第2話 大人しくやられると思うなよ

「大人しく俺に食われろ!いくらお金を注ぎ込んでも髪が生えないんだ!ウッヒッヒ!このSSR松茸を食べれば、俺は二十年は若返るで!」



「嫌だ!食われたくない!胞子を飛ばしてもっとたくさんの人たちがSSR松茸を食べれるようにするから!」


 当然、キノコである俺の声はおっさんには届かない。


 やべ……このままだと、俺食われちまう……


 このハゲたおっさんによって俺の夢、壊されてしまう。


 みんなを幸せにするための俺の計画が……




「うっひょう!!!!おじいちゃんが優しく食べて♡」



 嫌だ……



 俺は……



 俺は……



 子孫をいっぱい残すんだ!


 その瞬間、俺の体が光り出した。


「こ、これは……」

「な、なあに?SSR松茸ちゅあんが光ったと?俺の頭より明るいじゃねーか!ちくしょ!負けた」



 なんだか体が熱い……

 

 これは……


 これは……


 感じる……強い何かを……




「マシュルームレッグ!!!!!!!!」



 本能に導かれるまま叫ぶと、俺の体の下に足が2本生えた。なので、俺は土を蹴り上げて立ち上がる。


「SSR松茸ちゅあんに足がついてる!?こ、これは……しゅごい……」


 感動したようにおっさんは鼻息を荒げながら泣く。なんで泣くの?


 彼は鼻水まで垂れ流して俺に近づいてくる。


 おっさんの思い通りにはさせんぞ!

 

 俺は足にありったけの力を込めてジャンプして、おっさんに向かって飛んだ。


「SSR松茸が飛んでくりゅ……ああ、しゅごい!俺に食われるために来てくれるなんて……嫁より俺を想ってくれるんだな……」


 んなわけあるか!!

 

 ちくしょ!こいつ結婚してたのか。


 俺は独身のまま死んでキノコになったというのによ!


 怒りを込めて俺は叫ぶ。



「マッシュルームヘディング!!!!!!!」



「っ!」



 俺の丸っこいカサの先端と、おっさんのツルツル光だす禿頭の真ん中がキスした。


 キノコなめんじゃね!



 が、



「いただきます!」


 抵抗虚しく、俺はおっさんの手によって拘束された。


 やだ……


 転生して間もないのに、このまま死んでしまうのか……


 格好つけてマッシュルームヘディングという新たな技を試したが、逃げた方が良かったのだろう。


 諦めようとした瞬間、




 急に周りに煙が流れてきた。


 ドライアイスを水に入れたら出るような濃い煙が俺たちを包み込んだ。


「おお、何この煙は……早くこのSSR松茸を食べないといけないのに……ねむい……」


 ハゲたおっさんはばたっと倒れて眠りについた。


 やっと彼の手から解放された俺。





「ふふふ、SSR松茸よ、お主は実にいい考えを持っておるのじゃの」


 謎の声が俺の耳をくすぐる(耳はついてないが)


 なので、声がした方に視線を送ったら、


 そこには



 傘が開いた巨大なキノコが宙に浮かんでいた。



「な、ない!?」


「私はキノコの神・キノガミであるううううう!!」




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