第5話
戦場で働く医者が、こんなにヒマなはずないって?
だからさー、それはわたしも最初に思ったよ。
もし本物だったらどうするの? こうやってわたしとお話することで、少しでもリフレッシュして、いい仕事ができるようになるなら、わたしは喜んで協力するよ。それがウクライナのためになるなら、こんなに嬉しいことはないし。
もちろん、百パーセント信じているわけじゃないよ。お金の話が出たり、こっちの個人情報とか聞こうとしてきたら、その時は要注意でしょ。
分かってるって。活字だけのやり取りなんだから、どうにでもできるよ。
●八月二十三日
ローランドとLINE始めたよ。
【たくさんお話をして、お互いのことを分かり合えるようになれば良いですね】
なんかローランド、やる気満々って感じ。やっぱりさ、戦場で働くとなると、何かと
〖そうですね。たくさんお話をしましょう。それにしても、英語でLINEをするのは難しいですね。ごめんなさい。返信遅くなります〗
こんな返信でいいかな? わたしもそこまでガンガンやり取りするつもりはないけど、なんかちょっと緊張するね。
【気にしないで。あなたと私は誰もが
(ここから日本語→)あなたと過ごす夜は特別なものになります。数えるほどしかありませんが、それらは全て特別で素晴らしいものです。こんばんは。今日の職場での活動はいかがでしたか?】
ちょっと、そうちゃん! そんな顔しないでよ。
そりゃまあ、あからさまに
あ、でも、慎重な割には、最初の一文が
確かに、『優しく寛大で誠実で……』とか、いきなり言われたら引くけど……。でも、そういう人間であろうと心がけるのは良いことでしょ!
え? いちいちそれを言葉に出して言うこと自体、
それより、今日の仕事かぁ~。これといって特別なことはなかったけど、まあ適当に答えておこう。
〖とても疲れました。それにまだ暑いです。あなたのお仕事はいかがですか? そう言えば、ウクライナのどの辺りでお仕事をされてるんですか? 危険な場所ですか?〗
【私は市民や負傷兵の治療にベストを尽くしています。私はネヴォフェドリフカ付近のサキという場所の基地で勤務しています。とても危険な場所で、身の安全のために、厳しい規則と規定を守らなければなりません。今、自宅ですか?】
そうちゃん、どうしたの?
え? 仕事の内容が、最初の説明と違う? この前は、『ウクライナで米国市民の命を救うために
確かにそうだね。今回は、市民や負傷兵の治療にベストを尽くしています、だし……。
あ、そうだ。あれだよ。ウクライナの人達を助けることは、結果としてアメリカの人達のためにもなるって意味なんじゃないの?
それとも、この前は
何にしても、そうちゃん、気にし過ぎだよ~(*´∀`*)
それより返信返信。
〖はい、もうすぐ夕飯です。どうか健康に安全にお過ごしください。あなたとウクライナのために祈っております〗
【ありがとう。いつか、運命が私をあなたと引き合わせてくれることを願っております。夕飯は何ですか?】
もうすぐ夕飯って言ってるのに、話続けんなよって?
いいよ、別に。電話と違うんだし、返信はいつでもいいんだからさ。
とりあえず、早く夕飯食べないとね。
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