第25話 私が護りたかったのは、あなただからよ

「ああ?」


龍馬の台詞に、加納が反応する。

そして、凛花に向けていた下卑た視線を、いいところに水を差されて不機嫌だと言わんばかりのそれに変えて声のした方へと向ける。


「この俺様に……!!」


その自信家ぶりをそのまま声の主にぶつけようとして、その姿が目に入った瞬間、加納は言葉を失ってしまう。


服装こそ、家から着てきた地味な取り合わせではあるものの…

長身でスラリとした、理想的なモデル体型。

何より、加納のような自信家ですらその自信を崩されてしまいそうな程の…

世の女性の視線を釘付けにできることが容易に想像できる、とてつもなく整った顔立ち。


最近は地味に不摂生がたたって身体も緩み気味な自分と違い、そんなスキを一切感じさせない、まさにモデルをやる為に生まれてきたと言っても過言ではない程の逸材を目の当たりにして、加納はその勢いを殺されてしまう。


「(な、なんだこいつは!?これ程の逸材、俺様の記憶にねえぞ!?こんな奴がいたら、間違いなくその芽を摘んでたはずだからな……)」


これまでも、加納の地位を脅かそうとするモデルはいくらでもいた。

加納は確かに素材としては上質なのだが、それでも特別、と言われる程のものではなく、その素材として加納を上回る程のモデルはいくらでもいたのだが…

その度に加納は、卑怯な妨害工作を使ってライバルとは正面から勝負せず、蹴落としていった。

さらには巧妙にその事実を隠蔽し、あくまで勝手にライバルが落ちていったように見せかけていったのだ。


そんな加納だからこそ、龍馬のモデルとしての圧倒的な格の違いに…

完全にのまれてしまっている。


龍馬のその引き締まった肉体が示す、純粋に仕事をこなす職人としての誇りと、無駄な欲望を一切排斥する禁欲主義。

これまで、人間ならば誰にでもある欲望を巧みに利用して妨害工作を仕掛けたりしてきた加納ですら、龍馬にはそのようなスキが微塵も感じられないことを瞬時に理解してしまう。

