第8話 恋愛の美学 そのニ
そこに姫——宮の同級生の妹君——がいらしました。
「宮さん、お久しぶりで」
「久しぶり、卒業式以来で」
「今日は折角のオリエンテーションやのに、天候は最悪で」
姫は大阪出身で時々方言をお使いになります。
「何のお話をしてはりましたか?」
「いや、貴女はまだ知らなくて良い話だ」
「恋愛の話でしょう?」
姫はそもそも勘のいい方ですので、意地悪そうな目をしてそう仰います。
「私からも一つ宜しいですか?」
とそうお聞きになるお姿も、宮にはなんとなく可愛く思われて気が惹かれますが、必死にそれをお隠しになります。が、姫の恋模様を知りたいとお思いになるので、
「どうぞ」などと興味なさそうに。
「私は宮も通われた、ある程度規律がある高校に通っておりますので女子も男子も皆ほとんど化粧してませんが、ネットを見るに高校生なのにやたらと化粧をして、目に毛虫みたいなのをつけているのを見るとホントに勿体ことだと思います。唇には真っ赤っかなリップを付け、顔には白い粉を振りかけて何やら仮面をつけているような気がいたしまして、高校生の若い肌なら地のままが一番美しいのですから何もすべきではないとそう思います。元来、高校生の恋愛というのはそういう素朴なところが美しいのであって、やたらと髪を染めたりするのもどうかと思います。いやはや、制限のある恋というのは美しいものです。織姫と彦星然り、巴御前と朝日将軍然り、例えば
門限があるからと言って夜遅くまで遊べなかったり、いけるところまでいけなかったり、行ける所に制限があったりと、その時は不足だと思うでしょうが、大人になり朝まで遊べたり、どこが繋がっていてそうでないのか分からないようなことをしたり、気軽に車で他県まで行くような間柄はそれはそれで楽しいでしょうが美しさの面では一つ劣りますでしょ」
そして
「ましてや」
と姫の言葉は続きます。
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