第23話 グリフォンの最後

「準備は整いました。グリフォン狩りしましょう」


 海岸拠点の整備が終わり、無人戦闘機の生産が終わった時、ナミヒメからいきなりの提案があった。


「これであのグリフォン倒せるの?」


「はい、あのグリフォン、高原地帯を狩場にしてるようなので、早めに狩って牛丼をとりもどすのです」


 いつも通りフラットなしゃべり方だけど、両手で拳を握って力説してます感を出している。

 そんなに牛丼気に入ったのか。高原地帯には牛や豚、鶏なんかも生息しているのは確認している。グリフォンからしても良い狩場なのだろう。


「ナミヒメが言うなら大丈夫だろうし、行ってみるか」


「はい、現在の戦力であればあのグリフォンを落とせます」


 ナミヒメの保証付きということで、無人機と編隊を組みながら超音速戦闘機に乗り込んで高原地帯へ向かう。


 流石に速さが違う、2時間後には該当空域に到着した。レーダーに高速でこちらに突っ込んでくる反応をとらえてる。


「まずはミサイルの飽和攻撃です。全弾ぶっこんでください」


 いつも通りのフラットな声が逆に今は安心できる。攻撃命令を出すと、100機の無人機から計400のミサイルが発射されてグリフォンに向かう。


 まぁ、ミサイルでダメージは入らないと思っている。風の障壁に守られたグリフォンにはミサイルが届く前に障壁で信管が作動して爆発してしまい、爆発でばら撒かれた内臓された鉄球やワイヤーも、障壁に阻まれる。


 このミサイル攻撃は目くらましだ。視界を奪い、グリフォンの余裕を奪ってこれからの本命攻撃を避けられなくするための布石。


「今です、全無人機、特攻させて下さい!強力な障壁とはいえ所詮は風。無人機の質量が超音速で突っ込めば、ダメージは余裕で通ります!」


 珍しく強い感じの口調でナミヒメから助言が飛ぶ。

 自動制御された無人戦闘機は順番にグリフォンに突っ込んでいく。


 突っ込んだ無人機がグリフォンに体当たりするたびにグリフォンは吹っ飛ぶ。高性能尾な無人機は吹き飛ぶグリフォンの軌道計算して、また新たに突っ込めるポジションを飛んでる無人機が逆から体当たりする。


 体当たりした無人機は当然墜落するのだけれど、すべての無人機はマーキング済みで、落ちる前に倉庫アプリに収納される。収納され、回収された資源を基にクラフトアプリで新たな無人機をクラフトして、出撃させる。

 垂直離着陸能力まで付与された無人機は空中に取り出してもそのまま何事もなかったかのように飛び始める。


 グリフォンのお手玉はまだ続いている。


「なぁ、もうあれ、死んでないか?」


「いえ、あれでもまだ生きてます。マップアプリか気配察知の魔法使って確認してください」


 言われたとおりに気配察知を使ってみたけど、動きが早すぎて追い切れない。マップアプリで調べてみたら、まだしっかりと赤い点が表示されている、あの状態でも生きてるとか、どんだけばけものなんだよ。


 30分ほど無人戦闘機によるお手玉状態を上空で旋回しながら眺めていたら、ナミヒメがやっと攻撃終了の許可をだす。


「あれだけ満身創痍ならもう、抵抗も出来ないでしょう。下に降りてとどめをお願いしますね」


「とどめって、このまま死ぬまで続ければいいんじゃないの?」


「魔力で防御を固めてるグリフォンに対して、質量攻撃は消耗させる事は出来ても殺しきることは難しいんです。春人さんにとどめを刺してもらうのが一番です」


 なるほど、ナミヒメが対グリフォンのトレーニングを応援してくれてたのは、この戦法だと殺しきるのが難しいからか。

 確かに、刀に魔力を纏わせて攻撃する魔法も組まされた。それはそういう事だったのだろう。


 ボロボロになり、力なく地面に激突したグリフォンの近くに着陸し、おっかなびっくり及び腰でグリフォンに近づく。

 気絶してるのか、ピクピク痙攣してはいるけれど、こちらに反応は無い。


「お前に恨みはな…。いや、一度遊びで殺されてたっけ。恨みあったわ」


 かっこいいセリフを言おうとして、結局言えなかった。はずい。


「まぁ、恨みがあるか無いかは別にして、この世界は『俺たち』の世界だ。お前の世界に帰れ!」


 刀をゆっくりと抜き、構える。


「スラッシュ!」


 出来るだけ簡素に、簡単に発動出来るけど普段は言わないような発動キーワードを叫び、一閃。

 グリフォンの首が胴から離れる。

 動けない相手だけど、情けをかける必要性も容赦する義理もない。きっちりととどめをさした。


「これで牛丼用のお肉の安全は確保できました!」


 ナミヒメの堂々たる宣言を聞きながら思った。目的はそこだったの!?

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