ハンパなもので一切妥協せず、常に最高のもので勝負しようとする龍馬の本質に、絶対的な敗北感を感じさせられてしまう。


その龍馬が、加納の近くまで寄ってくる。

加納が龍馬に気を取られているスキに、凛花は龍馬の背中に隠れてしまう。


「…………」

「…!お、おい?凛花チャン?何そんなどこの馬の骨とも分かんねえような奴の背中に隠れてんだよ?」

「…彼は、あなたと違ってを欲してくれてますから」

「!な、何い!?」

「…そして、彼は私への対価として、渋々ながらモデルとしての仕事を引き受けてくれましたから」

「そ、それがなんだってんだよ?さっきから俺様言ってんじゃん?凛花チャンは撮られる方!!フォトグラファーの凛花チャンに価値なんかねえって!!」


フォトグラファーとしての凛花を欲してくれている。

この事実が、凛花にとってどれ程心強いものであるのかを、加納は微塵も理解できない。

そして、自分の主張がどれ程凛花を馬鹿にしくさったものなのかも分からない。


再びそんな主張を言葉にしてしまったことで、凛花はますます加納に対して心を凍てつかせてしまう。




「……それ本気で言ってるんなら、てめえ、マジで救いようのねえ馬鹿だな」




そして、そんな加納の的外れな主張を、龍馬は情け容赦なく切り捨てる。


「!!な、なんだと!?」

「……この女は確かな腕を持ったフォトグラファー…現にその腕を見込んで仕事を依頼するところも多い…俺も、随分それに助けられてるしな」

「は、はあ!?そ、そんなはずが…」

「……現にてめえの事務所も、この女のフォトグラファーとしての腕を買って仕事を依頼してるんじゃねえのか?」

「!ぐ…だ、だがなあ!こんなにもモデル映えする容姿してたら、写真の腕なんてオマケみてえなもんだろがあ!?」

「……なんでてめえがそんなこと言えんだ?モデルってなあ、見られる商売なんだろ?で、何他人が本気で打ち込んでる仕事馬鹿にしてんだ?ああ?」

「!!て、てめえ…」

「……本気でてめえの仕事もこなせねえ奴が、えらそうに人の仕事批評すんじゃねえよ。ハンパ野郎が」

「!!ぐ、ぐぐぐぐ……」


フォトグラファーとしての名取 凛花が今、龍馬の依頼を介したおかげでじょじょに知名度が上がり、仕事も確実に増えていることを、龍馬は知っている。

そして、見てくれには一切価値を覚えず、その本質に価値を見出す龍馬だからこそ、凛花の写真の腕が確かなものだと断言できる。

そして、凛花がフォトグラファーの仕事に誇りを持ち、自分と同じように楽しんで取り組んでいることも、龍馬はここまでの付き合いで感じ取っている。


そんな彼女に、フォトグラファーとしての名取 凛花に価値なし、などとのたまうのは、龍馬にとっては阿保以外の何者でもないと言い切れてしまう。

しかも、自分のモデルと言う仕事にも全力で取り組めないハンパっぷりが、その身体にも露骨に表れているような三下がそれをのたまうなど、自分の無知さを最大限にアピールしているようなもの。


激情家で怒りの沸点の低い加納なら、普段ならここまで言いたい放題してくる相手にはまず口より先に手が出てしまうはずなのだが…

純粋に龍馬がモデルとしても格が違い過ぎる存在であることを、潜在意識の中で認めてしまっているし、何より心臓を凍らされてしまいそうな程の、龍馬の凍てつく目つきが恐ろしい迫力を生み出しており…

下手に逆らえばとんでもない返り討ちを喰らいそうで、反撃をしようにもできずにいる。


「(ああ~♡やっぱり龍馬くんは私の相棒パートナーだわ~♡このチンピラモデルにここまで言いたい放題してくれて…私、ほんとに嬉しい♡)」


そして、本来なら自分が言いたかったことを全て代わりに言ってくれたばかりか、フォトグラファーとしての名取 凛花を評価してくれた龍馬の言葉が、凛花はとても嬉しくてたまらず…

龍馬の背中に隠れて加納から見えないのをいいことに、龍馬の背中に顔を埋めてニヤニヤとだらしない顔を浮かべてしまっている。


「ぐぐぐ…て、てめえ!!どこの所属だあ!?」

「……所属?」

「事務所だよ!!じ・む・しょ!!」

「……なんだ、それ?」

「はあ!?とぼけてんじゃねえぞこら!!てめえ、モデルならどっかの事務所に所属してんだろがあ!?」

「……俺は今回、後ろの女の依頼でモデルやりに来ただけだ…別に専業のモデルなんかじゃねえよ」

「!!??は、はああああああ!!??」


目の前の龍馬と言う存在が、あまりにも格が違い過ぎてどうすることもできなくなっている加納。

せめて所属する事務所だけでも抑えて、自身が所属する事務所の力を使って圧力をかけてやろうと思っていたのだが…

当の龍馬から、凛花からの依頼で来ただけの素人であり、専業のモデルではないと言い切られてしまう。


その事実に、先程からガラガラと崩れ落ちている加納の自信が、さらに崩れ落ちることとなる。


「て、てめえ!!フカシこいてんじゃ……」

「本当ですよ、加納さん」

「!!り、凛花チャン……」

「彼、本当はこんなことしなくても個人で並の企業以上に稼げる程のフリーのプログラマー兼クリエイターなんです。それを私が彼の創作に必要な資料写真を提供する対価として、無理やりモデルの仕事をお願いしてるだけなんですから」

