第8話 性癖館の主

「お姉ちゃん!起きて!」


「うっ…。」


 美桜は目を覚ました。すると、そこには嬉しそうに自分の顔を見る沙羅がいた。


「…沙羅。」


「お姉ちゃん!よかった~!」


 沙羅はほっと胸をなでおろした。美桜はそれを見て、少し微笑んでから起き上がった。


 美桜は周りを見渡した。そこは普通の部屋で奥にステージがあった。


 そしてそこには、サングラスとマスクをかけ、ロングコートを着たおじさんがいた。


「はっはっは!目を覚ましたかい?お嬢さん。」


 そのおじさんは指をパチンと鳴らした。すると、そのおじさんは光に包まれた。


 そして、しばらくした後、その光からは、杖を持って、スーツを着て、シルクハットを被った紳士が出てきた。


「…。あなた、誰?」


「はっはっは!私の名前は『ジェントル』だ。コンビニのトイレで君と会ったのに、もう忘れてしまったのかい?」


「…。あー…最初の露出狂か…。いっぱいいたから忘れてた。」


 その紳士はステージを歩きながら、美桜に尋ねた。


「君はこの館でいろいろな性癖を体験してきたはずだ。

 それなのに何にもなびかなかったし、何にもハマることがなかった。

 君には”素質”があるにも関わらずだ。…。どうして、そこまで性癖を否定するんだい?

 もしかしたら、君は私の後を継いで、この館の主になることだってできるかもしれないのに。」


 それを聞いた美桜は呆れながら、それに答えた。


「なんかよくわからないけど、性癖なんて他人に無理矢理強要するもんじゃないでしょ?各々で楽しむもんだから。…そんなこといいから、早く私と沙羅をここから出してくれない?」


 美桜の言葉を聞いたジェントルは、帽子を深くかぶりなおた。


「なるほど。達観しているね、君は。しかし、私は君を諦めない!また、いつか、君をこの館に誘い出して…そして、目覚めさせてあげるよ、君の心の奥底に眠っている欲望をね。」


 そういうとジェントルは持っている杖で床をトントンと叩いた。


「では、さようなら。元気でね、お2人さん。」


 美桜と沙羅を光が包んだ。

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