第72話 部屋に響く甘い声

「そんなに甘えたいなら、存分に堪能させてやる。覚悟しろ」


 そう、今日だけで俺がどれくらい理性を保つために頑張ったと思ってるんだ。


 水着姿、口づけの瞬間、甘い声のあ~ん、堂々とした間接キス、バスタオル、胸の押し付け、混浴、告白……次から次へと攻撃してきやがって……!


 こちとら守りばっかだったんだ。今度は俺の方から反撃と行こうじゃないか。


 俺だって、柚梪が好きなんだ……! 好きな人に『甘えさせて』なんて言われたら、男として黙ってちゃいられない。


 溜まりに溜まったこの思いを、今こそ爆発させてやるよ。


 そして俺は、柚梪の右耳目掛けて顔を近づけ、柚梪のもみあげの綺麗な髪を耳に引っ掻けると、そのままパクっと柚梪の右耳を咥える。


「ひゃぅ……っ!?」


 何度か甘く噛んでは舌で舐めて、また噛んでは舐めてを繰り返す。


「ひゃっ……あっ……んんっ……///」


 舐めたり甘く噛んだりするたび、柚梪の口から甘い声が漏れだす。


 柚梪の耳から口を離すと、柚梪の耳に極限まで口を近づけて、フゥ~っと息を吹き掛ける。


「ひゃぁっ!?」


 体をビクッと震わせる柚梪。


 柚梪の体は俺がガッチリと抱きしめているから、柚梪はほぼ身動きが出来ない状態だ。


 今俺の頭の中には柚梪の事しかない。逆に、柚梪以外の事を考えられなかった。


「柚梪って、耳が弱いの?」


 俺は、柚梪の右耳を再度舐めながら、柚梪にそう問いかけてみる。


「んっ……ひゃっ……弱いか……なんて、分かりません……んあっ」

「ふーん……フゥ~」

「ふぁ……っ!?」

「んっ、甘い声を出す柚梪……可愛いっ」

「そ、そんなこと……今、言わなで……あっ」


 右ばっかりじゃ、ダメだよね。だから、左もちゃんとね……


 俺は柚梪を抱きかえて、方向転換させる。

 そして、露になった柚梪の左耳にも、パクっと1口……


「ひゃぁ……龍夜しゃん……待ってぇ……」

「ん? どうしたの?」

「はぁ……はぁ……っ、少し……休憩を」

「ダメ」

「うぅ……イジワル~……ひゃぅ!?」


 もちろん、休憩の時間なんてあげない。柚梪にはもっとお返しを受けてもらわなければ。


「んっ……っ!」


 そして、柚梪は俺の口から半強引的に耳を離すと、両手で俺の頬を挟んでくる。


「はぁ……っ、龍夜さん……」

「柚梪……」


 柚梪はゆっくりと顔を近づける。


 その様子に、俺も柚梪の体をさらにギュッと抱きしめる。

 

 お互いの息が吹きかかる距離にまで接近すると、俺の唇と柚梪の唇が触れあっ……


 プルルル……プルルル……


「っ!?」


 すると、突然俺のスマホに着信が届いた。


 電話の音で、自我を取り戻し、柚梪を抱いたまま少し落ち着いた後に電話にでる。


 なんと、電話の相手は彩音だった。


「もしもし? どうしたんだ……? こんな夜に」

『もしもし? お兄ちゃん? 柚梪ちゃん居るかなぁ~って』

「あぁ、柚梪なら居るぞ……すぐ側に……」

『本当っ! じゃあ、ちょっと代わって貰えると嬉しいな』


 そして、俺は柚梪に電話を代わる。


「はい……柚梪……」

「ど、どうも……///」


 電話を代わった後、柚梪は少し彩音とお話をした後、2階へと登って行った。

 それほど大切な何かなのだろう。


 しかし……やってしまった。


 まさか、理性を失ってひたすら柚梪に襲いかかっていたことに深く後悔をした。


 まだ耳を甘噛みしたり、舐めてたりだけでよかった。電話がかかってこなければ、最悪俺は犯しかねなかった。


 だけど、柚梪のおかげで俺は決心がついた。


 柚梪は俺の事を、『世界で最も大切な人』と言ってくれた。好意も伝えてくれた。

 ここで俺がグダグダしていても仕方ない。


 そう、柚梪の期待に応えるために……


「柚梪……必ず俺が、柚梪を幸せにしてみせる」



 

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