「!!な、な、な……」

「でも彼ったら、筋金入りの引きこもり性質な上に見られることをとにかく嫌う人なものですから…こうやってここに来てもらうのなんて、本当に苦労しました♡」

「!!あ、あり、ありえ、ねえ……」


さすがにそれは嘘だろ、と加納が言葉にしようとするも…

今度は龍馬の背中から顔だけを見せた凛花が、まるで自身の自慢をするかのように龍馬のことを語っていく。


凛花から惚気のように聞かされる、龍馬の本来の仕事や今回モデルとして抜擢された成り行きなどに、加納は完全に混乱状態に陥ってしまう。


「あ、そうそう」

「ま、まだ何かあんのかよ!?」

「私、加納さんの事務所のお仕事おやめして、彼のお仕事を中心に活動していこうと思ってます」

「!!は、はあああああ!!??な、なんでだ!!??凛花チャンうちの仕事で食ってたようなもんじゃねえのか!!??」

「ええ、一時期は確かにそうだったんですけど…今は彼のお仕事でとても報酬を頂けて…その上、彼の創作物を商業利用する企業さんから直接依頼を頂けるようにもなってきて、今とても充実してるんです♡」

「!!!!!!…………」

「さらに、そちらの事務所さんにはとてもお世話になりましたのは確かですが…何かと加納さんにセクハラ紛いのことをされるのは正直辟易してましたし、何より なんて無価値、なんて言われちゃいましたし」

「!!!!!!ぐ……」

「正直、あなたの存在そのものが、私にとっては害悪そのものでしたの♡事務所さんも、一時から私をモデルにしようなんて意図が透けて見えていたので…これを機に、関係を解消しようと思ってました♡」


龍馬が味方についてくれたことで、凛花はまるで憑き物が落ちたかのような晴れやかな表情を浮かべながら、加納とその所属事務所との決別宣言を行なう。


度重なる加納のセクハラ発言や応対はもちろんだが、何よりも凛花の琴線に触れたのは、フォトグラファーとしての自分を加納がさんざん否定してきたこと。

自分が趣味から仕事にまで昇華させることのできた、一番自信があるものを頭ごなしに…

それも、写真のことなど何一つ分からない加納のような男に否定され続けてきたことが、何よりも許せなかった。


だからこそ、加納のように自分の容姿のみを見ずに、純粋にその実力と実績を見込んで、しかもやりがいのある仕事と十分過ぎる程の報酬と、フォトグラファーの自分に最高峰の評価をしてくれる龍馬がとてもありがたかった。

