第10話 悪霊の男との再会

りおの前から姿を消して、どれくらいたっただろう。


俺からはりおを全く察知出来ない。


ロビンは時折「あの娘はお前を探している」と知らせてくれるものの、


探されても、憎まれているだろうし、嫌われているに違いない。


そう、思わずには居られなかった。


それでも、なぜか、ロビンにはりおがどんな様子なのかがわかるようで、必ず俺に知らせてくれていたのだ。


俺は父さん達とも完全に繋がりが切れてしまい、どれくらいの時が経っているのかも、わからないでいた。


そんな頃、権現の元にまた知らせが来る。


その知らせはどうやら、母親の代わりに別の者が現れたと言うもの。


そして、その者はりおの能力に気がつき、ある寺へとりおを誘った。

それがきっかけとなり、ある不動明王が動き始めたとの知らせだった。


この不動明王は俺の師匠だった。


本格的に因縁、悪霊切りが始まった事を俺は感じ取っていた。


俺は、ロビンの懐から話す


「不動明王は、因縁切りをしてくるはずだ、だから、その機会にロビン、帰れ。迎えに来ているはずだから。」


俺の話を、ロビンは静かに聞き、


ロビン「まだ、駄目だ。」


と返事をした。


なぜ?何が駄目なんだ?


ロビン「お前が先に帰れ。あの娘はお前をずっと探している。


あの娘はお前を連れ帰る為に転生したのではないか?


だから、お前が先に帰れ。」


ならば、一緒にと言いかけて、ロビンは更に続ける。


ロビン「俺はまだ、やらねばならん事がある。それをせねば、まだ帰れんのだ。」


俺は確信した。やはり、只々この世界にロビンはいるのではないと。


だが、そんな内々の話はできず、

いつ権現が聞き耳立て、知られては全てが水の泡だ。


俺は、今の俺の状態を何とかしなくてはと策を練っていた。



「おい!最後のチャンスだ。あの娘を奪え!」


権現は俺に命じる。


だが、俺は「断わる!」と返事する


すると、怒り狂う権現は俺にさらなる悪霊達の怨みの念を俺に被せてきた。


な、、なんだ、この念の重さは!


全く意思が、、、動かない!


俺は完全に自分自身を失う。


表面的に。。。


すっぽりと被された怨みの念からは、「りおの命を奪う!」それしかないようだった。


その感覚が俺の表面から外れない。


しかし、俺の芯の部分だけはまだ残り、冷静さがあった。


必ずりおを守る!


俺にはそれしかなかった。




そうして、再び俺は、りおに察知される事に。


りおは、俺を捉えると、離さなかった。


俺は言いたくもない言葉を、次々に、りおに浴びせ、そして、襲った。


りおから伝わる想いを俺の芯の心が捉える。

「絶対に連れて帰る!」そんな想いだった。


りおの身体は重く、苦しいようで、歩くのもやっとな感じが伝わる。


今度こそ、手を掛けたら、お終いだ!


俺はりおを守りたい!


その一心だったが、中々この念からは自由な自分自身が見つからない。


どうするか、このままでは、確実に、りおに手を掛けてしまう!!


その時、真っ向から何かを感じた。

今まで感じた事も無い熱。


すると、表の被せられた念がもがき苦しみ始める。


何が起こっているのか、全くわからないまま、鎧のようだったものが段々と外れるのがわかる。


そうして、気がつくと、俺は暖かい。

そんな場所にいた。


そこが、りおの内側だとは全くわからなかった。


「おい!!アリオス!しっかりしろ!!」


どこからか、父さんの声がする。


そして、意識がはっきりし始めると


目の前には父さんがいた。


「と、父さん。。。」

と俺は返事をする。


意識がはっきりと戻り、俺はこの暖かい場所がりおの中だとわかった時、


もう駄目だ、、、消して欲しい。


只々、それを懇願した。


りお「おっちゃん!帰ってきてよ!」


りおからの悲痛な声が、更に俺には罪深く感じた。


りおを育てている神が俺に命じる


「りおを守れ!」


俺「俺を消してくれ!」


「ならん!許さぬぞ!アリオス!

りおを守れ!」


こんな会話が繰り返し。


押し問答だった。。。


りお「おっちゃん!帰ってきてよ!

あんなものを被せられてたんだよ、仕方ないじゃない!

帰ってきてよ!」


りおの想いが内側から俺に伝わって来る。


りおの育ての神、中筒男命は、りおに話し始めた。


かつて霊界で幼い頃りおを可愛がり、遊んでくれた不動明王だった男だと。


ずっと二人は一緒にいた事を。


りおは嬉しいようだった。


そんな繋がりがあった事が、りおには嬉しくてたまらなかった。


その気持ちを、俺は感じ、中筒からの命を受ける事に。。。


りお「よかった。。。。」


俺は暖かい、りおからの想いに包まれながら伝えた。


愛している。。。。と。









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