第45話 崩壊②
ドンドンとその巨体で地面を揺らしながら、真司が街の中を走る。
背後からは、何度も雷が落ちる轟音が響いており、誰がそれをやっているかは明白で、何に向かって雷が落とされているかも分かりきっていた。
「真司止まって!私も戦うから!」
私がそう叫んでも、真司は決して足を止めなかった。
私を大事そうに抱え、おじいちゃんとお兄ちゃんを乗せてひたすらに走り続ける。
「止まってよ!若菜ちゃんが・・・怜くんが・・・どうして・・・?どうしてこうなるの・・・?お兄ちゃんが勝ったじゃん・・・なのに・・・なんで・・・」
なんで、なんで、と私は繰り返す。
だけどそれに答えてくれる者はいなかった。
そのうち、真司の身体が銀色に光り、身体が人へと戻っていく。
それによって段々とおじいちゃん達は乗っていられなくなり、真司から降りた。
私はそのまま抱えられ、真司が人に戻ると、力尽きたように地面に倒れ込む彼の身体を抱き締めた。
真司が弱々しく呟く。
「わ、悪ぃな・・・走れんのは・・・ここまでみたいだ・・・」
「謝らないでよ・・・!真司は、ずっと頑張ってくれた・・・!何も謝る事なんかないよ・・・!」
私はそう言って真司を抱き締める力を強める。
真司も私の背中に手を回して、抱き締め返してくれた。
そして私から身体を離すと、おじいちゃんに抱えられているお兄ちゃんの方を向いた。
「鈴斗・・・」
真司がお兄ちゃんの名前を呼ぶが、返事はなかった。
それでも彼は続けて言った。
「俺さぁ、馬鹿だから・・・やっぱりお前の『夢』ってよく分かんねぇや・・・でも、助けに来てくれたお前を見た時、俺にはお前がそれに見えた・・・気がするぜ」
真司は言いながらお兄ちゃんの頭に手を伸ばす。
そして、その頭を軽く撫でた。
「・・・助けに来てくれて、ありがとな・・・」
それと同時に、響いていた雷の音が止まった。
「っ!」
私はハッと空を見上げた。
音が止まったという事は若菜ちゃんは、怜くんは・・・
「じいさん・・・ちょっと・・・」
真司は、お兄ちゃんを撫でるのを止めると、私が気を逸らしている隙に、おじいちゃんの耳元で何かを伝えた。
「俺が――るから、結衣と鈴斗を――。着地は結衣に――、そのまま――てくれ」
「・・・分かった」
おじいちゃんは、真司の言葉を了承すると、私に向かって言った。
「結衣、逃げるぞ。真司くんはもう動けん。支えてやってくれ」
「う、うん・・・!」
私は指示された通り、真司の腕を支えようとする。
だがその時、真司は腕だけを龍に変えると、その手で私をがっちりと掴まえた。
「えっ?」
反対の手では、ぐったりしているお兄ちゃんとそれを支えているおじいちゃんを掴まえている。
その状況見た瞬間、私は真司が何をしようとしているか理解した。
「駄・・・!」
それを止める為に"能力"を使おうとする。
しかし、
「ウォォォ!」
それよりも早く、雄叫びを上げた真司が、私達を東京湾の方向へと向けて思いっきり放り投げた。
◆◆◆
「はぁ・・・はぁ・・・」
結衣達を投げ飛ばした俺は、ガクリと膝をつく。
そんな俺の背後から足音がした。
振り返って見てみると、そこにはライオウがいて、歩いてこちらに近づいて来ていた。
ヤツは、ある程度の距離で足を止めると、少し柔らかい口調で俺に向かって話し掛けてくる。
「根性みせるじゃねーか。お前も、さっきの二人もよ」
「ほざけ、クソ野郎・・・怜と若菜はどうなった?」
「俺がここに居るんだ。後は言わなくても分かんだろ」
「・・・」
その言葉に俺は押し黙る。
対するライオウは頬の傷痕を掻きながら、続けて口を開いた。
「お前とは、体調の良い時に決着をつけたかったが・・・まぁ、安心しろ。痛ぶる趣味なんてねぇ。直ぐに二人と同じ場所へ送ってやるよ」
そう言うと、ライオウの表情が鋭くなる。
こちらの命を狙う表情だ。
俺はそれを見て、立ち上がりながら笑って言い返した。
「俺は、今が絶好調なんだよ。なんせ好きな女とそのじいさん、それに・・・馬鹿なアニキを守らなきゃいけないからな」
「そうか。じゃあ、振り絞れ。俺がお前の生涯最後の相手だ」
その言葉と共にライオウの身体がバチバチと帯電する。
俺もそれに応えるように咆哮を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます