No14ーアパートー

遺失物センター。

公園にある、多目的トイレぐらいの広さ、といえば分かるだろうか。

灰色の直方体。

窓はなく、ドアがあるだけ。

なんだろう、このドア、なんだか懐かしい。

もしかして、、、

ドアノブを回す。

何度もやってきた。

「ここは、、、!!」

多目的トイレよりは広いけど、

狭いアパート。

私たちのアパート。


あの子はまだいるの?


ちゃんと洗濯してる?

ちゃんとご飯食べてる?

ちゃんと生きてる?


押し入れを開ける。

いない。

バッドがある。


ベランダを開ける。

ない。

何もない。

ただただ灰色の世界が広がっていた。


『あなたは幽霊なの』


そうか。私は死んだのか。

この灰色の世界へ落ちたんだ。


タンスを開ける。

私の物がある。

手際良くまとめ、持ち帰る。

ロケットも。

あの子との写真。

私はまだやるべきことがある。


私はアパートから出て行った。

あの日と同じように。

ごめん。


「おかえり」

そうか、私は境界こっち幽霊

「ただいま」

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