第78話 宝探し 後編
宝探しを始めて、早くも20分。
いまだに探すが、なかなか見つからない。見つかったととしても、ハズレ枠の透明だ。
しかし、お金を払っている以上、30分しっかりと探さなければ。何かしらの収穫を得ねばならない。
「……あっ! ありまし……たが、またハズレですね」
「本当に見つからないな。そうとう埋められている数が少ないんだろうな。ぼったくりやん」
ぼったくり……とは言うものの、他の人はしっかりと見つけている。
つまり、俺達が運悪くダイヤモンドの無い場所を掘っているだけなのかもしれないがな。
諦めることなく、ひたすらスコップで掘り進める。
すると、砂を掻き分けた時、緑色に光る何かが埋もれているのが分かった。
「おっ! 緑色のダイヤモンドだ! ようやく当たりの部類を見つけたいぞ!」
「やりましたね! 龍夜さん! さすがです!」
景品的にはしょぼい物しか貰えないが、何も無いよりかははるかにマシだ。
とりあえず、まずは1つ。
「だが、まだ時間はある。このまま最高レアも見つけるぞ。柚梪」
「はいっ! おまかせください!」
なんやかんや言って、俺も気がつかない内に楽しんでいるじゃないか。
時折休憩も挟みつつ、俺と柚梪は楽しく宝探しをする。まるで、子供みたいに。
時間もあと5分を切っていた所で、別々で採掘をしていた柚梪に、ある変化が訪れる。
柚梪がスコップですくいあげた砂の中から、赤く透き通る石が出てきたのだ。
「……っ! これって……!」
それを見た柚梪は、赤い石を手にもって、スコップを置きっぱなしにしたまま、俺の所へと駆け寄ってくる。
「龍夜さん龍夜さん! 見てください! 赤いダイヤモンドですよ!」
「えっ!? マジか!?」
確かに赤いダイヤモンドだ。まるでルビーみたいに綺麗で透き通っている。
まさか本当に見つかるとは……てっきり緑だけで終わるのかと思ったぞ。
「すごいじゃないか! 柚梪!」
「えへへっ、やりました!」
ドヤ顔をしながら、ダイヤモンドを握った右手で胸を抑える柚梪。
時間的にもちょうど良く、少し早めに切り上げることに。
「お疲れ様でした。良いものは発見出来ましたか?」
「はい。緑と赤が1つずつ」
「おぉ! 赤を見つけられたのですね! おめでとうございます!」
出口へ向かい、店員さんに緑と赤のダイヤモンドを手渡すと、店の奥から店員さんが景品を持って来てくれた。
「こちら、ダイヤモンドカラーのボールペンになります。本当におめでとうございます!」
「ありがとうございます。ほら、赤は柚梪が見つけたんだし、これは柚梪の物だ」
「え? いいんですか?」
「もちろん」
店員さんに手渡されたボールペンを、俺は柚梪にあげた。
「そして、こちらは緑ダイヤモンドの景品になります。お好きなのをお選びください」
緑ダイヤモンドの景品は、大きな箱の中に入っており、お菓子やちょっとしたおもちゃなど、様々な物が入っていた。
箱の中を見渡すと、俺はある1つの物に目がついた。
「あ、じゃあこれで」
「はい。ありがとうございました!」
俺が箱の中から取ったのは、紫色の薔薇模様が施されたヘアゴム。
景品を取ると、店員さんに見送られながら、宝探しエリアから離れた。
そして俺は、ヘアゴムも柚梪に手渡す。
「え? これもくれるんですか?」
「あぁ。柚梪、ヘアピンとかヘアゴム持ってなかっただろ? ちょうどいいかなって。それに、柚梪に似合いそうだったから」
「……そう、ですか?」
柚梪は、ボールペンをポケットの中へと入れると、手渡されたヘアゴムを手に持って、背中の真ん中辺りまで伸びた、綺麗なねずみ色の髪をまとめ始める。
まとめた1本の髪を、右肩から胸に垂れ流し、肩より少し上らへんで、俺から貰ったヘアゴムをつけて、まとめた髪を固定する。
「どうですか? 龍夜さん」
「……っ」
髪型を変えた柚梪は、俺の目を上目遣いで見つめながら、そう聞いてくる。
髪型を変えた柚梪は、ガラッと見た目が変わって、とても可愛いらしく、輝いて見える。
元々、俺は女性に対して髪が伸びているかつ、結んで束ねられているのが、結構好みだったため、今の肩から胸にかけて束ねた髪を垂れ流している柚梪は、俺の好みドストライクなのだ。
「可愛い……超可愛いよ……柚梪」
「ふぇ!? あ、ありがとうございます……///」
お互いに顔を赤らめ、少し気まずい雰囲気が俺達を襲った。
「た……龍夜さんって、こう言う髪型が……好きなんですか……?」
「ま、まあな。元々髪の長い女性が好みだったし、結んでいるならなおさら好きと言うか……なんと言うか……」
「そ、そうなんですね……。今日から……この髪型にしようかな……」
「え? 何か言った?」
「いえ……! なんでもないです……!」
くるっと右に回転して、俺に背中を向ける柚梪。
「それよりも、早く行きましょうよ……」
「そ、そうだな……」
俺と柚梪は、気まずい雰囲気に襲われながらも、手を繋いで歩き始める。
さっきまで水に浸かってたせいか、柚梪の手はひんやりと冷えていた。
……なんだろう。宝探しをする前より、柚梪の手を握ってくる力が……強くなったような……? それに、少し距離も近くなったような気がする。
その後、柚梪はゆっくりと俺の指の間に、柚梪は自分の指を交互に絡ませてくる。
「……っ、柚梪……?」
「……///」
何も言ってこない柚梪。
まだ付き合ってもいないのに、お互いに指を絡ませて手を繋ぐと言うのは、すごく恥ずかしい。
だが、柚梪の方から指を絡ませてきたのだ。男の俺が引いてちゃ、カッコ悪い。
そして俺は、さらに強く柚梪の手を握り返した。
「……っ!」
そのまま、俺と柚梪は肩を並べて、少し甘い雰囲気を放ちながら、再び園内を巡るのだった。
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