第22話 海岸拠点整備

「海側に拠点を整備しましょう!」


 グリフォンに負けて死んでしまってから、なんとか立ち直り、トレーニング三昧の1カ月ほどを過ごして、唐突にナミヒメが言い出した。


「今はグリフォンの奴を何とかしたいんだけど」


「春人さんが、頑張ってるのは知ってます、でも、グリフォンをどうにかするのに、春人さん一人で頑張る必要は無いんですよ?」


「うん?ちょっと説明が足りない。それと海側に拠点整備するのとどう繋がるの?」


「以前、海底に油田があるって話はしましたよね?今は金属類も豊富に使える状況です。クラフトアプリで原油を精錬してガソリン等燃料類にするプラントも作れるようになってると思います。電源類も、ウランやプルトニウムも大量に採掘出来ているので、クラフトアプリで核融合炉を作れます」


「作れるけど、制御する人間いないじゃん。俺はそんな知識ないしさ」


「そこは、完全自動制御型に出来ます。なんならAI開発だってできますよ。それもかなり高性能な」


「へぇ…。なんか元の世界より高度な文明な気がするけど、そこは置いといて、それとグリフォンの討伐とどう関わってくるの?」


「燃料が手に入れば、無人戦闘機でも何でも作れます。一対一にこだわるならまだ数年は鍛錬が必要ですが、軍隊作ってパパっとヤッちゃいましょう」


 なるほど、タイマンでやる事にこだわってはいない。ナミヒメの言う事も一理あるな。


 以前作った道を走って、海岸にでるのにトレーニングの効果か1日で到達。


 そこからは凄かった。

 素材が揃ったクラフトアプリは、やっぱり神様謹製なんだと思い知らされる。

 よくわからないけど、まだ手に入ってない石油系の合成素材とか、現状の素材から代替レシピなんかが出てきて、海岸近くの拠点に核融合炉が作れてしまった。


 代替レシピだって、現代技術じゃ実現不可能、原子レベルで組み替えて作ってるんじゃね?って思ってしまうほどにクラフトアプリが大活躍だ。


 電源と、効率は悪いらしい代替レシピとで、電源が確保出来たから、泉の前まで電線引っ張ろうかと思ったら、なんか無線送電も出来るらしく、原油を手に入れてからって事になった。


 スキューバ装備を作ったあと、ナミヒメがこともなげにとんでもない事言い出した。


「静音性を必要としないので、ゴム系素材少な目でもいいので、原子力潜水艦を作っちゃいましょう。海中での母船、いわゆる移動拠点に出来ます」


 もう、神アプリは何でもありだな?


 出来上がった原子力潜水艦は長さ300m、元の世界でもありえない最大規模なんじゃなかろうか。


 ちょうどいい埠頭になりそうな地形を整備して、母港までクラフトアプリで作れちゃった。

 本当に俺には使いこなせない過剰な力だな、神アプリは。


 出来上がった潜水艦で、海底油田のあるポイントまで3日。とんでもなく快適な旅だった。


 そこから、スキューバで素潜りかと思ってたら、作業用の潜水艇をクラフト、潜水艇で海底のポイントについたら、採掘プラントをクラフトアプリで建造。母港まで海底に輸送パイプを設置して母港に精錬施設をクラフト。


 クラフトアプリ大活躍。しかも、これらが全自動。人類の夢のまた夢レベルの技術力は流石に神アプリだ。


 ナミヒメの助言もあって、俺一人だと何度も死んでるかもって思えるレベルの危険な作業だったのに、滅茶苦茶簡単に発展していく。

 まるでサンドボックス系のゲームを遊んでるようだ。


 母港周辺を魔法で整地して、無線送電用の電波塔を建てる。


「マスドライバーを作って、衛星を飛ばしましょう」


 もう本当になんでもありだな。マスドライバーとスペースプレーンを作って、送電用の衛星を40基近く打ち上げる。これも全自動。


「これでこの惑星上どこにでも送電できます。あ、水中はちょっと無理なんで、そっちは魔法具が作れるようになるまで我慢ですね」


「魔法具作れるの!?」


「素材さえあれば」


 とんでもないことをフラットな口調でいつもどおりぶっこんでくる。


「素材って、たとえば?」


「オリハルコンやら、アダマンタイトやらですね。あと、魔力をため込んだ宝石類。魔石ってやつですか」


「そんなのまであるの?」


「この島にはないですが、島の外まではわかりません。実は島の外は管轄外なのです。イザナミ様に問い合わせたら、詳細に調べる暇はまだないけど、多分あるだろうと返答頂きましたから。おそらくあります」


「こうなると本当にサンドボックス系のゲームみたいだな」


「参考にされてる部分はあると思います。春人さんに面白おかしくこの世界で暇つぶししてもらう前提でしたので」


 夢が広がる。ってことは無く、大した知識を持たない俺は何が出来るのかすら想像すら出来ない。

 ナミヒメいなかったら原始時代から進まなかった自信がある。


「とにかく、これで準備は整いました。無人戦闘機を100機くらい作りましょう。そのくらいの資源は手に入ってますから」


 ナミヒメに言われるままに、空港整備して、無人戦闘機をクラフトする。

 なんとマッハ超えるのに垂直離着陸機とういうオーバースペック。

 世界中の軍から発注されそうな高スペック機になった


「無人戦闘機はいいんだけど、ミサイル類はアイツにきかないんじゃないかな。風の防壁があるし」


「あの防壁、弱点があります。ある程度の質量をもった高速で移動する質量兵器には無力です。魔法とはいえ所詮風ですからね」


「と、言う事は。そういう武装を装備しているってことかな?」


「いえ、無人機に直で突っ込ませます。体当たりさせる前提で作ってます」


 え?この高性能機が使い捨て前提!?

 流石というかなんというか、価値観違いすぎてぶっ飛んでる。


「もったいないなぁ」


「大丈夫です。残骸も衛星からマーキングすれば回収可能で再生産にまわせます。クラフトアプリは伊達じゃありません」


 うん、どれだけ高性能なアプリかはこの数週間で実感してる。


 こうして海岸拠点が一気に近代化。いや、未来化したのだった。

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