第17話 いざ鉱山へ
あれこれとナミヒメに相談しながら、ゆっくりと北側に向かって開拓をしていく。サンドボックスゲームだと整地している作業に見えるかもしれない。
本当に魔法って便利で、本来なら重機使って数日かかる範囲の整地が数分で終わってしまう。
もちろんマップアプリと連動させてる気配察知系の魔法でも安全確認を怠らない。狼型の獣や熊型、当然のように餓鬼なんかも居て、武器とエイムアシストが大活躍。そのかわり俺の精神はゴリゴリ削られて休憩多めにとってるけども。
「大分慣れたけど、やっぱり殺すっていうのはきついな」
「殺されるのと、どっちがきついですか?」
相変わらず平坦な声で平然とぶっこんでくる。まぁ、ナミヒメの言う通り、殺されるよりはるかにマシだし、比べるまでもなく自衛の為に殺す方を選ぶんだけど。
「ラノベとかだと、ケガした狼とかがなついて仲間になったりするんだけどな」
「ここ、箱庭に入り込んだ『まじりもの』は、基本的に普通の動物とは違います。あまり期待しない方がいいですよ」
「基本的に、とか、あまり、と言う事は、例外も居るってこと?」
「はい、私のような存在がまた送られてくる可能性もあります。可能性は低いですが」
なるほど、神様が意図的に送り込んでくれるお助けキャラが他にも来るかもってことか。
「了解した。覚悟決めて先制攻撃するようにするよ。最初みたいに訳わかんないうちに頭勝ち割られるとか嫌だし」
誰でも嫌だろう。不意打ちスプラッターな経験なんぞ。少なくとも俺は嫌だ。
「そもそも『まじりもの』ってなんなんだ?」
「そうですね。元の世界で色々な宗教とか信じられてたのは流石に知ってますよね?」
「そりゃ色々と戦争にまでなった歴史とか習ったけども。それが何か関係あるの?」
「厳密にいえば違うのですが、信じられてる世界は、別の世界で、精神世界として実在する、信じられるからこそ、精神世界として作られた、と考えてください」
うーん、っていう事は、世界中のあらゆる宗教の世界観は全部実在するって事か?でもそれだと、矛盾というか致命的な違いがある世界が混在するような。
「それぞれ信じられてる精神世界は、『個別に』存在します。この箱庭世界のように、別の世界として独立してるんです。普通は。独立した世界観が混じるような事はないはずなんです」
「ってことは『まじりもの』っていうのは、存在しないはずの別の世界の存在が入り込んでるって事?」
「理解が早くて助かります。ですから、この世界で殺してるように見えても、実際にはあるべき世界へ送り返してるというのが正しいんです。気に病むことは無いですよ」
多少、箱庭世界の事情が呑み込めた事で、敵を倒す事の負担が減った。なるほど、と納得できる部分もある。
「そもそもこの箱庭世界は春人さんの避難所でしかないんです。敵たりえる存在が入り込んでる事そのものが大問題です。神の事情に巻き込んでしまって本当にすいません」
「まぁ、そこは今更だし。ナミヒメに出会えただけでおつり来るくらいの幸運だと思ってるから。きにしないで」
面と向かって言うのは恥ずかしいので、目をそらしながらぼそぼそと言うけど。聞こえてないかもしれないな。
「そう言ってもらえるとたすかります」
声はフラットな感じなのに、満面の笑みで答えが返ってきた。相手はフィギュアサイズなのにドギマギしてしまう。
「あぁ…。うん。本当にナミヒメには感謝してる、ありがとう」
なんとかそれだけ言葉をひねり出してうつむいてしまう。こういう所もなおしていかないとなぁ。
数泊しながら順調に鉱山に向かう。獣道くらいの細い道もあるけど、それを無視してドーンと直線的な道を作っていく。とはいえ、上りなので勾配の関係でつづら折りになるところはどうしてもあるんだけど。
「このあたりから色々金属類がてにはいるはずです」
マップを確認すると、色分けである程度埋蔵されてる金属類の種類がわかるようになっていた。これも神様のサービスだろうか。
「とりあえず、手掘りで試掘かな。魔法使ってもいいけど、トレーニングはしといたほうがいいんでしょ?」
「はい、体を動かすのは大事ですよ」
と言う事で、岩肌を石製のピッケルで打ち付ける。
「バキッ」
一発で折れた。
「…」
この空白の時間をどうすればいいのだろうか。
「と、とりあえず鑑定アプリと倉庫アプリ、両方と連動させた魔法つくりましたよね?あれつかいましょう」
珍しく慌てたようなナミヒメの助言に従って、スマホカメラを構えて魔法を使う。結果、数種類の鉱石類がトン単位で手に入った。
落盤とか怖いけど、この魔法、採掘した鉱石のかわりに岩石を置き換えてくれるらしく、落盤の心配は無いとのこと。
やっぱり魔法って便利だ。
鉄ももちろん手に入って、これでやっと念願のT字カミソリが手に入るんだけど、サバイバルナイフでの髭剃りになれちゃったんだよね。
まぁ、石器時代から鉄器時代に進化したと思えば、来た意味もあるってことでいっか。
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