永続


#職業別恐怖体験

僕はとある地方新聞の印刷会社で働いている。うちの新聞は地方色が強くて記事以外にも掲載されている四コマ漫画も地元の漫画家さんに長年お願いしていた。


#職業別恐怖体験

ある日その四コマ担当の漫画家さんが亡くなった。お年を召した方だったがあまりの突然の訃報に僕らも驚いた。ただその漫画家さんはストックを残している方だったので亡くなってから一週間は四コマ漫画の掲載を続けた。


#職業別恐怖体験

そのストックの漫画も尽きてから新聞社は新しい四コマ漫画作者が見つからないので連携している首都の新聞の四コマ漫画を載せていくという方針に決めた。亡くなってから八日目に新しい漫画が乗った新聞が刷られたがそこにはあの人の新作があった。


#職業別恐怖体験

一部目の擦り具合をチェックしていた僕がそれを最初に見つけてかなり驚いた。絵柄と作風をまねした誰かの悪戯かと思ったけれど二部目から新しい作者さんの四コマになっている。印刷機の構造上そんなことはありえないので僕は怖くなった。


#職業別恐怖体験

それはその日だけでは無かった。翌日も翌々日も翌翌々日もなくなった漫画家の四コマが一部目にだけ刷られているという状況が続いた。僕らはそれを誰にも言わずに一部目だけを捨てるのがルールとなっていた。


#職業別恐怖体験

四コマの内容だけど生前の作者さんがこれまで描いてきたとある一家のキャラクターが地元の行事とかあるあるとかを語ったり体験したりするというほのぼの系だった。絵柄はシンプルな絵のタッチながらもキャラの書き分けがはっきりしているタイプだ。


#職業別恐怖体験

ただそれがだんだんと怖くてシュールな作風に変わってきた。例えば子供二人が一つのミニカーを取り合って二人で引っ張り合っていると出てきたお母さんが包丁で片方の子供の手を切って「これで解決ね」と笑うような。しかもその切られたこの手は数日間失ったままだった。


#職業別恐怖体験

漫画家さんが亡くなってからもうすぐ四年が経つ。その間生前と同じように一度も休まずに四コマは刷られている。きっと責任感が強い人だったんだろう。最近は絵柄も歪んでいびつなものになり誰が誰だか分からない。それでもまた明日の新聞には新しい四コマが載っているはずだ。





























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