第二章 君が居た世界-2
「葵君と酒木君は仲が良いね」
「そうかな? やっぱそうだよね!」
「うん! 葵君もわたし以外に友達が出来て良かった!」
「はあ? 僕は子供かよ? 兎に角、数学解んないんだろ? 教えるから静かにしてくれ。酒木も」
「はーい。じゃあ教えて下さい!」
「分かったよ、じゃあ席戻るから。寂しかったら何時でも言えよ、月島くん」
「……はあ……騒がしくなってごめん」
「ううん! 全然! 葵君と話せたら何でも良いの」
ふと、僕以外の男子にも百瀬がこんなことを言っているのかと、不安になった。百瀬はあんまり他の男子とは話さない。話すのは僕位だろうか。見たことがないからわからないが。もし、他の男子と百瀬が話していたら、なんて想像すると、不思議なことに物凄く胸がざわついた。
(……?……今のは、何だろう)
「……? 葵君?」
「……! ごめん、何でもないんだ」
この日は、授業中も、家に帰ってからも、寝る前まで、この気持ちは何なのか疑問に思っていた。ただ、途中途中で百瀬の事が頭に浮かび、途端に百瀬の事で頭が一杯になった。
そこで、僕は気づいたんだ。これが何というものか。これを何と呼ぶものなのか。
僕は、百瀬春に恋をした。
次の日の朝、僕は百瀬とこれからどう接していけばいいのか、ものすごく悩んだ。急に距離を取るのも難しいし、あまり話しかけないでと百瀬に言えば、余計話しかけてくるだろうし。どんなに考えても、上手く行きそうな案は出てこなかった。
「はあ……」
(こうなった酒木に聞くしかないか……)
ぼーっとしながら教室に入る。大抵僕は一番最初に教室に入るので、考え事をするには丁度良い空間だった。
「嗚呼……」
今すぐに帰りたい。今日は誰とも会いたくない。一人きりのこの空間で切実に思った。
(今、百瀬と会ったら何て話せばいいだろう。酒木には何て相談すれば良いだろう)
心配事は尽きることが無いようだ。
「おはよーございます! よっ! 月島!」
丁度のタイミングで酒木が登校してきた。良いタイミングなのか、悪いタイミングだったのか、僕には分からなかった。
「おはよう酒木、元気そうだな」
「……何かあったのか? そんな事言うの珍しいじゃん。何時もだったらもっとウザがるのに……俺には、言いにくいことだったりする?」
「いや、そういうわけじゃないんだ。ありがとう……実は昨日から思ってたことなんだけど、酒木、相談に乗ってくれるか?」
「……! おう、任せとけ! それでどうしたんだ? もしかして、恋愛絡みだったりして!?」
「嗚呼、そうなんだ」
「……えっ……はぁ!? ちょっ、相手、相手誰だよ!?」
「百瀬だ」
「百瀬ちゃんか! 入学式の時からそうだったもんな……実はクラス皆、初日から2人の事怪しがってたんだぜ。俺もその一人だったけど。」
「……そうだったのか。それより、今日からどんな風に百瀬と接していけば良い?」
「そうだな。まずちょっとずつアピールしなきゃな。俺、君のこと意識してるよ! って感じを出さなきゃ。ていうか、やっと気づいたのかよ。月島が百瀬ちゃんと話してる時って、何時もめっちゃ幸せオーラみたいの出てたぞ?」
「は?」
今更ながら、物凄く恥ずかしい。僕は想像してたより、ずっと前から百瀬に惚れていたらしい。
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