ

と、撃った。相沢は倒れた。

ゆっくり、相沢に近付くと弾は2発とも貫通しており、即死状態であった。

「相沢ごめんな、ウソついて」

その時だ。

田辺は自分がしている事に恐怖を感じた。

震える指先でタバコを取り出し、一服した。

間も無く、手の震えは治まり、思考が殺人マシーンに戻った。

腕時計を見ると、まだ開始から15分しか経っていなかった。

特殊タバコの効果は30分らしい。あと、5ケース持っている。

次に怖いのは化学室だ。あそこの薬品はマズイ。

最初に向かうべきだったか?

田辺は化学室へ歩きだした。

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