第64話 綺麗な海に水着の美女

「うわ~っ! ひろーいっ!」

「すげぇ人の数だな。ほとんどスペース空いてねぇじゃんか」


 ビーチゾーンへと入ると、目の前に広がるは広大な青い海に、たくさんの人が遊んでいる姿。

 浮き輪を使って泳ぐ人、ゴーグルで海の中を観察する人、水鉄砲で撃ち合いをする子供達、ビーチバレーをする女性達、スイカ割りをする家族など、とにかく皆がワイワイとはしゃいでいる。


 俺は少し周りを見渡すと、ほんの一部の場所に空きスペースを発見した。


「2人とも、あそこに行こうか。ちょうど空いてるっぽいぞ」


 俺はその空きスペースを指差しながら、彩音と柚梪にそう言った。


「本当だー! よーし……そうと決まれば、レッツゴーっ!!」

「あぁおいっ! 彩音……っ! たくっ、テンション高いっての」


 俺が指差した空きスペースに向かって、全力疾走する彩音。


「はぁ、とりあえず……俺達も行くか。柚梪」

「はい。そうですね……きゃっ!?」

「柚梪っ! 大丈夫か!?」

「はい……少し段差があるのを忘れてました」


 広場ゾーンからビーチゾーンに入る時、石の階段か3段ほどあるのだが、一番上の3段目に立っていた柚梪は、一気に2段降りてしまった為、高低差によって体制を崩してしまう。


 幸い転んだ所が、さらさらな砂の上だったから、怪我はないみたいだ。


「全く……しっかり足元見とかないと」

「す、すみません……」

「……ほら」

「え?」


 そして、俺は転んだ柚梪に手を差し伸べる。


「今みたいに転んだら危ないだろ? それに、人も結構居るから、見失わないようにな?」

「……はい。ありがとう……ございます……///」


 ほのかに顔を赤くした柚梪は、ゆっくりと俺の右手を、左手で優しく握ると、その場で立ち上がる。


「じゃあ行くぞ。足元をちゃんと見てな」

「……はい」


 そして俺は、柚梪の手をそっと引きながら、彩音の向かったスペースへと歩きだす。


 しかし、柚梪は足元ではなく……俺と繋がれた手を見ていた……


 


「もうっ! お兄ちゃんと柚梪ちゃん遅いよっ!」

「お前が早過ぎるだけだ」


 数分歩くと、俺と柚梪は彩音が居る所へ到着した。


 そこには、先に海水に足を入れた彩音が待っていた。


「あれ? なんか、柚梪ちゃん顔赤い?」

「……ん? 確かに……少し赤いような? 大丈夫か?」

「ふぇっ!? だ……大丈夫です! 全然問題ありませんから!」

「そうか? ならいいんだけど……」


 少し顔が赤い柚梪を見るが、柚梪が大丈夫って言うなら、心配しなくてもいいだろう。


「でも、もし体調が悪くなったりしたら、ちゃんと言えよ?」

「はい、分かってます……!」

「柚梪ちゃーん! こっち来て遊ぼうよー!」

「え? あ……はい、今行きます……!」


 彩音に呼ばれた柚梪は、ゆっくりと海水に足をつける。


「……っ、思ってたより冷たいんですね……」

「そうでしょ? でも、こういう暑い季節だから気持ちいいんだよ? ……それっ! 喰らえぇ!」

「……きゃっ!? 冷たっ!?」


 初めて海に入った柚梪に、彩音は容赦なく手で海水をすくい、柚梪にかける。


「ちょっ……急に何するんですか……!?」

「ふっふっふっ……やられっぱなしでいいのぉ? それそれぇ……!!」

「きゃっ……!? ムゥ……やりましたね……!」

「うわっ!?」


 何度も海水をかけられる柚梪は、彩音に向かって両手で海水を撒き散らす。


 あぁ……実に絶景かな。


 夏の海、太陽が照らす青空の下で、水着を着た美女2人が必死に手で海水をかけ合っている……。

 その光景を眺めているだけで……幸せな気持ちになる。時々見える2人の胸の谷間、スラッとしたお尻のライン……薄いピンク色の艶が入った肌……たまらん。


 ……ビシャァ!!


 俺が2人の事を腕組んで眺めていた後、目を閉じて2人の魅力的な部分を思い返していた直後、顔にヌメッとした何かがついた。


 ……それは、ワカメだ。


「キャハハハっ!! お兄ちゃん変な人みたい!!」

「……」


 爆笑しながら俺を指差す彩音に、目をパチパチとさせながら、俺を見て冷や汗をかく柚梪。


 立っているだけでワカメが自分から飛んでくるはずがない……やりやがったなぁ?


「彩音……テメェ、クソガキがァ!!」

「きゃーっ! お兄ちゃんが怒ったー!」

「待てやコノヤロウっ! テメェはワカメ100枚でグルグル巻きの刑だっ!!」

「いやんっ! お兄ちゃんのえっち~!」

「黙れェ!!!」


 ひたすら追いかけ回す俺に、ひたすら逃げ回る彩音。その光景を見ていた柚梪。


「うわ~っ、逃げろ……ふぇっ!? 柚梪ちゃん!?」

「さっきはよくもやってくれましたね……? 龍夜さんっ、今ですよ!」

「柚梪! よくやってくれた!」


 逃げる彩音の両手を握り、彩音の行動を封じ込んだ柚梪。そこに、大量のワカメを拾った俺が歩み寄る……


「ま、待ってお兄ちゃん……! ごめん! 謝るからぁ!」

「誰が許すかこのボケェ!」

「いやぁぁぁぁぁ!? ヌメヌメして気持ち悪いィィィ!?」


 俺は柚梪と一緒に、彩音に大量のワカメを浴びせる。もちろん、顔につけてないぞ?


 その後、体中ヌメヌメしている彩音は、完全に降参した。


「やったな柚梪! 完全勝利だ」

「はいっ! やりましたね。龍夜さん!」


 なんやかんや言って、俺達3人は無意識に海を、存分に楽しんでいたのだった。

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