第15話 逸話集その六 天才軍師の息子
関ヶ原の東軍にも目を向けてみましょう。黒田官兵衛という人は九州に所領を持つ人物で豊臣氏vs徳川氏の日本を二分するこの戦いは数ヶ月、数年に渡るだろうと予想し、表向きは東軍として九州で活動しながら、あわよくば漁夫の利を使い「天下」を取ろうとしていました。しかし、実際は関ヶ原の戦いは小早川秀秋の裏切りにより半日で終結。官兵衛はその報を聞くとあっさり天下を諦め、軍を解散させました。しばらくして帰ってきたのは息子の長政です。彼は東軍に属し勝利に貢献しました。自慢げにこう言います。
「父上!徳川内府(家康)から『此度の勝利はひとえに甲斐守(長政)のおかげである』と握手をしていただきました!」
「そうか」
官兵衛は不機嫌です。何故なら、小早川秀秋の裏切りを工作したのはなんと長政だったのです。
「長政、握手をしたのはどちらの手だ?」
「右手でございます」
「その時にお前の左手は何をしていた」
何故、左手に刀を持って家康を殺さなかったのか、とこういう訳です。我が野望を計らずも息子に潰されたとなっては怒るのも無理はないのでしょう……か?
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