第一章 君がいない世界で-4

 百瀬に連れられて、教室まで行くと殆どの新入生達は席に着いていた。僕等が最後だったようだ。


 そして丁度教室に入り、黒板に貼ってあった座席表で席を確認しているところに、担任の教師らしき人物が入ってきた。やはり、一番最初に僕等が目に入ったらしい。


「お前等何してる?」


「え!? あっ、と、えっと、」


 百瀬は、急な出来事に理解がついて行かなかったらしく、焦って、誤解をまねく言い方をしそうだった。


「すみません。僕等、今来たばかりで席を確認していたんです」


「嗚呼、そうだったのか。えっと、お前等の席は……窓側の席だな。百瀬は窓側、月島はその隣だ」


「すみません、ありがとうございました」


「あっ、ありがとうございました!」


「じゃあ、皆おはよう! 今日からこの1年2組の担任になった、坂井宏です。気軽に、ひろ先生とでも呼んでくれ! 歳も皆と近いだろうからな。さて、今日の入学式についてだが……」


 先生は、僕等が丁度座ったタイミングで、話をし始めた。隣の百瀬は真面目に先生の話を聞いていた。だが僕はというと、全く話を聞いていなかった。


(サボろう。なんて思ってたのに結局出席することになったな)


 なんてどうでもいいことを思って、話を聞いていなかったのだ。


 そして、無関心なまま入学式は終わった。「入学式どうだった?」と聞かれれば、「入学式って感じだった」それしか僕は答えられないと思う。それ程僕は無関心だった。


 「終わった後は帰っていい」と指示があったので、僕はすぐに教室を出た。つもりだった。


「葵君、どこ行くの?」


「いや、帰るんだけど」


 まさか、百瀬に帰るのを阻止されると思ってなかった。僕が教室から出ようとしたとき、百瀬は思いっきり、僕を後ろに引っ張った。そのおかげで僕はよろめきながら、帰るのを阻止されることとなった。


「え!? 入学式だよ? そんなすぐ帰っちゃうの?」


「別にいいだろ」


「良くないよ! あっ、そうだ、これから写真撮りに行くんだけど、葵君も一緒に撮ろうよ」


「僕はいいよ」

 

「ほら、そんなこと言わないで! 私すぐ荷物持ってくるから!」


 慌ただしく百瀬は、荷物を取りに行った。その間に帰ってしまっても良かったが、僕はそうすることが出来なかった。何故なら、百瀬がとても焦っていて、とても悲しそうにしていたから。


「おまたせ!」


 そう言った百瀬は、さっきのような顔はしていなかった。



「なんで写真なんて撮るの?」


「入学式だから! お母さんが来てるから、2人で写真撮ろう」


「僕に拒否権は?」


「ないです!」

 

「僕のところ親来てないんだけど」


「うん。知ってた。だから2人で写真撮ろう?」


 僕は、何も言えなかった。百瀬が気づいてたなんて、思ってなかったから。



 

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