第14話 逸話集その五 三成と柿

先程のべた石田三成は以下の逸話が伝えられてます。豊臣家の権勢を一手に握り、大名たちから恐れられていた三成も関ヶ原の戦いで敗れてしまい、生捕りにされてしまいました。処刑の直前、彼はこんな事を言います。

「喉が渇いた。水を所望する」

すると兵が

「生憎だが今は水がない。柿があるからこれを召し上がられよ」

と言いました。兵も兵なりに死にゆく三成に気を利かせたのでしょう。

「いや、柿なら遠慮しておく。柿は痰の毒ゆえ」

今から処刑される三成がこんな事を言ったのです。恐らく三成ですから突き放すように言ったのでしょう。むかついた兵はこう言いました。

「今から処刑されるお前が健康に気を使うとは、笑わせるわ」

三成は反論します。

「お前のような小物には分からぬだろうが、大志を抱くものは最期の最期まで命を大切にするものだ」

なるほど、燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや、ですね。誇り高く、正義者であり、そして嫌われるという三成らしい最期でした。

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