しかも龍馬の仕事のおかげで、より優良な顧客の開拓にも成功することができたのだから、なおのことありがたかった。


そのおかげで、こうしてさんざん煮え湯を飲まされ続けた加納に決別宣言をすることができたのだ。


「こ、こ、この、アマあああああああああああ!!!!!!」

「!!」

「いいからてめえは、この俺にベッドで組み敷かれてればいいんだよおおおおおお!!!!!!!」


だが、度重なる言の葉攻撃についにギリギリで抑えていたものが決壊したのか…

負の感情に我を忘れた加納が、凛花に襲い掛かろうとする。




「……ふん」




そんな加納とは対照的に、一切の揺らぎもない能面のような表情の龍馬が…

自分から見れば、ハエが止まっているようにしか見えない程に遅い動きの加納の顔を、右手で軽々と鷲掴みにして高々と持ち上げる。


「!!ぐ!!は、離せこらああああああ!!!!!!!」

「…………」


顔面を鷲掴みにされて宙づりにされ、暴れふためく加納。

その加納を掴んでいる右手に、龍馬は無言で力を込めていく。




「!!!!!!!!ぐぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!!!!」




瞬間、加納の頭蓋に重機で圧迫されていると錯覚する程の圧力が襲い掛かる。

その圧力から逃れたくて、懸命に両腕で龍馬の右手を解こうとするのだが…

無論、多少鍛えている程度の腕力しかない加納では、龍馬の剛力に抗えるはずもなく、びくともしないばかりかその圧力はさらに増していく。


「あ、あああああああああああああ……」


加納の頭蓋に、凄まじい激痛が駆け巡る。

そして、それ以上に加納の全身を絶大な恐怖が走り抜ける。


それなりの体格をした男の顔を掴んで、まるで綿毛のように持ち上げる剛力はもちろん…

何よりも恐ろしいのは、氷河期にでも迷い込んだかのような極寒を感じさせる程の怜悧冷徹さ。

そして、人を殺すことに何の躊躇いも忌避感も見せない凪いだ表情。


殺される。


そう思った瞬間、怒りの感情で埋め尽くされていた加納の心は、恐怖によって埋め尽くされていく。




「……てめえ、消されたいんだな」




その一言が、その絶望と恐怖を加速させる。

あまりの恐怖に、全身が痙攣したように震えあがる。

あまりの恐怖に、涙が溢れて止まらない。

あまりの恐怖に、失禁までしてしまう。


許しを請おうにも、掴まれている顔に襲い掛かる圧力がどんどん増していく。

そのせいで、言葉を発することもできない。


頭蓋がめきめきと、悲鳴を上げていく。

これ以上は、本当にぐしゃりと握りつぶされてしまう。


死への恐怖に、視界が真っ黒になっていく。

死ぬ。


その瞬間――――




「龍馬くん」




加納に制裁を加えている龍馬の右腕を優しく抱きしめて、落ち着いた口調で凛花が優しく制止の声をかける。


「………………ふん」

「!!あ、ああああああ…………」


その凛花の声に、渋々と言った様子ではあるものの…

龍馬は加納を鷲掴みにして宙づりにしていた右手を脱力させ、加納を解放する。


死の世界に、足を半歩踏み入れていた加納はようやくその拘束から解放されたものの…

未だ意識が定まっていない状態となっている。

そして、落とされた場所が自身の汚水でさんざん汚れてしまっており…

散々な有様となりつつも、まだ意識は戻らない。


「……止める必要、あったのか?」

「ええ、あったわ」

「……あんたにとって、こいつは敵なんだろ?なら、なんでかばった?」

「ええ、敵ね。こんな人をかばう理由なんて、私には微塵もないわ」

「?……じゃあ、なんで…」

「私が護りたかったのは、だからよ」

「?……は?」

なんて、微塵もないからよ」


まるで大好きな実弟に話しかけるような凛花の笑顔と言葉に、龍馬は釈然としない表情を浮かべてしまう。


己が敵と判断した者は即殺すはずだった自分が、凛花の声でそれをやめたことも。

何より、を敵として判断し、気が付けば身体が動いていたことも。


龍馬には、何一つ釈然としないことばかり。


だが、不思議と悪い感覚ではない。

それならば、別にいいか。


龍馬は、不思議に思いつつも新鮮なその感覚に、ひとまずはそう思うことにした。


「さて…さすがにこれ、どうしようかしら…」


とは言え、原因が相手であることは間違いないが本来ならば顧客であるはずの加納とトラブルになり、この惨状を生んでしまったことには間違いない。

このプライドだけは妙に高い加納が、この件をこのままなかったことにしてくれるはずなどない。

事務所も、加納のことはともかくこれを機に凛花にモデルの仕事を強要してくるかもしれない。


龍馬が自分を護ってくれたことはとても嬉しいことなので、龍馬を責めるような思いは微塵もないのだが…

後始末のことを考えると、凛花はさすがに顔をしかめてしまう。




「いや~、いいの撮れちゃったわ~」




そんなところに、その口調とちぐはぐな声が響き渡る。


「ゆ、雄平くん?」


