第3話

 メモを読み進めていると、俄かには信じがたい記述にぶつかった。

 

 付与エンチャント

 魔法……なのか?


 信じ難いことが、平然と記載されている。近くに錬成台がある……らしい。部屋の隅や暗がりへ目を凝らすと、その中に家具の陰がある。


「あれか……?」


 小屋の隅に五十センチ四方の台があった。五芒星や幾何学模様を組み合わせたクロスが掛けられ、中央には水晶が三本並べられていた。


「それがどうかしたの」


 レイカが背後から覗きこんでいた。花の匂いが鼻腔をくすぐる。


 先程までレイカは、壊れかけの椅子で愚痴をこぼしていた。汚いだの、かび臭いだの、色々お気に召さないらしい。


「これがどうも魔法の道具……らしい」


「ふぅん。はあ?」


 レイカは頭おかしいのと言いたげだった。


「ここに書いてあるんだ。俺がおかしいわけじゃない」


「それで信じたの?」


「俺も自分で言っていて信じられない」


「そんなことより水と食料でしょ」


 内心記述に惹かれる気持ちはあったが、水と食料には代えられない。


「少し探しても水と食料の記載がなかったら、外に出てみよう」


「そうね。それとここはかび臭いから、もっときれいな所も探しましょう」


「雨風が防げるだけましでは?」


「嫌なものは嫌なの」


 レイカは髪を横に振った。足元に転がる苔だらけの小石を軽く蹴る。


 ひとまずメモに視線を戻した。読み進めていると 近くに小川と実のなる植物の群生地があるらしい。一旦読み込みは切り上げ、外へ出ることにした。

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