2品目 キングホエールの刺し身とベーコン (4)
キングホエールの刺し身を食べさせる、と約束した相手がこの国の王女だと知らされたときの私の気持ちを10文字以内で述べよ。
模範解答はこちら。
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
ど う し て こ う な っ た 。
まさかこんな路地裏の小さな食堂に、一国の王女様がお忍びでくるなんて思わないじゃない!
たまに「自分の国の王女の顔も知らないのか?」なんて言う人もいますけどね、庶民は王女様のご尊顔を間近で見る機会なんかないですからね。
せいぜい大きな商家か下級貴族の娘さんだろうなって。そう思っていた頃の自分の頬を全力ではたきたい。
そりゃあ、お金を自分で払うことなんてないでしょうよ。もしかしたらお金を見たことがない可能性だってある。
ホエールは庶民の食べ物で王族や上級貴族からは下等な食材とされているし、刺し身は調理が出来ない素人の料理だとバカにされているそうだ。
お城じゃ食卓に出てくるような代物では無く、シャルロット王女殿下が食べたことないというのも合点がいく。
だからキングホエールのベーコンを知らなかった。私たちにとってはありふれた食材でも彼女にとっては未知の体験。
……と、重鎧の女――お忍びで城下に出ている
それからというもの。
毎月、シャーリィちゃんが来る日は食堂『ヴィオレッタ』の貸し切り営業日となった。
🍺 🍗 🍺 🍳 🍺 🍝 🍺 🥩 🍺
今月もまた、『シャーリィちゃんの日』がやってきた。
「鮮度チェックよし、解毒魔法よし、味見……問題なし!」
いつものやっている下準備でさえも一切の気が抜けない。
解毒魔法を忘れて王女様が食中毒にでもなったら……考えるだけで背筋に悪寒が走る。
スーーッと扉が開いて、騎士様がご来店。
そのまま無言で奥の席へと進む。
彼女が来たということは、間もなく――。
「オカミサン。わしじゃ! いつものヤツを出すのじゃ」
「あら。いらっしゃい、シャーリィちゃん」
「この店は今日も客が少ないのう。潰れやせんかと気が気でないぞ」
「シャーリィちゃんのおかげで、やっていけてるわ」
「そうじゃろう、そうじゃろう。今日もたくさん食べて帰るからのう」
そんなことを言いながら、シャーリィちゃんが定位置のカウンター席に着座する。
一応、弁解させて頂くと。『シャーリィちゃんの日』でなければ、この時間はカウンターの6割くらいは埋まっている。
この日も、まずはキングホエールの刺し身とベーコン。
それからキングホエールの唐揚げをカウンターに置いた。
「おお! この茶色いのはなんじゃ!?」
「これは唐揚げ。美味しいわよ」
「ほほほう。また新しいホエール料理とはのう。さすがはオカミサン。そそるのう」
そう言ってシャーリィちゃんは料理に手を伸ば――さなかった。
「そこの」
シャーリィちゃんの視線が騎士様に向いている。
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