凛花がはっとして声の方に振り向くと、いつの間にか復活していた雄平が、自身のスマホを手にとても愉快そうな表情を浮かべている。


「いや~、もうほんとに気分爽快~。龍馬くん!」

「?……なんだ?」

「凛花ちゃんから聞かされてたけど、あなた本当に強いのねえ!人間の身体が片腕で軽々と持ち上がるなんて、信じらんないわあ!」

「……そうか?あの三下がひ弱すぎるだけじゃないのか?」

「!ぷ、ぷっ!ちょ、凛花ちゃん聞いた?三下ですってあの男!」

「ちょ、龍馬くん!いきなりそんなこと言われたら笑っちゃうじゃないのもお!」

「?……何か面白いこと言ったか?俺?」


凛花同様、加納に相当な煮え湯を飲まされ続けてきた雄平も、よほど龍馬が加納をコテンパンにのしてくれたのがお気に召したようで…

目を輝かせて龍馬を見つめながらぐいぐいと迫ってくる。


さらに、龍馬の真顔での『三下』発言には雄平はもちろん凛花も盛大に笑ってしまい…

当の龍馬は何が面白いのか分からず、きょとんとした表情をしてしまう。


「あはは…なんて…今日はほんとにここで仕事できてよかったわあ~。あ!一番は龍馬くんに出会えたことなんだけどね!」

「?……俺に?」

「って雄平くん!ってまさか…」

「うふふ♡撮っちゃいました♡」

「い、いつから!?」

「それはもう、凛花ちゃんがあの三下にセクハラされてるところから♡」


凛花が加納に言い寄られてから、その加納が龍馬に殺されかけるまで。

その一部始終を全て、雄平はスマホを使って動画として余すことなく撮影していた。


それも、凛花にセクハラしながら言い寄る加納の下卑た顔も、発言も…

さらには、モデルとして自分とは格が違い過ぎる龍馬を目の当たりにした時の情けない表情も。


とどめとして、凛花に襲い掛かろうとして龍馬に右手一本で返り討ちに会い、その恐怖に失禁までしてしまったところも、全て撮影されている。


「凛花ちゃん、もしあの三下とその事務所がくだらない言いがかりとかしてきたんなら、遠慮なくこれ、突きつけちゃって」

「!い、いいの?雄平くん?」

「そ・の・か・わ・り!」

「!な、なに?」

「龍馬くんがまたあなたの依頼でモデルするなら、スタイリストは絶対にあたしにさせなさい!」


雄平は、加納の無様な姿を動画として収めたスマホを手慣れた様子で、持参してきた愛用のノートPCに接続し、撮影した動画ファイルをノートPC経由でUSBメモリにコピーし、そのUSBメモリを凛花に手渡した。


そして、それの対価として…

今後、龍馬がまた凛花の依頼でモデルをやるならば、そのスタイリストは絶対に自分にさせろと要求する。


「!そ、それでいいの?私としては、雄平くんにしてもらえるならとてもありがたいけど…」

「ふ・ふ・ふ♪あたしとしては、これ程の極上素材のスタイリストをさせてもらえるなんて光栄なくらいよ。それに、龍馬くん程のモデルの専属スタイリストなんてできるなら、今後は仕事も自然と増えてくわ」

「!確かに…」

「あ~!あたしもあの三下とその事務所にはさんざん煮え湯飲まされてきたから、ほんとスッキリしたわ~!あたしも凛花ちゃんみたいに、あそことはもう縁を切ることにしたから♡」

「だから、龍馬くんの専属スタイリストってわけね?」

「ええ、そうよ」


雄平も、これを機に加納の事務所とは縁を切ることを決意する。

雄平も加納にさんざんパワハラ紛いの暴言をぶつけられて、反論すれば事務所の後ろ盾をチラつかせるなど、やりたい放題され続けてきたからだ。


その加納よりもモデルとして遥かに素材は極上で、しかも加納と違って自分に肯定的で依頼者クライアントとしては理想中の理想と言える龍馬が、今後も凛花の依頼でモデルをするのなら、その専属スタイリストになれば食いっぱぐれがないどころか、仕事はいくらでも舞い込んでると言う確信しかない。


ならばもう、加納のような輩が顔を利かせているような事務所とは、金輪際おさらばしてしまって何の問題もないと、雄平は考えたのだ。


「いいよね?龍馬くん」

「?……何がだ?」

「また龍馬くんに、今回みたいなモデル、お願いするんだけど…今後は雄平くんが、龍馬くんの専属スタイリストってことで」

「……腕は確かなんだろ?なら俺は問題ないぞ」

「だって!雄平くん!」

「やったあ!ありがとう龍馬くん!」


雄平が自身の専属スタイリストになることを、凛花が龍馬に確認するのだが…

龍馬としては雄平は興味を惹かれる存在であり、スタイリストとしての腕も確かなら何の問題もないことを言葉にする。


今後、龍馬をモデルとして仕事をするのなら、この三人がチームになることが確定し…

そこに加わることのできた雄平は、諸手を上げてその喜びを露わにするので、あった。

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俺はこの世が気に入らない ただのものかき @tadanomonokaki

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