第15話 塩作りと魚釣り
そういえば、あれだけばら撒いたアサルトライフルの薬莢が消えてなくなってる。
「ナミヒメ、薬莢はどこいったの?」
「消えた薬莢は自動回収されて再利用されてますよ?」
流石神様、無駄が少ない。決してけち臭いとはいっちゃいけない。薬莢も一応金属だから回収して使いたかったとか言ったりしない。ちょっとへこむ。
気を取り直して、待望の塩である。塩だ!大事な事だから二度言った!
まずは、スマホのカメラで海の水を倉庫アプリに入れてみる。
『収納する数量を指定してください』
流石に、海の水全てをいきなり収納する事は無かったし、多分出来ないと思う。多分…。
そこまで使うことは無いと思うけど、きりの良い所で10tくらいにしておこう。
「結構な量を収納したけど、見た目そんなすごいことにならないんだな」
「倉庫アプリだけに限らず、神様謹製のアプリは出来る範囲で影響を最小に収めるように設計されているんです」
どや顔で説明してくれるナミヒメ、あいかわらず可愛い。
『海水:海の水。塩分他、ミネラル豊富』
収納した海水の説明文。相変わらず簡潔だ。詳細に調べるなら鑑定アプリ使って詳細鑑定すればいいんだけど、この説明文から収納されたのは海水のみで、魚や微生物も一緒に収納してるなんて事はなさそうだ。
さっそく、クラフトアプリで100㎏の塩を作る。
「しょっぱい、塩だ…」
「泣くほどですか?神アプリで作ったのですから、まごうことなき塩ですよ」
ナミヒメにはわかるまい。味気ない草スープばかり食べてた三カ月間、俺がどれだけ塩味に飢えていたか。
早速、大豆その他から醤油を作る。刺身醤油ももちろん作る。材料は草原や森の中で適当に集めまくった可食品がたくさんあって、それで足りるらしい。
「さぁ、あとはお魚だ、当然居るよな?」
ちょっと不安になってナミヒメに聞いてみる。
「もちろん、元の世界と変わらない種類の魚がいます。魔法アプリで捕獲しますか?」
それでもいいが、それ者味気ない。何が役に立つかわからないって理由だけで、倉庫アプリにはたくさんの種類の材料が放り込まれている。釣り竿をクラフトするなんて分けない事だ。
「いや、せっかくだし釣りを楽しむ!」
砂浜をスコップでほじくれば、餌になる虫がウニウニと出てくる。
いや、いくら引きこもりって言っても、子供の頃とかに親が釣りに連れて行ってくれたりしたから、簡単な釣りの仕方くらいわかるよ?
唯一の心配は、雑草の繊維から作った糸の強度くらいかな。浮きもクラフトアプリで作って、さぁ、釣り開始だ!
「釣れませんねぇ…」
半日後、夕暮れ時になっても魚は釣れなかった。
かからなかったわけじゃなくて、濡れて弱くなった糸が切れてしまって、にがしてしまったんだ。だから糸を太く作ったんだけど、そしたら食いつかなくなっちゃった。
半日も待ちぼうけ状態なのに、それでもなお、興味深そうに釣り糸の先の浮きを見つめるナミヒメ。
「糸がなぁ、まぁ、しょうがないさ。明日素潜りで銛つかってとればいいさ」
そう、魚影は大小さまざまに見えている。見える程にたくさん魚がいるし、人間を怖がって逃げるような感じじゃない。すれてないんだ。ここの魚は。
ただ、ふっとい糸がついた餌を、餌と認識してくれないんだと思う。
今晩のおかずはサンダーショットの魔法でプカプカ浮いてきた魚をGETした。
魚のさばき方なんて知らないし、焼き加減も素人では色々危険な香りがするのでクラフトアプリで調理する。
久々のお魚、焼き魚に刺身に煮つけ、お米が切実にほしい!って、そうだった。レーションの中に自衛隊の缶飯があった!
「泣くほどおいしいですか?」
感無量とはこのことだろう。無言で涙しながら黙々と食す俺をニコニコ顔でナミヒメが見ていた。
夜は久々に満腹度の高い状態で眠れた。もちろん持ち込んだ泉のポーションを飲んで寝たけど。
泉の水は万能です。
「うーん、おはよう。今日は素潜りでお魚取りまくるぞ!」
昨日満足出来たせいで、今日は朝からテンション高めだ。
殺人の罪悪感も、もうほぼ影響ない。泉のポーションの効果はばつぐんだ。
記憶の怪しいラジオ体操をして体をほぐしながら、銛の扱いを練習する。ゴム素材なんていつ採集したか覚えてないけど、それらしい伸び縮みするゴムっぽい物が銛の尻側についてて、ゴムの力を使って銛を突き出す。覚えると簡単だ。
魔法で漁が出来るのに、非効率的な事をしている俺を、ただニコニコと見守ってくれているナミヒメ、うん、今日もかわいい。
「たくさん捕れましたね!」
そう、1時間ちょっと潜っただけで大漁だ。すれてない魚は人を怖がらず俺から逃げない、だから取り放題状態なんだよね。
「こうなると大物狙いたいな、マグロ食べたい!」
すぐ調子に乗るのは俺の悪い癖なんだろう。マグロともなると沖の方に出なきゃいけない。でも、俺にはクラフトアプリと魔法がある!
クラフトアプリで若干大きめのボートを作る。大きめにしたのは獲物を乗せるためだったんだけど、倉庫アプリあるから無駄だったことに気が付いたのは作ったあとだった。
推進力は水を操る魔法でジェット水流を作って進む。木造のくせにハイテクだ。
岸から離れてもマップアプリがあるから大丈夫、海岸のキャンプはマーキングしてある。岸が見えないくらいにきて、ソナー魔法で獲物を確認したら、一気に飛び込む。
「あ、ちょっと、春人さん!」
ナミヒメの助言はまにあわなかった。
この時、水中呼吸の魔法でもつくるべきだったんだ。
森を突き刺したマグロはそのままの勢いで泳ぎ続ける。手首に結んだ紐、抜けない銛。あとは簡単な話だ、すごい勢いで泳ぐ水の抵抗に、手首の紐をほどく余裕もなく、苦しみもがきながら俺は死んだ。
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