5品目 人喰いエビのフライ (4)
「あっはっはっはっは! 僕がぁ? なんの冗談さぁ。あっはっはっはっはっは!!」
人喰いエビのフライ定食(ライス特盛、タルタルソース大盛り)と、エールのメガジョッキの到着を待ちながら、ここまでの経緯を聞かされたクロザさんは大爆笑した。
「見間違いに決まってるよぉ。僕みたいに動きが鈍い魔術師にぃ、王都トップ5のパーティーからお誘いなんてくるわけないじゃないかぁ。あっはっはっはっはっは!」
クロザさんの爆笑が全く止まらない。
止まる気配すら感じさせない。
「本当か? じゃあ、おまえはこれからも俺たちと一緒に冒険できるのか?」
ライガーさんが身体をふるふると震わせながら、クロザさんの両肩をがっしりと握る。
その目にはしっかりと涙がにじんでいた。
「そらみたことですか。情報が正確ではないと言ったじゃありませんか」
バナイさんがいつものようにツンケンしながらライガーさんを責める。
その顔は誰もいないところを向いていた。
「当たり前じゃないかぁ。それに僕は例え王都ナンバー1のパーティーに誘われたってぇ、絶対にいかないんだからねぇ」
腹を……いや、胸を張って断言するクロザさんに、ライガーさんもバナイさんも腑に落ちないといった顔をして噛みついた。
「なんでだよっ! そんなチャンスがきたら飛びつかなきゃダメじゃねぇかっ!!」
「そうですよ。まさか、ボクたちに遠慮なんかしてるんじゃないでしょうね!?」
なにがなんでも喧嘩腰じゃないと話もできないのだろうか、このふたりは。
「だってぇ。ライガーとバナイがいなきゃ、どんな冒険だって楽しくないでしょぉ?」
クロザさんの口から、さも当然とばかりに飛び出してきた言葉に、ライガーさんとバナイさんは完全に言葉を失ってしまっていた。
「そりゃ、俺だって……3人でずっと一緒に冒険出来たら……なあ?」
「やれやれ。大事なところはすぐにボクに回すんですから。……ボクも3人一緒がいいですよ」
3人が顔を見合わせて照れくさそうに笑っている。それを横から眺めている私。
いい歳をした男が3人、友情を確かめあって照れている様というのは、なんというか……気色が悪いな。
ぐうううぅぅぅぅぅ!
「ところでオカミサン……、僕の定食とエールはまだかな?」
大きなお腹の音を鳴らしながら、クロザさんに料理を催促された私は鍋を見て青ざめた。
そこにはすっかり焦げ揚がったエビフライがプカプカと浮いていた。……やっちゃったなぁ。
ちょっと話に気を取られていたら、すぐにこれよ。
「ごめんね。揚げ直すから、もう少しだけ待ってくれる?」
「ええええぇぇぇぇ!! もう待てないよぉ」
ぐううううううぅぅぅぅぅ!!
さっきよりさらに大きなお腹の音が店内に響き渡る。
「ほれ」「どうぞ」
そのとき、クロザさんの両隣からスイっとエビフライが飛び出してくる。
カウンターに備え付けの取皿の上には、立派なエビフライが2尾。
「えぇ? いいのぉ!?」
「バァカ。おまえの分が揚がったら返して貰うんだよ」
「当たり前です」
「それでも嬉しいよぉ。ライガーもバナイもありがとうねぇ」
私はエールとライスをクロザさんの前に並べながら、『お誘いなんてくるわけない』と言ってた彼の話は本当だろうか、と考えていた。
5品目 人喰いエビのフライ(了)
――――――――――――――――
5品目はアラサー男の友情を大盛りでお届けしました。
彼らがこれからも仲良く冒険者を続けられると良いですね。
お気に召したら是非フォローをしていってください。
この料理『人喰いエビのフライ』のお代は♡、評価は★、口コミはレビューでお願いしますね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます