第5話 一時間後

「時間だ。全員揃ったか」


来たときと同じ草原の上で、バスの前で車掌が全員の顔を見渡している。


何かに気づいたように眉がわずかに動いたが、何事も無かったかのように、時間に間に合った乗客をバスに迎え入れた。


「聞いてくれ!俺は世界中の財宝を粉々にしてやったぜ!」


「私は高級料理を一口ずつ腹一杯食べたわ!」


「俺なんて国の王様になったぜ!」


乗客は口々にどれほど楽しんで来たかを言い合っていたが、車掌と死神達の表情が変わることは無かった。


バスはゆっくりと上昇し、来るときには無かった雲間に向かって吸い込まれて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る