第3話 露出狂の部屋

「あ、あの…!す、すいません!わ、私!そ、そんなつもりじゃなくて、あの…!」


 美桜は急いでそのおじさんに謝り、扉を慌てて閉めようとした。すると、そのおじさんは便座から立ち上がって笑いながら言った。


「はっはっは!いいんですよ、お嬢さん。」


「えっ…。」


 急に笑い出したおじさんに美桜はキョトンとした顔をした。


「ところで…、これを見てくれるかな?」


 そういうとおじさんは、コートの前の部分を掴んだ。


 そして、次の瞬間、バッ!っと勢いよくコートを広げ、自分の裸体をさらけ出した。


「!?!?!?」


 美桜は驚きのあまり目を点にしながら、大きく口を開け絶句した。


 美桜とおじさんの間で沈黙が流れた。しかし、やがて、美桜が今の状況を理解した時、彼女はものすごい大声で叫び出した。


「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 透き通るくらい綺麗な悲鳴を上げながら、美桜はトイレから走って離れ、もと居た雑誌コーナーに戻ろうとした。


 しかし、彼女がさっきまでいたはずの雑誌コーナーは何処にもなかった。それどころか、コンビニの店内にいたはずなのに、彼女はいつの間にか少し暗めの部屋に移動していた。


「ええっ!?」


 美桜は様々な疑問を抱えながら、周りを見渡した。


 沙羅はどこに行った?あのおじさんは一体誰?っていうか、ここどこ!?など、疑問が頭の中を駆け巡った。


 すると、いきなり美桜の後ろ側にスポットライトが当たった。


 美桜が振り返ると、そこには際どい水着とその上にロングコートを身に着けた、ピンク色の長い髪の毛の女の人が、ステージの上に立っていた。


「ハロー!子ねこちゃ~ん。」


 その女の人はニヤリと笑いながら、指をピロピロとさせて美桜に挨拶した。すると、その脇から女と手を繋いだ沙羅が出てきた。


「沙羅!」


「あ!お姉ちゃん!」


 沙羅は「あれが私のお姉ちゃんだよ!」とその女に言った後、美桜のもとへと駆け寄ってきた。


「沙羅!大丈夫!?変なことされてない!?」


「大丈夫だよ~!あの人がお姉ちゃんの所まで案内してくれた!」


 沙羅は、水着の女を指さして言った。美桜はその女を見ながら、警戒心を緩めずに質問した。


「あの…あなたは誰なんですか?いや、その前にここはどこなんですか?」


 美桜に質問された女は、右手の人差し指で唇を撫でてから、ねっとりとした口調で答えた。


「ここは性癖の館よぉ~。色々な性癖を持ったものが集う場所。そして、私はこの館の『露出狂の間』のフロアマスター、モロダシーナよぉ~。よろしくねぇ~。」


「モロダシ…ナ…?」


 モロダシーナの言葉に戸惑いながら、美桜は更なる質問をぶつけた。


「あの!私達さっきまでコンビニにいたはずなんですけど、いつの間にかここにいて…。しかも、裸の上にロングコートを着た変態おじさんがさっきいて…まぁ、あなたの格好も大概ですけど…その人から逃げてきたんですけど、この館からはどうやったら出られますか!?」


 言葉がまとまらないまま、美桜はマシンガンのごとくモロダシーナに喋った。それを聞いたモロダシーナはニヤニヤしながら言った。


「それは教えられないわぁ~。あなたには”素質”がある。だから、ここに呼ばれたのよぉ~。」


「素質…?」


「ええ。あなた…。」


 モロダシーナは美桜を見て言った。


「露出狂になってみな〜い?」


「なるわけないじゃないですか!」


「そう。なら、お前達!やっておしまい!!」


 モロダシーナはそういって指をパチン!と鳴らした。すると、ステージの脇から、裸の上にロングコートを着たおじさん達が大量に現れ、美桜と沙羅に向かって全速力で駆けてきた。


「お姉ちゃん!裸のおじさん達がこっちに来るよ!」


「ひいい!!」


 美桜は急いで沙羅の手を取り、迫り来る露出狂達から逃げだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る