第126話 柚梪と例の物
「龍夜さん、戻りました」
部屋の扉側から柚梪の声が聞こえると同時に、彩音と温泉を堪能してきた柚梪が広間へと入ってくる。
「お、おう………おかえり」
しかし俺は、そんな柚梪に対して視線を逸らしたままだった。
無理もないだろう。なにせ、あの柚梪のバックから思いもよらない物が出てきたのだから。その物とやらは、一応柚梪のバックへと戻してはいるが、元々入ってた場所が違った場合、感づかれる可能性がある。
まずそれ以前に、俺の脳内にはなぜ柚梪のバックにあんな物が入っているのかが気になって仕方ないのだ。
もしかして、柚梪はこの旅館宿泊でそう言った行為を求めようとしているのだろうか? それとも、彩音のイタズラなのか?
そもそも柚梪は、その物の意味を理解しているのだろうか?
そんな事を考えているその時だ。使ったタオルを水で軽く洗い流して干し終わった柚梪が、俺の隣に腰を下ろしてくる。
「よいしょっと。ふぅ………、温泉気持ち良かったですよ。龍夜さんも入ってくればいいのに」
「ん~………俺はやっぱり、遠慮しとく………かな」
柚梪が隣に座ってくる事で、バックから出てきた物が脳内を過り、そっち方面の思考になってしまう。
柚梪に視線を向けると、どうしても考えてしまう。考えるたびに、俺の顔が熱くなっていく。
「………? 龍夜さん、少し顔が赤くないですか? もしかして、のぼせちゃったりしました?」
「………っ!?」
俺の異変に気がついたのか、柚梪は俺の顔を正面から覗き込んでくるではないか。
そしてまたもや脳内を過るピンクの物。その影響か、柚梪がいつも以上に可愛いく、そして美しく見え仕方ない。
まるでそれは、地球が作り出した天然のダイヤモンドそのもの。クリッとした瞳に、滑らかな髪。耳が溶けてしまいそうなほどの甘い声。
俺の脳は、無意識に柚梪の事を意識しているようだ。さらに、下半身にも血が回ってきているのか、何かが徐々に固くなり始めているではないか。
「すまんっ! ちょっと………お手洗い!!」
俺は柚梪を押し退けて、トイレへと逃げ込む。
(まずい………これでどうやって今晩を乗り越えろってんだ………)
俺は頭を抱えて込み、必死に悩み始める。
今日だけ柚梪に言って、隣の家族と一緒に寝てもらうか? しかし、旅館宿泊が終わってからは、またいつも通りに2人きり生活に戻ってしまう。
今この調子のままだと、純粋な柚梪を汚しかねない。しかも、まだ柚梪は高校生2年くらいと同じ年齢だ。いわゆるJKっ!
いや、待てよ………? 高校生の恋人なら、やってもいいのでは………?
俺は脳がパンクするのではないかと言うくらい、思考を巡らせ、なんとか平和に解決できる方法を探し求める。
「龍夜さん………? あの、いつまで入ってるんですか? もう、2時間は経ちますけど………」
俺がトイレに入ってから、約2時間。心配になった柚梪は、扉越しにそう聞いてくる。
しかし、未だに思考を巡らせている俺には、柚梪の声が一切届いていなかった。むしろ、今は柚梪と顔を合わせたくはない。
「龍夜さん………? 本当に、大丈夫ですか………? なんなら、救急車を呼びますけど………」
「……………」
反応がない。ただの屍のようだ…………。
時刻も17時へと差し掛かろうとしており、夕食の時間が近づいてくる。
もしや、何か急な病気にでもかかったのではないか? そう思った柚梪は、徐々に慌て始める。
「えっと………えっとぉ………、どうすれば………とにかく電話」
隣の部屋に行けば、俺の父さんや母さん、彩音と言った家族が居るのだが、慌てている柚梪には、その考えが思いつかなかったのだろう。
「あれ? 私、携帯どこ置いたっけ?」
柚梪は、自分がどこにスマホを置いたかすらも忘れてしまい、一旦バックの中を確認しようと、キャリーバッグの隣に置かれてある自分のバックを開く。
「携帯………携帯………けいた………あれ?」
すると、柚梪はある異変に気がついた。
「どうして………? これ、一番外側のポケットに入れておいたはずなのに………なんで、内側に………?」
それは、ピンク色の正方形の袋に包まれた、『コンドーム』。
柚梪は、内側の一番物を入れられる所と、おまけに小物を入れられる外側についたポケットがある肩掛けバックの、外側ポケットにコンドームを入れておいた。
しかし、そのコンドームが出てきたのはバックの内側からだった。
柚梪は、自分が確かに外側ポケットに入れたのを鮮明に覚えている。なのに、内側から出てきた事に首をかしげる。
すると、そこに俺の姿が柚梪の脳内を横切る。
様子のおかしい俺に、違う所から出てくるコンドーム。そして、柚梪は確信を持つ。その瞬間、柚梪の顔は今までにないほど、赤く………赤く染め上げていく………。
「もしかして………龍夜さんに………見られた………??」
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