第2話 始まりのコンビニトイレ

「お姉ちゃん、おしっこ行って来るから待ってて!」


「もー、さっき出る前に行っといてよ!」


「あー、あー、聞こえなーい!」


 妹の沙羅さらは小指で耳を塞ぎながら、少し長めの焦げ茶色の髪の毛をゆらゆら揺らし、駆け足でコンビニの中へと入っていった。


 姉の美桜みおは呆れた顔をしながら、沙羅に続いてコンビニの中に入った。


 白色のシャツにオレンジのショートパンツ、腰にチェックの上着を巻き付けている小学4年生の妹、沙羅は一直線にトイレへと向かった。


 美桜はそんな沙羅を目で追いながら、ショートカットの髪を揺らし、制服の乱れを直しながら、トイレの近くまで歩いて行った。


 高校生である美桜は学校からの帰り、母親からの頼みで、習い事が終わった沙羅のお迎えに行った。

 その帰り道、沙羅が尿意を催したので近くのコンビニに立ち寄った。


 美桜は沙羅を待っている間、雑誌コーナーの棚の前でスマホをいじっていた。最近ハマっているスマホアプリを開いて、ログインボーナスを貰おうとしたところ、アップデートが入っていたので、データのダウンロードを待つことになった。


「はぁ…。」


 溜息を吐いて、下を向いた。


 ふと、目の前を見ると、とても変な漫画を見つけた。その漫画には『性癖の館』と書いてあった。


「う…。」


 別に変な趣味があるわけじゃないが、なんとなくそこに目が行ってしまう。そして、なんとなーく悪いことをしているような気になってしまう。


 美桜は雑誌コーナーから視線を逸らし、コンビニの外の景色に目をやった。外にはいつも通り、平日の町の景色が広がっていた。


 再びスマホを見ると、既にアプリのダウンロードが終わっていた。割と時間が経ったのに、沙羅はまだトイレから出てこなかった。


 スマホの時計を確認すると、コンビニに入ってから5分くらいが経過していた。美桜は少し不思議そうな顔をしながら、沙羅が入ったトイレの前に立った。


「沙羅ー!まだー?」


 美桜は扉を軽くコンコンと叩いて、中にいる沙羅に問いかけた。しかし、中からは返事が返ってこなかった。表示錠を見てみると、青色になっていた。

 不思議に思った美桜は、扉のノブに手をかけ、軽い力で押してみた。すると、ドアはキーッという音を立てながら開いた。


「沙羅ー。ちょっと入るよー?」


 美桜は恐る恐る、扉をゆっくりと開いて、中を確認した。


「!!?」


 中を確認した美桜は、驚愕のあまり言葉を失った。


 トイレの中には、サングラスとマスクをかけ、ロングコートを着たおじさんが便座の上に座っていた。

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