第32話 作戦
「84mm無反動砲。こいつが鍵だ」
開かれたアタッシュケースの中には、映画でしか見た事のないようなバズーカが入っていた。
別のアタッシュケースにはそれに装填するであろう大きな弾がある。
軍事兵器に詳しい訳ではないが強力な兵器なのは分かる。
だが、
「これでライオウが殺せるのか?そもそも当たるのか?一発しか撃てないんだろう?」
連射出来るなら当たるかもしれないが、どう見ても単発式だ。
外したその瞬間、終わる。
俺の疑問に平澤さんが答える。
「こいつはライオウを倒す為の物じゃない。道を抉じ開ける為に使う」
「道?」
平澤さんは「ああ」と言うと、作戦を話し始めた。
「俺がこいつを撃ち込み隙を作る。その間に修造さんとお前は奴らの懐に潜り込め。そして、
「なな・・・はら?」
なんだろう?
どこかで聞いた事のある名前だ。
確か・・・トンネルを抜けた先で遭遇した巨鷲と火球を発射する男がそんな名前を出していたような・・・
俺が記憶を呼び起こしていると、平澤さんが俺に写真を見せて来た。
そこに写っていたのは、スーツを着て眼鏡を掛けた、神経質そうな男性が誰かに電話を掛けている所だった。
平澤さんが男性について説明する。
「七原は元々、詐欺で捕まってた犯罪者で、"能力"は『触れた相手の"能力"を封じる能力』だ。こいつに触れられると両手首に金色の手枷が嵌められて、それが付いている間は"能力"が使えない。奴らが色んな"能力"者を捕らえておけるのは、こいつがいるお陰なんだよ」
「こいつが・・・!」
そういえば、橋へ行く前に出会った松明をくれた男性も"能力"を無効にする"能力"者がいると言ってたっけ。
つまりこいつさえ殺せれば・・・
「そうだ。こいつさえ殺せれば、捕まっている人達は"能力"を取り戻す。そうなれば奴らは大混乱だ。お前や修造さんはその間に目的を果たして脱出すればいい。ライオウと直接戦う必要なんてない」
確かに、わざわざライオウと戦う必要なんてない。
七原を殺害して事が為せるならそれが良い。
そう思っているとそれまで黙っていたじいちゃんが声を上げた。
「前にライオウが埼玉方面に飛んで行くのが見えた。奴は今、七原の近くにはいない。乗り込むなら、これが最後のチャンスになるだろう」
「ええ。埼玉を制圧したら、次は
平澤さんがじいちゃんの意見に同意する。
そのままじいちゃんが続けて言った。
「問題は、肝心の七原の居場所が分からない事だ。幾つか候補はあるが・・・」
「そこがどうにも不安材料ですね。流石に候補を全部回る余裕はないですから」
平澤さんとじいちゃんが悩むように唸る。
七原の居場所か。
何かヒントになるような事はないだろうか?
俺はあの巨鷲と火球を発射する男の会話を思い出す。
そして一つ引っかかる名前が浮かんだ。
「『ジャック』・・・」
「あん?どうした?」
平澤さんが突然呟いた俺に顔を向ける。
それに俺は答えた。
「ここに来る前、首都高で巨大な鷲と火球を出す"能力"者に遭遇したんだ。そいつらが言ってた。『ジャック』って奴が七原を脅していると。もし脅されてるなら、そいつの近くに七原はいる・・・かも・・・」
だけど話してる途中でこれは駄目だと思った。
ジャックって奴の居場所も分からないからだ。
だが、その名前を聞いた平澤さんが苦々しい顔をして言った。
「ジャック・・・よりによってまたヤバい奴が来たな」
「知ってるのか?」
「まぁな・・・」
平澤さんが顔と同じく苦々しげに言う。
そしてジャックという人物について話し始めた。
「ジャックは、この事態になった初期からライオウに従っていた奴だ。盲信的にライオウを信奉していて、敵対者には一切の容赦がない」
「狂信者か」
俺の言葉に平澤さんが頷き、話しを続ける。
「イカれてるし話も通じないが、裏切る事は考えられないから重要拠点にいると思う。例えば、連中の本拠点とかな」
「それは、何処だ?」
俺が尋ねると平澤さんは少し間を置いて答えた。
「東京の政治の中心、『都庁』だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます