4 茜

ザザー...ザザー...ザザー......

この音まで、1枚の写真に切り取れたらいいのに。この寒さまで、切り取れたらいいのに。

写真1枚に表現できるこのなんてすごく限られてる。写真は視覚的な美しさしか表現出来ない。はずなのに…

少し前のコンクールで優秀賞だったあの海の作品は...音が聞こえた。潮の香りがした。風を感じた。暑さを感じた。

分からない。同じような角度で、同じような明るさで、同じようなカメラで...撮ってるはずなのに。

僕の写真には何も無い。あんな風になりたい。あんな風になりたくて、学校をやめて、家を出て、いっぱい写真を撮ってきたはずなのに。

思い上がってたのかな。1年前海の写真を撮って、1回だけ賞をもらえて、新聞にも載って、周りから天才だって言われて...

でも、賞をもらえたのも、新聞に載ったのも、周りから褒められたのも...あの1回きり。

僕は...調子に乗ってただけだったのかな...

そんなことを考えながら、シャッターを切っていた。



「あの!やめてください!!」



え?

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