第2話 決戦 その1


「詳しくはユミさんから聞くといいわ」


 タイムマシンを開発したユミさんは安兵衛の子孫で、ラウラ財閥の総帥である。そのユミさんが今回の件に関して何かを知っているという。

 直ぐにメールをしてみると、返事は有ったのだが、その話の感じがなんとなくおかしい。奥歯に物が挟まった言い方と表現したらいいのか、とにかく一度会いたいと言ったのだが、言葉を濁されて今は無理だとの事。

 何か変だ、いつものユミさんらしくない。だか関ヶ原に突如現れた東軍の状況はトキの説明で分かったのだが、何故か家康が魔物に憑依され、再起して進軍して来たというのだった。

 いや、東軍の全てが魔物に支配されているようである。特に他国から侵略された経験を持つ国の武人や軍は、その深い復讐心を突かれるとマインドコントロールを受けやすい。魔物はやすやすとそれらの国の軍事力を手にしたのだった。これはやっかいな事になってきた。


 しかも話はそれだけでは無い。東軍の総大将はもちろんその家康で30,000の軍勢を従えているという。そして軍師に着いたのがなんと戦術の天才ナポレオン・ボナパルトだと言うではないか。その彼には20,000のフランス国民兵がバックに付いている。もちろん魔物が後ろで糸を引いているのだろう。

 更にタタール人傭兵隊長バルクの宿敵であるブコビィも居る。バルクとブコビィはどちらも同じタタール人の傭兵騎馬軍団400を率いているのである。そして勇猛なコサック兵15,000などが外国勢で、他の東軍国内勢を見ると、


 徳川秀忠  35,000

 黒田長政  5,400

 細川忠興   5,000

 加藤嘉明   3,000

 筒井定次   2,850

 田中吉政   3,000

 福島正則   6,000

 織田有楽   450

 金森長近   1,140

 井伊直政   3,600

 松平忠吉   3,000

 寺沢広高   2,400

 藤堂高虎   2,490

 京極高知   3,000

 本多忠勝    500

 有馬豊氏    900

 山内一豊   2,050

 浅野幸長   6,510

 池田輝政   4,560

 外国人部隊と合わせれば約156,000の大軍勢である。


 こうなったらもうやってやるしかない。だが急遽召集した西軍は、おれが転生する秀頼。側近に再び五島安兵衛、霧隠才蔵、猿飛佐助の面々。

 隊長バルクと400騎の騎馬軍団。

 幸村とその軍団3,000

 毛利勝家の軍団3,000

 カヤンの領主ダニエル・ヤングと5,000の重装騎兵。

 安兵衛の娘ユキとその配下でイングランドの海賊ウィリアム・ハックと300人の仲間達。今回はユキ自身も来ている。

 そして毛利秀元、長宗我部盛親、宇喜多秀家、立花宗茂などの若手武将達でその内訳は、


 島左近    1,000

 蒲生郷舎   1,000

 黄母衣衆 1,000

 島津義弘 750

 小西行長   4,000

 宇喜多秀家 17,000

 毛利秀元 15,000

 吉川広家   3,000

 安国寺恵瓊  1,800

 長束正家   1,500

 長宗我部盛親 6,600

 立花宗茂  6000


 東軍の156,000に対して西軍の総兵力は約70,000で、圧倒的な戦力差である。東軍は外国人部隊が35,400で、家康と秀忠の軍を合わせると、それだけで100,000を超える。更に今回は敵方に魔物が付いているという。前回のような訳には行かないだろう。


 もちろんおれもただ手をこまねいているわけではない。魔物とは一体なんなのだ。それを知るのが重要なのである。敵を知らなければ戦さにならないではないか。


「ドラキュラ!」

「そうなの」


 トキの説明で魔物はドラキュラのような奴だと分かった。


「だけど一体何処からそんな奴が現れたんだ?」

「ユミさんは何度か17世紀辺りのフランスに時空移転をしていたでしょ」

「…………」


 おれは頭の中をある思考がぐるぐると渦巻いた。


「え、って事は、あの……」

「そうなの」

「やばい!」


 なんとユミさんはいつの間にかドラキュラの犠牲者になっていたのだった。


「という事はだよ、ユミさんの伴侶であるカヤンの領主ダニエル・ヤングさんは、更に彼と5,000の重装騎兵達は……」

「ユイト、でも安心して。ヤングさんやその兵士達はまだ無事のようなの」

「そうか、おれがユミさんに連絡した時のおかしな言動は、そのせいだったんだな」


 ユミさんはまだなんとかヤングさんや他の者が、ドラキュラの影響下に入らないよう努力しているのか。犠牲になるのは自分一人だけにと努力しているようなのである。


「トキ」

「なあに」

「これはなんとしてもユミさんを救うぞ」

「…………」


 しかし、トキの反応は鈍かった


「どうしたんだよ、いますぐ彼女を救おう!」


 だがユミさんは今ドラキュラの監視下にあり、手が出せないという。


「なぜならあの魔物は実体が無いの」

「…………」

「だからその魔物に囚われている限り、移転させる事が出来ないのよ」


 そうか、そう言えば以前おれと安兵衛とトキが現代に戻った時の事、アパートの住人がプレイしていたらしいゲームの魔物がトキの影響でリアル世界に出てきてしまった事がある。

 その時もトキは手が出せなかった。時空の支配者でも敵わない相手とどう戦えばいいんだ。

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