三人


 今日で、あなたと結婚して十年目かー……。

 長いようで、あっという間だったわね。


 最初のデート覚えている? それも、十二年前の出来事になるよね。まだ高校生だった時のこと。

 場所は○○遊園地。朝に駅前に待ち合わせしたの。私は緊張して、三十分早く来ていたのに、あなたは十分遅刻して。待たされている間、私たちは気が気じゃなかったよ。


 遅れたあなたを、私たちで叱って、前途多難だなぁと思ったのよね。あなたは、遅れたのを取り返すかのように張り切って、でも、それがカラ回っちゃっていたの。

 まず、電車を一本逃しちゃったから、時間的に先に来るバスの方が早くいけるだろうってことになって、そっちに乗ったんだけどね、でも、バスが渋滞に巻き込まれて、結局電車で行くよりも遅れて……予定が大きくずれちゃった。


 私、怒ったら無口になる癖があって、だからあなたは傍でおろおろしていたけれど、「不満はちゃんと伝えた方がいいよ」って言われて、正直に話したのよ。門限のこと考えて、一緒にいられる時間が短くなっちゃうからいやだって、正面から言ったら、あなたは、顔を真っ赤にしちゃって……。

 私も、結構恥ずかしかったよ? これって愛の告白だからね。まあ、これでぎくしゃくした空気が無くなったから、結果オーライかな?


 一日パス券を買って、入場して、じゃあ、どれから乗ろうかなぁって思いながら辺りを見回していたら、「メリーゴーランドは? 意外と空いているよ」ってアドバイスされてね、私もあなたも、そうしようって向かったの。

 でも、メリーゴーラウンドまで意外と遠くてね。まあ、初めて手を握ったから、それも良かったかもしれない。すごくニヤニヤした顔で見られたけれど。


 それで、二つ横に並んだ木馬に乗って。なんか、子供みたいにはしゃいじゃったなぁ。外側に向かって手を振っていたのも、童心に返ったみたいで。あなたの楽しそうな顔を見て幸せな気持ちになったして。

 それからジェットコースター。一番速いのを乗ろうって言ったら、すごく嫌がられて。「二人で行ってきなよー、お願いー」って懇願されちゃあ、無理強いできないよね。みんなで乗りたかったけれど。


 まあ、殆どのアトラクションを二人だけで乗ったんだね。ボートに乗って、ふと、岸の方を見たら、柵に持たれながら、寂しそうにこちらに手を振っていてね、なんだか胸が苦しくなったなぁ。本人が辞退したって分かっているけれど。

 で、最後に乗ったのは観覧車。辺りは夕焼けに包まれていて、すごく綺麗だった。初めてのキスは、ゴンドラが一番てっぺんに行った時。あまりにベタなシチュエーションだったからかな、降りてきた時に、「やっぱり」ってからかわれたんだっけ。


 遊園地を出てからはファミレス寄ってね。私はドリアで、あなたはミートソーススパゲッティで、あの子はマルゲリータピザ。あ、そうそう、イタリアンのファミレスだったよね。

 帰り道は、何も起きなくてほっとしたなぁ。あなたと駅前で別れた後はお互い無言で。ちょっと気まずかったけれど、この幸せの余韻に浸りたくて、ずっと黙っていた……。


 ……あれ? ちょっと待って。初デートの時、もう一人いたよね?

 ……そう、そうよね。明らかにおかしいよね。でも、なんでだろ。あの時はもちろん、今、こうして思い出すまで、一度も違和感を抱かなかった……。


 ……ねえ、あの子、どんな見た目だった? 男の子? 女の子? 年齢は? そもそも、どっちの知り合いだったの?

 ……うん、あんな話をしたっていうのは、覚えているけれど、細かい特徴が、思い出せない……。他のことは鮮明に蘇ってくるから、多分、昔の話だからってわけじゃないと思う……。


 誰、だったんだろうね、あの子。ええと、変な話だけどね、不思議だとは思うけれど、怖いとは思えないの。あ、あなたも?

 今、こうして幸せになっているのだから、きっと、キューピット、みたいなものだったんじゃないかな? 私たちのことを、結んでくれたのよ、きっとね。


























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